最強の種族が人間だった件 ~ エルフ嫁と始める異世界スローライフ ~
王都騒乱
ところ変わって此処は、葉司たちの隠れ家から30キロほど離れた地点に存在する王都《ミズガルド》である。
原因不明の爆発により月が破壊されてからというもの王都は、未曾有の大パニックに陥っていた。
「ええい! こんな大切な時に第2調査部隊はまだ戻らんのか!」
王都の神殿の中で青筋を立てて部下を叱咤している男が1名。
騎士団長のカズールである。
上から月破壊の事故処理の依頼を、一手に押し付けられることになったカズールは焦っていた。
街の住人たちは、今回の事件の原因を『魔族の反乱』と決めつけて、徒に騒ぎを大きくしている。
何はともあれカズールが最優先に行わなければならないことは、月破壊の原因を究明することであった。
「騎士団長。ただいま戻りました!」
神殿の中に年若い少女の声が響き渡る。
細見の体躯に不釣合いな長剣を携えた少女の名前はロゼッタと言った。
新人類の中でも取り分けバランスに優れた種族である『ニューマン』のロゼッタは、若くして騎士団のエースの座を恣にしていた。
「おお! ロゼッタよ……! よくぞ戻った! して、調査の結果はどうであった!?」
カズールは今回の月破壊騒動の原因について新しく発見された古代遺跡にあると踏んでいた。
人族残したとされる古代遺跡には、高度なテクノロジーを有した未知の兵器が存在することがあったからである。
それらはレガリアと呼ばれ、発見次第、国の宝物庫の中に収められるのが決まりとなっていた。
仮に月を破壊するようなレガリアが見つかったのであれば、どんな手を使っても入手しなければならない。
他国の手に渡るようなことがあれば――世界の情勢は一瞬にしてひっくり返ることになる。
「まずはこちらをご覧下さいまし。今回の探索で発見されたアイテムになります」
ロゼッタが取り出したアイテムを見たカズールは驚きで目を見開く。
「これは……髪の毛……? もしや聖遺物か……!?」
その聖遺物には常軌を逸した量の魔力が込められていることが分かった。
職業柄、聖遺物を扱うことが多いカズールであったが、これまでに魔力を有した聖遺物を見たことはなかった。
「なんと面妖な……。この聖遺物は従来のものに比べて10倍……いや、それ以上の魔力が内包されているように見えるぞ!?」
「当然ですわ。この聖遺物は1万年前に生存していた人族が残したものではなく……現代を生きる人族が残したものになりますから」
「なんだって……!?」
その言葉はカズールに未曾有の衝撃を与えるものであった。
「それは人族の生き残りが現代に存在するということか!?」
「さぁ。わたくしもそこまでは……。しかし、そう考えると月が破壊された理由についても推測を立てることが出来るのではないでしょうか?」
「う、ううむ。たしかに」
太古の昔、人族が滅びた理由はその力があまりに強大過ぎたからだと言われている。
彼らが争いあった結果、大地を焦土と化して、自然と衰退していったという。
人族の絶滅後は、獣人・エルフ・ニューマンと言った新人類が生まれ今日まで文明を築いてきたのであった。
「騎士団長。遺跡の探索ですが……引き続きわたくしに任せては頂けないでしょうか?」
「む。しかし、調査の期限は今日までに指定したはずだが?」
「はい。ですが、個人的に気がかりな点がありまして……。部下は必要ありません。一月ほど時間を頂けないでしょうか」
「…………」
ロゼッタの真剣な眼差しを目の当りにしたカズールは心の中で溜息を吐く。
付き合いが長いカスールは、ロゼッタが1度決めたことはテコでも曲げない頑固なタイプであることを知っていた。
「分かった。後のことはお前の好きなようにするがよい」
「……ハッ。ありがとうございます!」
一礼すると、ロゼッタは足早に神殿を後にする。
(待っていて下さいまし。お姉さま……!)
リア率いる第1調査隊は、記憶の上では既に全滅したということになっている。
だがしかし。
遺跡の中にリアの死体は見つけることが出来なかった。
ロゼッタは世界中の誰よりもリアのことを尊敬していた。
良家の令嬢に生まれたワガママ娘に過ぎなかったロゼッタが今の地位にまで上り詰めることが出来たのは、偏にリアの指導があってこそである。
誰よりも気高く、強かったあの人が死んでいるわけがない。
もしかしたら遺跡探索任務で怪我をして、どこかで体を癒しているという可能性も考えられる。
(わたくしが絶対に貴方のことを見つけてみせますわ……!)
