就職できなかった俺が転生したのは-神の流域に手を伸ばすもの-

南川 真尋

3話 故郷:リモノストーン


『本来ならば一緒にマケルでやるのだが、なんせまだ意思のない赤ん坊。まだ赤ん坊なら母親の魔力とほぼ同じはず。一緒にできるであろう。我が言う通りに書け。』

マケルを出してなにかを書けという。マケルとは?と疑問に思った直後ユリミヤの手にまたもや棒のようなものが現れる。どうやらそれがマケルらしい。

『ローンの手をマケルに触れさせ、復唱しながらユリミヤ、そなたが書くのだ』

そう言ったカゲロウは両手を上げ何かを注ぐように掌を下に向ける

『精霊よ 地と神と我とを繋げ』

何を書くのか、どう書くのか俺には分からなかったが、ユリミヤが分かるようだ。迷いもなく立板に向かう。

ユリミヤが書き始めると突然ユリミヤと繋がるマケルに何か身体から流れていくのを感じた。これが魔力なのだろうか。

緑神りょくしん カゲロウの許しにより セルトルノの土地へと導き給え』

カゲロウの言葉を復唱するユリミヤの身体と俺の身体から、カゲロウが放つ色に似た緑の
光が淡く滲み出る。

その間にもユリミヤは魔法陣の上に重ねるようにして文字らしきものをどんどん書いていく。

『祝福と感謝 御礼と御心 双方を大地の神アイナアクアに捧ぐ 』

最後の文字の一角を反時計回りに円を描くと、最初に書いた文字の最初の一角に繋ぐようにして結ぶ。

完成したようだ。どこかにマケルを収めると今度は立板に手をつけるように言われた。
俺をフリシャに渡すとフリシャが俺の手を立板につける。
ユリミヤは両手をつけ力み始めた。そうすると、どんどんユリミヤから滲みでる緑の光が多く濃くなってくる。多分魔力を沢山注ぎ込んでいるのだと思う。

『ローン立板に両手をつくんだ。できるか。そうだ。いい子だ。もう少し頑張れ』

フリシャに言われた通りに俺もユリミヤと同じく立板に両手をつく。

するとユリミヤが力み始めると同時に、さっき書いた文字が色づき始めていたが俺が手をつきユリミヤを真似るようにして力んだら色づくスピードが早まった。

色は緑が多めの9つですごい神秘的にみえる。それは、立板に1度合わさるとカッと光を増し魔法陣と一緒になり浮かび上がるようにしておれたちを侵食し始めた。

強い光と驚きに目を瞑る。そのまま光が無くなるの待つと、すぐに光はきえた。俺はゆっくりと目を開ける。

『異なる世界から来た青年よ また我を訪ねるが良い その時にまたそなたの秘めたる力を教えよう』

そんな声が目を開けると同時に脳内に流れ込んできた。どうやらあの魔仏マギースポークの老人カゲロウは俺の正体に気付いていたらしい。
秘めたる力がなにか物凄く気にはなるが今は喋ることもままならぬ状態。赤ん坊の癖に音はよく聞こえるし、声も聞き分けられる。言葉もわかる。視界も鮮明だ。産まれてから何ヶ月たっているか知らないが首も座っているし立てそうな気もする。もしかすると1歳位かなという感じもなくはない。

『やっと着いたな』
『そうね、あと1刻ちょっとで着くかしら?』

着いた場所は先程とは違い、ゴツゴツした岩が目立つ山岳だ。先程とは違い湿気が多く気温も高い。2人は着ていたローブを脱ぎフリシャが担いでいた麻袋のようなものにいれる。俺に巻いていた上着も同時にその中に入れられた。

途中、ド派手なピンク色のアロエとサボテンを足して2で割ったような植物が棘を飛ばしてきたり、岩だと思ってたやつがカタツムリみたいなやつで粘着物を吐いてきたりしたが全部フリシャが片付けた。

パパさん強ぇ!

フリシャの活躍を間近で見て、今頃ここが異世界であるという事実を実感する。



『ローン、あそこが父さんと母さんの故郷リモノストーンだ。』

フリシャが指差すところにはどこかの民族が住んでそうな住居がおよそ20軒。その場その場に定住せず、生活に欠かせない羊や馬、その他の家畜の餌を求めて移動する遊牧民みたいな部族らしい。

赤ん坊って分かってるくせに一々説明してくれるフリシャは意外と喋る。それに結構甘そうだ。なんでもやってくれそうな感じがする。

『もう少しよ。頑張りましょう』

そう黙々と歩くユリミヤの方が無口だ。あまり喋らない。フリシャが話題を与えてそれに応えるか、魔物を発見した時か、ちょっとしか喋らない。

あれぇ?さっきは結構こっちが喋ってた気がするんだけどなぁ。

まぁ半日くらいの人間を完璧に知れるわけないしあとからでも人となりは分かるだろう。

>>>

そうこうしている間に2人の故郷リモノストーンに到着した。





小説って難しいですね。
ノロノロですが大事に大事に進めていきます。矛盾や誤字脱字があればなんなく教えて下さい!

次話『道のり』です。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品