魔王の娘に転生したので学園生活楽しみたい!

ひょー

第6話「魔王の生存」




 日が沈み、辺りはもう真っ暗になっていた。
 どれだけ走ったかはわからない。
 正確にはセバスに抱かえられていたので私は走ってないのだが。
 セバスはスイスイと暗闇の森を進んでいる。
 汗ひとつかいてない。


「ここまで来れば大丈夫でしょうか」


 セバスはそう言い立ち止まる。
 立ち止まった場所は辺りに木々が生えておらず小さな広場になっていた。
 ここで野営する様だ。


「野営ってどうするの」


 野営なんて前世ではやったこともないし、やろうとも思った事がない。
 テレビや漫画を見る限りテントを張ったり寝袋を着て野営をしている。
 だがそれを持っている素ぶりがないのだ。
 もしかしたら、そのまま地面で寝るのだろうか。
 そんな事を思考して聞いてみるとセバスは魔法を行使し始めた。


「野営は結界魔法を使います。 結界はテントとして代用でき、余程の外敵でなければ壊れることはありません」


 この世界には魔法があるのをすっかり忘れていた。
 成る程。結界魔法はそんな使い方があるのか。
 いつか使う時が来るかもしれない。覚えておこう。

 集めた薪に魔法で火を付ける。
 本来なら火口を探し、木と木を摩擦で燃やすやり方が一般的だ。
 それを魔法は一瞬で燃やすことが出来るのだ。
 便利でしょうがない。
 火が無事付き、倒れていた丸太に座る。


「これでこの場は大丈夫でしょう。 私は少し用事がありますので1人で野営してください」
「えっ?ちょ、何処に行くのよ」
「今現在の状況を確認しておきたいのです」
「⋯⋯大丈夫?」


 セバスは魔王の生存を確認したいのだろう。
 それは私も気になることだ。
 だが、まだ勇者が生存している可能性がある。


「私の事は心配ありません。 無駄に歳を取ってませんから。 それよりリディア様の事です。 リディア様ならこんな森程度余裕でしょうが、もしもの事があるかもしれません。 注意を怠らずにお願いします」
「そう、わかったわ」


 私の返答を聞き、セバスは頷いた後、直ぐにセトヘイムの方向へ走り出した。
 セバスの影は森の木々で既に見えない。

 セバスを見送った途端、急激な眠気が襲ってくる。
 私は知らないうちに結構疲れていたらしい。
 正直野営といっても、もう何もする事がない。
 セバスが作ってくれた結果に入り、横になると直ぐに眠りに落ちた。



────────────────



 ■セバス視点

 リディア様を野宿させ、魔王様の生存を確認しに行く。

 勇者からの逃走時は、リディア様を抱かえていたので速く走る事が出来なかった。
 今は1人である為、往復しても朝には野宿の場所に間に合うだろう。
 それにリディア様はおそらく私よりお強い。心配する必要はないのかもしれない。


「魔王様⋯⋯御無事でいてください⋯⋯」


 無意識に自分の希望を口に出す。
 実際、魔王様がどうなっているのかは何となくわかっている。
 私には魔眼があり、魔力が視覚として見えている。
 野営地の様な遠い場所でも魔王様の魔力が感じ取れてしまう。

 魔眼によると魔王様の魔力は消滅している。
 魔力の消滅は既に死んでいるか、感知されない様にしているかの2択。
 だが魔王様は感知されないスキルは使えない。故に死亡しているという事だ。
 だが、どうしても信じたくない。
 魔眼とかいう力に頼らず、自分の目で確認したいのだ。


---


 1時間程走ると、セトヘイムの全景が見える場所に着く。


「なっ⋯⋯これは⋯⋯」
 

 そこには瓦礫と魔物や魔族の死体が地面を埋め尽くす様に広がっている。
 魔物や魔族の血で真っ赤な海とも言えるぐらいである。


「これは酷いですね⋯⋯」


 兎に角、本来の目的である魔王様の生存を確認出来る場所へ移動する。
 その場所まで到着したが、まだ安全というわけではないので近くにあった瓦礫を影に隠れる。
 そこは魔物達の死骸はなく、激戦があったかの様にボロボロな地形になっていた。
 そこの中心に倒れている2人。
 魔王様ともう1人。勇者が倒れていた。


「相打ち⋯⋯?」


 この現場を見るに、相打ちの可能性が高い。
 そういえば、魔眼で勇者の魔力が消えているのに気づいていなかった。
 遠くから眺めていてもしょうがないと思い、2人に慎重に近づく。

 2人は確かに死んでいた。
 相打ちと見て間違いないだろう。
 私も参戦していれば魔王様は生きておられただろうか。

 私は昔、魔王様に助けられた身。
 魔王様がいなければ私は死んでいただろう。
 まだ恩も何も返してないのだ。
 昔の事を思い出しているとふとある事を思い出す。
 リディア様が産まれた時にした事。


「魔王様の約束、必ず守りますので──」





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