紫陽花
001.新しい世界
__もうどのぐらい走っただろうか
足が千切れそうなぐらい痛い
どうしてこんな思いをしなくてはいけない?
なんで?
…あれ?
どうしてだろう?
どうして走っている?
『痛っ…!』
頭が割れそうなほど痛い
目の前が歪んでみえる
…誰か…
助けて
『ん…』
目の前が明るくハッキリとみえる
何処かの建物の中だろうか
私は横になって毛布を掛けられている
助かった??
「目が覚めたかい?」
私の横に座っている白髪の女性…?いや、きっと男性だ
「アンタ、2日も寝込んでたんだよ」
白髪の男性は心配そうに私を見つめては
起きられそう?と言って優しく起こしてくれた
「店の近くで衰弱してるアンタを見つけて連れてきたの」
『…助けて下さったのですか…』
「ウチじゃないんだけどね??そこにいる男よ」
白髪の男性が指した方向を見れば
短髪の男性が壁にもたれ此方をジッと見つめていた
「やっと目を覚めたのか」
「そういえば!まだ自己紹介をしていなかったわね!ウチは梓(アズサ)、この店の店主の代理を務めてるの。そしてそこにいる男が…」
「薊(アザミ)だ。お前の名は?」
名前…
あれ?
思い出せない
『…わからない』
2人は目を見開いて此方を見ている
「…名前がわからない?どういうことだ」
『私が誰なのか…今まで何をしていたのか、わからないんです』
自分の手を見つめてはどうして、こんなに手が震えているのだろうと思った
梓さんが私の手を優しく包み込むように握ってくれた
「…じゃあ、その背中の印はなにか覚えているかしら?」
背中の印…?
鏡で見せてくれたけど覚えていない
梓さんから一部屋借りた
でも
私はこれからどうすればいいのだろう
自分の記憶がない
思い出せるだろうか
「おい、梛(ナギ)」
『…梛?』
薊さんが裾を開け、梛と呼んできた
「名前がないと不便だろ、悪いが俺がアンタの名を名付ける。今日からアンタは梛だ」
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