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S H I N R A .

〔第1項〕入口はどちらですか?


高校を卒業し、晴れて大学へと入学した僕だが
入学して数日して、 ​周りの生徒や大学内の
なんともいえない浮かれた空気に疑念を抱いていた。

「ねぇ、真尋まひろ

夏の夕暮れ時にみる向日葵ひまわりの様に
緩やかに歪曲わいきょくした猫背をもつ彼は
視線を続けてスマートフォンへと下ろしたまま
言葉だけを返した。

「んぁ、どしたテツ?」

僕は真尋の返答に被さるようにして
こう続けてく。

「大学に入ってまで、はしゃぎたがる人達ってさ
   高いお金払って通ってるのに何がしたいんだろうね」

叺田 真尋かまた まひろは高校からの同級生で
いつも髪はボサボサで前髪は目に覆う様に長く
身だしなみは良いとは言えない服装で
だらしなく、なんとなーく生活してる様な奴なのだけど
たまにとんでもない正論を投げてくる。

今日の、僕に向けて投げられたそれも
「受け取れよ?」と言わんばかりの
直球ど真ん中の豪速球だった。

「あー、何もしたくないないんじゃない?
   俺らみたいに奨学金借りてまでこの学部で勉強したい      
   とかじゃないだろうし、金だって親が出してんだろし
   進学したはいいけど、したところで結局何したいか
   わかんないから、とりあえず遊ぶんだろ?」

真尋が投げてきた答えは
僕に空いてた疑問の型に、すっぽりと綺麗きれいにハマった。

念押しとばかりに彼はこう言い終えた。

「この歳で、もうやりたい事が見えてる
   俺らの方がレアケースって事なんじゃない?」

僕はため息とも違う、声にならない何かを
ゆっくり吐き出して真尋に話しかける。

「んぁーーー、確かにね。
   真尋ってほんとヘタレっぽいのに、たまーに
   ほんとたまーにいいこと言うよね。」



     

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