怠惰の主

足立韋護

学園都市:アルバヒル

────ひたすらに驚愕していた。

 コックピット内からは、まるで宙に浮いているかのように全方向が見渡せるようになっていた。ひたすらた感嘆と驚愕が止まなかった。
 座席の横に立つそんな俺に、郡山は「変な声出てるよ」と微笑んだ。何を言うか。そこいらの絶叫マシンより刺激が強いのだ。仕方あるまい。
 そんな他愛もない話をしている中でも、一つ、喉に魚の骨が引っかかるように、ずっと疑問に思い続けていることがある。

「……ひとつ、聞いていいか」

「なんだい創ちゃん」

 俺は、マキナを操縦し続ける郡山の様子を伺いながら、なるべくカドが立たないよう、視線は外へ向けたままそっと呟いた。

「学校は、お前達組織は、軍の関係者か」

 郡山は両手にある操縦桿と思しき球体を離すことも、視線をこちらに向けるともなく、暫し黙りこくった。
 グラディウス・マキナとは元々戦争利用されたものだ。あれだけの人々が珍しがるような、そんな代物を易々と呼び寄せ、軽々と乗りこなしてみせている。そしてまるで公安のような不審人物の監視まで担っているのだから、当然の帰結と言えよう。しかし不審人物とははなはだ心外である。

「────うん、承認が下りた。そうだね、軍の末端組織ってところかな」

 ところでどんな仕組みで通信をしているのだろう。人型ロボットが闊歩している世の中なのだから、到底想像もつかないテクノロジーを使っているに違いない。
 しかし、暇さえあれば式谷やデル辺り探してやろうかとも思ったが……まあ奴らなら上手くやるだろう。その気になれば不死の俺より生存率が高そうな連中だ。

「学校というのはどういうものを学ぶんだ。やはり戦いに関することなのか」

「学校というよりはアルバヒル自体が学園都市だから、学園って名前が正しいね。そこでは、基礎言語から特殊戦技まで、ひと通りのことを学ぶんだ」

 そのひと通りがわからんのだ、分からず屋め。

「小、中、高、大学部まであって、大学部に入ると練習機だけど、なんと自分専用のマキナが貸与されるんだよ。それを用いて、特殊戦技と呼ばれるマキナ同士が実戦形式で戦う場が用意されてるんだ」

「物騒だな……。俺は小学部で良いぞ。子供達の世話係でもしてやろう」

 途端に郡山は甲高い声でクァックァッと大笑いしてみせた。

「何言ってるんだい。創ちゃんはもう大学部への編入が決まってるよ」

「なに!? すでに話した通り、この時代の授業など知らないし、ましてマキナの操縦なんて出来るわけがない!」

「まーまー。なるようになるさ」

 なんたる適当!

「それにね、実験の意味もあるんだよ。別の時間から来た人間が、マキナを扱ったらどうなるか、ってね」

 郡山はチラとこちらを見上げ、歯を見せて笑いかけてきた。
 突然の大学部の理由はつまりそこが狙いか。前途多難な未来しか見えなくなってきたが、どうなることやら。

「────さ、そろそろ着くよ」

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