魔王の娘に転生したので学園生活楽しみたい!

ひょー

閑話「リディアの生誕」

 俺は経歴もないし、家も裕福ではないし、対して強くもない魔族の両親から生まれた。
 父は仕事はしてるものの、給料は安かった。


 俺は両親を恨んだ。
 何で俺がこんな生活をしなきゃいけないのかと。
 何で他の魔族達はあんな大きな家に住んでるんだろう。

 俺は両親を恨んだ。
 飯は干し肉を少しだけだった時もある。
 その時は水だけでお腹を膨らませた。


 俺は12歳となった。
 その身体は痩せ細っており健康とはいえなかったが元気よく遊んでいた。

 親が頑張って集めた資金で俺は寺子屋へ通っていた。
 そこで友達もできた。
 お金がないから内緒でバイトしたりもした。


 ある日、寺子屋で1人弁当を食べようと弁当箱を開ける。
 中にはいつもと通り固いパンと干し肉が入っている。
 1人で食べるのはこの弁当を友達に見られたくないからだ。
 他の人たちは肉の唐揚げやら、緑色の野菜やら入っており俺の弁当と全然違った。

 その日は、虚しくなり弁当を食べなかった。





 ある日、両親は死んだ。
 重い病気で死んでしまったそうだ。
 病気を治すお金もない。
 お金があったとしても出さなかっただろう。
 俺は何故か悲しくなかった。

 何故か?
 分かり切ってる。

 俺は両親を恨んでいた。

 親に未練なんてないから。




 両親が残したお金も直ぐになくなった。
 お金がなくなり、寺子屋も退学。

 毎日バイトの日々だった。



 ある日、家を掃除していると日記を見つけた。
 母親の日記だ。


 折角だし読んでみようと日記を開く。


──────────────

 ◯月◇日

 もうそろそろ寺子屋へ行く年頃になった。あの子にはどうしても行かせてやりたい。仕事を増やそう。


 ◯月△日

 何回か面接落ちたけどやっと仕事が増えた。これで寺子屋の資金も間に合うかもしれない。


 ☆月△◇日

 ギリギリ資金が貯まった。これであの子を寺子屋に行かせられる。あの子には幸せになってほしい。


 ●月☆日

 寺子屋には弁当が必要らしい。弁当を作るお金がない。仕方ないから、私の食費を削って作ろう。そうすればかっこ悪くない弁当になるはずだ。


 ●月◇日

 段々と痩せてきた気がする。でもあの子さえ幸せならなんだってしたい。


 ▲月◯日

 弁当の中身が残った状態で帰宅してきた。あの子に何かあったんだろうか。


 ■月☆日

 最近、身体が言うことを聞かない。歩く事さえままならない。もう死ぬんだろうか。まだ死にたくない。あの子に嫁が出来、子が産まれるまでは死ぬわけにはいかない。


────────────────



 ここから先は白紙だった。

 俺は目から水が溢れ出てくる。
 まるで水風船が破裂したかの様に。

 俺は後悔した。
 俺は何もしてあげれなかった。
 俺はこの事を知っていたはずなのに。

 もし帰ってきてくれるなら謝りたい。

 もし帰ってきてくれるならお礼をしたい。

 もし帰ってきてくれるなら役に立ちたい。


 俺は両親を恨んだ。
 何故帰ってきてくれないのかと。




 手に持っていた日記は俺の涙でびしゃびしゃになっていた。
 俺は日記を閉じ、棚にしまう。

 俺は決意する。

 俺は強くなって世界一幸せになる。





────────────────





 俺はセトヘイム魔王ダグラスになった。
 まさか俺が魔王になるとは思いもしなかった。
 そして愛する妻と結婚し、子供を身ごもった。
 これで俺は幸せになっただろうか。
 これで俺は満足なのだろうか。



 そして俺の子供が産まれた。
 女の子だった。
 名前は妻と話し合い、決めてある。
 「リディア」という名前。
 “ディア”というか言葉は「愛する」という意味がありそう名付けた。

 妻はリディアを産んだ後、旅に出てしまったがいつかまた会えるだろう。

 幸せを願う限り。

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