春夏秋冬〈シーズン〉〜異世界を翻弄する最強4人兄弟〜

もちあ

第11話 〜おはなし〜

4人が戻ってきた頃には既に夜だった。昼間通った道も明るくて、賑やかで良かったが、夜の街も、真っ暗な道に店の前に何個ものランプが辺りを照らしている。とても幻想的だ。

そして、こんな状況でもナビ冬華は平常運転だ。ひょいひょいひょいっと道を曲がり大きな建物ーーギルドーーに着いた。灯りがついているのでどうやらまだ開いているようだ。夜とはいえ、まだ7時半ごろだ。ギルドには酒場もあるので夜もオープンしている。もちろん遠くに出掛けた冒険者たちを迎えるという仕事もある。

『カララン』
「いらっしゃーい」

店を開けると鳴るベルの音。今日の昼頃に担当してくれたティーナの言葉。そして、ガヤガヤうるさい。雑音に関しては昼間より少しボリュームが上がった。というより人数が増えたというべきか……

4人はスタスタと受付に向かう。前に2、3人ほど人がいたため少し待つことにした。

「お?見ない顔だな、新人か?」

前の男性が声をかけてきた。頭の方はバリカンで思いっきり剃ったかのような坊主。眉毛は太く、ごつめの顔だ。

「はい。今日の昼頃に冒険者になったばっかなんです」
「ほぉー、そいつはめでたいこった。お前らはまだランク{F}だろうが、まぁ……頑張れよ」
「……ランク?」
「は?もしかしてランクをしらねぇのか?」
「ランクって……あの魔物表の?」
「あ、あぁー……そいつと似てるんだが少し、違うやつだな」

その話を聞いていたのか先頭の冒険者の担当が終わった途端にティーナが『バッ!』っと立ち上がった。

「すっ、すいません!ランクの説明をするのを忘れてましたぁ!」
「ランクの説明を忘れるってどんだけドジなんだよ……」
「いっ、いやぁ…この人達が常識知らずすぎて肝心なとこが抜けていましたw」
「い、いやそこ笑うところか?」
「あ、あははー」
「まぁいい、代わりに俺が説明してやる。まずギルドカードを出してくれ」

4人はステータスカードと一緒にもらったもう1つのカードを取り出した。

「そう。それがギルドカードだ。主に身分証となるから大事に持っておけよ」
「それは大丈夫です」
「ギルドカードに何書いているかはもう見たのか?」
「名前。年齢。出身地。犯罪歴。依頼達成数。依頼失敗数。所属チーム。それと数字」
「そう!その数字がランクを表しているんだ」

その説明を一覧にどうぞ……

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Fランク   初心者クラス
Eランク   初級冒険者見習いクラス
Dランク   初級冒険者抜いクラス
Cランク   中級冒険者見習いクラス
Bランク   中級冒険者クラス
Aランク   上級冒険者見習いクラス
AAダブルエーランク   上級冒険者クラス
Sランク   マスタークラス
SSダブルエスランク   キングクラス
SSSトリプルエスランク   エンペラークラス
Xランク   ゴッドクラス

平均はCランク辺りらしい。Xランクというのもあるが、到達した人はいない。(一部の人たちは神様だけが手に入れられる領域と言われている)
SSSランクの到達者は1人。今は生きていない。SSランク到達者は5人。その内1人だけがまだ生きているらしい。AAランクとSランクの間にはとてつもなく高い壁があり、その壁を超えるのはとても難しい事だ。AAランクになる人も少ない。

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「……とまぁ、こんな感じかな」
「へぇーそれで、お前のランクはどれくらいなんだ?」
「ハハッ、やっぱそうなるわな。俺のランクはAランクだ!それと、俺の名前は“ガンバ”だかんな!」
「わかったガンバ。てゆーかお前って強いんだな」
「これでも強い方の部類には入っているかな?いやぁーBランクからAランクに上がるのは凄く大変だったぜ。ざっと2年はかかった」 
「にっ、2年!?」
「見習いから上がるのはまだしも、新しい階級に行くには苦労がいるな」
「どうやったらランクは上がるんだ?」
「ギルドに自分の力が認められればなんだっていいんじゃねーか?」
「それじゃダメです!」

ついさっきまで完全に空気状態だったティーナが復活した。流石に無視されるのは耐えきれなかったようで少し怒っている……

「あっ、そーなんだ…」
「そーなんです!ガンバさんの言うことも一理あると思いますが、まずは依頼の達成数ですね。失敗数が多ければ多いほど、ランクは上がりにくくなります。それと、ギルドで行われる模擬戦も含まれますね、ギルドにお金を払い、戦いたい相手(ギルドの中から)選び対戦します。勿論模擬戦だけでなく、マナの量など魔法の強さなども見ますがね…」
「そーいやー俺が上がっていったのって、ほとんど模擬戦だったか」
「それでも模擬戦だけでランクが上がることはありません!魔物によってフォーメーシャンや戦い方を変えなければ意味はないですからね。筆記テストなんかもやっています」
「筆記テストに実技テストかぁ…体育なら簡単だったんだがなぁー」

春斗が何かを思い出しながらそう言った。たしかにそうだと思う。春斗は超人だ。いや、化け物だ。50メートルを世界最速で走るは、シャトルランをすれば最後まで完走してしまい,次の授業の時間が少なくなるわ(ラッキーーー!!)とにかく実技に関してはいい思い出と嫌な思い出がある。

「とまぁ,こんな感じですかね」
「本当に?」
「大丈夫です!!」

ティーナの声はギルド内に響いた。

「そーいやー ガンバ ってどーしてギルドに来たんだ?」
「こいつを持ってくるためだ」

カウンターに置かれたのは小さな指輪だった。指輪には赤く光る宝石が付いている。春斗だけが見えているが,指輪の内側には何か名前のようなものが彫られている。おそらく結婚指輪だ。

「これは?」
「こいつぁー,盗賊に殺された俺の友達の妻のもんだ……あいつが泣きながら結婚指輪だけは取り返してくれって言って来たんだ。俺はすぐに取り返して来て、すぐに届けに行った。が、あいつは既に死んでいた。ベッドの上で血だらけになったのを見たんだ。ちゃんと遺書もあったしな。それで、その指輪を届けに来たんだ」

ガンバ の目が少し涙目になっている。その時のことを思い出したのだろう。そして、春斗たちも初めてこの世界のことを知った気がした。前の世界がいかに平和だったかを実感した。死が間近にある。その意味を…………

「なんか……ごめんな,それと、優しいんだな」
「いいさいいさ。それに、今頃あいつは妻と一緒に天国でラブラブしているだろ!」
「…そうだな」

秋也には詳しくわかる。詳しく分からなくとも他の3人もわかる。この元気さは自分の気持ちを紛らわす為のものなんだと……

「はぁー…こんな話はもういい。それより,今度は俺が聞く。なんでお前たちはここに来た?」
「それは、魔物を倒したからそれで金を稼ごうとしてだ」

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