決意を新たにしたロゼッタは、遺跡周辺エリアの探索を開始するのであった。
原因不明の爆発により月が破壊されてからというもの王都は、未曾有の大パニックに陥っていた。
「ええい! こんな大切な時に第2調査部隊はまだ戻らんのか!」
王都の神殿の中で青筋を立てて部下を叱咤している男が1名。
騎士団長のカズールである。
上から月破壊の事故処理の依頼を、一手に押し付けられることになったカズールは焦っていた。
街の住人たちは、今回の事件の原因を『魔族の反乱』と決めつけて、徒に騒ぎを大きくしている。
何はともあれカズールが最優先に行わなければならないことは、月破壊の原因を究明することであった。
「騎士団長。ただいま戻りました!」
神殿の中に年若い少女の声が響き渡る。
細見の体躯に不釣合いな長剣を携えた少女の名前はロゼッタと言った。
新人類の中でも取り分けバランスに優れた種族である『ニューマン』のロゼッタは、若くして騎士団のエースの座を恣にしていた。
「おお! ロゼッタよ……! よくぞ戻った! して、調査の結果はどうであった!?」
カズールは今回の月破壊騒動の原因について新しく発見された古代遺跡にあると踏んでいた。
人族残したとされる古代遺跡には、高度なテクノロジーを有した未知の兵器が存在することがあったからである。
それらはレガリアと呼ばれ、発見次第、国の宝物庫の中に収められるのが決まりとなっていた。
仮に月を破壊するようなレガリアが見つかったのであれば、どんな手を使っても入手しなければならない。
他国の手に渡るようなことがあれば――世界の情勢は一瞬にしてひっくり返ることになる。
「まずはこちらをご覧下さいまし。今回の探索で発見されたアイテムになります」
ロゼッタが取り出したアイテムを見たカズールは驚きで目を見開く。
「これは……髪の毛……? もしや聖遺物か……!?」
その聖遺物には常軌を逸した量の魔力が込められていることが分かった。
職業柄、聖遺物を扱うことが多いカズールであったが、これまでに魔力を有した聖遺物を見たことはなかった。
「なんと面妖な……。この聖遺物は従来のものに比べて10倍……いや、それ以上の魔力が内包されているように見えるぞ!?」
「当然ですわ。この聖遺物は1万年前に生存していた人族が残したものではなく……現代を生きる人族が残したものになりますから」
「なんだって……!?」
その言葉はカズールに未曾有の衝撃を与えるものであった。
「それは人族の生き残りが現代に存在するということか!?」
「さぁ。わたくしもそこまでは……。しかし、そう考えると月が破壊された理由についても推測を立てることが出来るのではないでしょうか?」
「う、ううむ。たしかに」
太古の昔、人族が滅びた理由はその力があまりに強大過ぎたからだと言われている。
彼らが争いあった結果、大地を焦土と化して、自然と衰退していったという。
人族の絶滅後は、獣人・エルフ・ニューマンと言った新人類が生まれ今日まで文明を築いてきたのであった。
「騎士団長。遺跡の探索ですが……引き続きわたくしに任せては頂けないでしょうか?」
「む。しかし、調査の期限は今日までに指定したはずだが?」
「はい。ですが、個人的に気がかりな点がありまして……。部下は必要ありません。一月ほど時間を頂けないでしょうか」
「…………」
ロゼッタの真剣な眼差しを目の当りにしたカズールは心の中で溜息を吐く。
付き合いが長いカスールは、ロゼッタが1度決めたことはテコでも曲げない頑固なタイプであることを知っていた。
「分かった。後のことはお前の好きなようにするがよい」
「……ハッ。ありがとうございます!」
一礼すると、ロゼッタは足早に神殿を後にする。
(待っていて下さいまし。お姉さま……!)
リア率いる第1調査隊は、記憶の上では既に全滅したということになっている。
だがしかし。
遺跡の中にリアの死体は見つけることが出来なかった。
ロゼッタは世界中の誰よりもリアのことを尊敬していた。
良家の令嬢に生まれたワガママ娘に過ぎなかったロゼッタが今の地位にまで上り詰めることが出来たのは、偏にリアの指導があってこそである。
誰よりも気高く、強かったあの人が死んでいるわけがない。
もしかしたら遺跡探索任務で怪我をして、どこかで体を癒しているという可能性も考えられる。
(わたくしが絶対に貴方のことを見つけてみせますわ……!)
決意を新たにしたロゼッタは、遺跡周辺エリアの探索を開始するのであった。
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