春夏秋冬〈シーズン〉〜異世界を翻弄する最強4人兄弟〜

もちあ

第22話 〜別行動〈ナツミ〉1〜

5人と別れたあと、ナツミは部屋にこもっていた。
ギルドにある部屋なので、そこまで豪華では無いが、最低限の清潔さは保っている。

ナツミはその部屋の奥にある小さな机へと向かった。
明日を引くと『ギギッ』と古びた床と椅子の擦れる事が聞こえる。

(あとで修理しよっかな……)

ナツミは物を作ることに優れている。それ故に、建築にも手を出している。日本にいた頃の家具のほとんどはナツミが作ったものだ。家具だけではなく、冷蔵庫や洗濯機と言った電気製品もナツミが作ったものなのだが……

ナツミが椅子に腰かけ、『ナツミちゃん専用開発セット』を机の上に置き、そこから様々な道具を取り出した。

今から作るのはで必要なものだ。つまり武器。この世界で生き抜く為に、死なない為に必要なものだ。

ナツミの運動能力の低さはその体型からはありえないほどのものだ。本人も運動能力の低さはコンプレックスになっている。

なのでナツミは動かなくても敵を倒せる武器が必要なのだ。今から作るのは“レーザーガン”のようなものだ。日本にいた頃は開発不可能の武器など、言われていた時もあったが、ナツミはそれを開発している。もちろん人を殺せるほどの力がある。今回は持ってくるのを忘れた。というより、持ってこなかった。
何故ならもっといいのが作れると確信していたからだ。それにつくるのは楽しい。

この世界には“マナ”と呼ばれる物質がある。マナを使えば強力な“レーザーガン”をつくる事ができる。ティーナから聞いた話によるとマナは空気中を漂っているらしい。魔法は、体内にあるマナを使って発動するらしい。マナの回復方法は様々でただ立っているだけでも回復するが、一番いいのは睡眠らしい。“マナポーション”という道具もあるらしい。

ナツミは、空気中のマナだけを集めて、タンクマガジンの中で圧縮。圧縮。圧縮し、放つ。と言った簡単な仕組みの銃を作ろうとしている。ただ、全てを自分の力だけでやると、時間がかかりすぎる。
出来ない。というわけでは無いが、今は時間が惜しい。一刻も早く戦うすべを身につけなければならない。

なのでナツミは惜しみなくスキルを使う気だ。

今回使うスキルは“操り人形プログラミング”だ。
操り人形プログラミングとは、1つの物体ごとに記憶型動作をうえつけるスキルだ。例えば蛇口に

【水をずっと出し続ける】

と、プログラミングすると、その蛇口はスキルを解除するまで永遠と水を流し続ける。
仮にその蛇口がひねられてない場合は恐らくパイプが壊れるだろう。十分に使い方を考えていないと自爆してしまうスキルなのである。

まずはマナを溜めて、そのマナを圧縮するタンクマガジンが必要だ。それとそのタンクマガジンからレーザーを発射するための銃口や出力を調整する装置やトリガーなどの様々な細かい部品を作ることになる。

「よっし!!!」

ナツミは気合を入れて作業に取り掛かる。といっても、今はスキルの力があるので形だけ作ればあとは楽なのだが、それでもやはり、高度な技術を求められる。

まずは箱の中から一枚の紙とボールペンを取り出した。
これはナツミのこだわりなのだが、建物や道具の設計図を描くときは、パソコンではなく紙に描いている。
ただ、フユカに描いてもらったときは別だが、ナツミにはナツミなりのこだわりがある。

とりあえずナツミは、レーザーガンの大まかな形。部品の細かな形。その部品の場所、役目などをしっかりと、丁寧に描いていった。それも、常人では到底無理なスピードで……

圧倒的早さで設計図を描き終えたナツミはレールガンの製造に移った。
形さえできればあとは簡単。という考えは武器の製造、開発においては命取りとなる。

そもそもナツミは道具や機械を作る時に手を抜くことはない。それどころかほぼ全ての動画の製作に集中力MAXで取り組んでいる。普通の人ならそんなことはしないだろう。
嫌、しようとしても出来ない。と言ったほうがいいだろう。人というのはどれだけ集中していてもいつかは集中力が途切れる。その集中力が途切れるタイミングは様々だが、1つの事に集中力MAXで取り組めば相当な体力と精神力が必要となる。

学生時代。こんなことを言われたことはあるだろうか?

『丁寧に書けよ〜。でも時間がないから急ぎめで丁寧に書けよ』

この発言は明らかに矛盾している。

丁寧に書く。ということはすなわち時間をかけて慎重に書くということだ。
それを“急ぎめ”でというのは明らかにおかしい。
普通に考えて、結局は雑になるのがオチだろう。

しかしナツミはそんな矛盾を実現させたような人物だ。

1つ1つの行動は丁寧で慎重に、ゆっくりと時間をかけて取り組む。
しかし、結果として時間はあまりかかっていない。

実質マジックのようなことをいつもしているナツミ、今回もいつも通りそんなをしているナツミ。
繊細な作業を黙々と進めている。タンクマガジンや銃口などの必要不可欠な部品から細かな部品を作っていく。

そして、全ての部品が完成した。あとはスキル操り人形プログラミングを使用し、組み立てるだけだ。

まずはじめにナツミは、タンクマガジンを触りながら操り人形プログラミングを使用した。掌から紫色の綺麗な光が出てきた。

「プログラミング

発動条件。【使用者 桜井 夏美の発動許可】
動作内容。【空気中のマナを溜めてタンクマガジン内の三分の一が溜まったらマナを圧縮する】

プログラミング終了」






「ふぅー」

一応やってみたものの本当にできたかどうかは危うい。

ナツミは実験を開始した。もう一度掌でタンクマガジンを触りながら今度はこう言った。

操り人形プログラミング発動!!!」

ナツミは周りのマナがゆっくりと着実に手に持っているタンクマガジンに吸い寄せられるのを肌で感じていた。
一旦は実験成功というところか……と、思ったナツミだが、不意にあることに気づく。

(あれ?これどうやって停止するの?)

そう。ナツミが設定したのは発動条件。その発動した動作を停止させる方法は無いのだ。

「あちゃー。こりゃやっちゃったな。うっかりうっかり。まぁでも、失敗は成功のもとともいうしね」

ナツミは軽く言うと、再度スキルを発動した。もちろん掌にはタンクマガジンが握られてある。

「プログラミング

停止条件。【使用者 桜井 夏美の停止許可】

プログラミング終了」


「これでよしっ!」

ナツミはガッツポーズを決めた。ここまでの作業をわずか30分足らずで終わらしたのだ。

丁寧に早く。

その言葉を忠実に再現してみせるナツミ。
そしてナツミは、次の部品へと手をつけた。

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