春夏秋冬〈シーズン〉〜異世界を翻弄する最強4人兄弟〜

もちあ

第5話 〜戦闘〜

「おっさん、大丈夫か?」
「!?あんたたちは誰だ?それに、あんたらが乗ってるその白い魔物はなんだい?」

春斗はまず、赤目の狼に襲われていたおっさんの無事を確認した。おっさんはセグウェイ(持つ部分がない バージョン)
のことを魔物と勘違いしたようだ。

「助けに来た」

春斗はストレートに返事をするとセグウェイから飛び降り、赤目の狼の前に立った。まるで、今からガンマン同士の闘いが始まるようだ。

「初めての魔物in異世界 楽しみだ!」

もうお気づきかもしれないが、春斗は戦闘狂だ。
相手が未知のもの、自分より強いとわかっているものに対する目は戦闘狂のそれだ。

先行は魔物だ。いや、魔物との闘いでRPGのようなターンはないのだが…今はそんな風に思える。

赤目の狼は、春斗の腕めがけて噛み付こうとして来た。
普通の人ならば、そこで腕は粗大ゴミ当然のようになっている。“普通”ならだ。
春斗の強さは、単純な身体能力だけじゃない。その場その場での対応力、一度見た技には引っかからない。春斗に“初見”という言葉は通用しない。戦闘は一発勝負、負けることは許されない。そう、あの日のようなことは…………

「そんな、呪い噛みつきには当たるわけねーだろ!!」
「ガルルルゥウ」
「今度は俺の番だな!」

そう呟いた瞬間、春斗は赤目の狼に向かって走り出した。春斗の足元に小さな砂煙が舞う。

「今度はっ、こっちの番だっ!」

春斗はそう叫び、赤目の狼の頭に思いっきりかかと落としをお見舞いした。

「ガルゥッ!」

しかし、流石異世界といったところだろうか、サバンナで偶然出会ったライオンでさえ、このかかと落としの前にはなす術なしだったというのに、この魔物はダメージは入っているものの、まだ動けそうだ。

すると、赤目の狼の周りに何やら黒色と紫色の球が空中に出て来た。春斗が目をパチパチさせている。瞬間。赤目の狼の周りにあった邪悪な球が、春斗めがけて飛んで来た。見ていた3人は、『あれってシャ◯ーボールじゃね?』と思ってしまったのは仕方がない。
また、春斗もその球を避けながらそう考えていたのだ。

「あれが魔法か、やっぱすげぇなー」

春斗が感心しているとまた新しい球が出て来た。春斗もそこまでお人好しではないため、次こそは隙を与えない。秒速で接近すると、今度はジャブ、アッパー、ストレート。の順番で連続攻撃を繰り出す。
流石にやりすぎてしまったようで、赤目の狼は、ズタボロになっていた。

「おおぉー、まさか“ブラックウルフ”を素手で倒すとは……感心、感心」
「そいつの名前、“ブラックウルフ”って言うんだー」

秋也が言った。とても軽く返しているが、その目はこのおっさんがどう言う人物かを読み取ろうとしている。

「そんなことも知らずに戦っておったのか、この辺じゃよく出るんだけどな……。それより、助けてくれてありがとな!俺は、‘バーム’だ。もうかなり年がいってるが、気軽に話しかけてくれや」
「ああ、それよりも、こっちも紹介したほうがいいな。俺が‘ハルト’で、こっちの黄色い茶髪が‘ナツミ’このオレンジ色の短髪が‘アキヤ’こっちの白髪が‘フユカ’だ」
「春兄」
「おっ」

どうやら秋也の分析が終わったようだ。秋也はまず、バームの方を見て、こう言った。

「バーム。お前は商人だな、それもかなりベテランの」
「!!」

バームが驚いたような顔をした。その後、すぐに顔を戻し、秋也の方を見た。

「やっぱ、君は俺を見ていたんだな。俺がどう言う人間か見分けるために」
「ああ、」
「アキヤ、と言ったな。俺の負けだ、商人って事はわかると思うがベテランってのは隠して行動しているんだよな」

『商人ってのはわかると思うが』の部分で夏美と冬華が頷き、春斗がそれを見て(俺には全くわからなかったぞ!)と心の中で叫んだのはどうでもいい話だ。

「何故そうすると思う?」
「その方が相手に油断ができるから……」
「そうだ。なるべく若手のような素振りを見せていたんだけどね」
「それはとにかくバーム、俺はお前を信頼できる人間だと判断した」
「商人にとっては、信頼がなによりも大事なんでな」
「それが分かっていれば、一人前の商人だろうよ」

秋也が笑いながら答えた、頭に浮かんだのは小学校の時の思い出だ。一年生のある日、秋也は2人の先生に聞いた。『商人にとって一番大事なのはなんだ?』と。
どっちの先生も最初は戸惑っていたが、とにかく質問に応えようと思い、考えた。そして出て来た答えが、{話す力}と{経験}だった。秋也はそれを聞いた瞬間鼻で笑った…………

〈戻〉
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「それよりバーム、俺はお前を信頼してるから聞く」
「おうっ、なんだ!」
「スキルってどうやってみるんだ?」
「……………………は?」

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