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S H I N R A .

[表紙]挟んだままの栞

「お入りなさい」

その言葉に誘われる様に扉を開け
初めて入ったこの部屋は、独特な重厚感があり
古くからある格式が漂う美術館のような造りだ。

正面に構えた大きなガラス窓から、
昼下がりの淡い光が、奥の書机から自分達が立つ
扉近くまでを広く差し、うっすらと灯るシャンデリアと
重なって、神々しくも思える雰囲気である。

――――――が、しかし

そこに漂う空気は、部屋の風景とは違う[重々しさ]を放ち、その荘厳そうごんさに押しぶされそうなほどの緊張感が漂っていた。

「お呼びした理由はわかりますよね、皆さん」

そう話を切り出したのは
中高齢ではあるが[綺麗な年の取り方]という言葉が
しっくりと来るような、女性学長。

金属にも似た冷たいその言葉に
「はい」とだけ返し、次の言葉を待つ僕達に
彼女は、こう続けて話した

「貴方達もご周知の通り、このような大変な事態に陥ってしまった以上、間接的とはいえ原因の一端をになう貴方達をこのまま活動させていくわけにはならないのです。
従って、貴方達の文学サークルを本日付けで廃止にします」

したくない返事だが、どうしようもないのがわかる以上
「はい、わかりました。」とだけ吐いた。

「用件は以上です。活動に使っているC館の書物管理室から速やかな撤退をお願いします」

その言葉の1拍後に、深く頭を下げ
退室しようと腰をひねると

出口いでくちさんはそのまま残って下さい。お尋ねしたいことが二、三にさんありますので。」

その声に心臓を鷲掴みにされた様な気分に陥る

「何についてかはわかりますね?」


――――――「はい。」


その後の事は、緊張感を抑え込むのに必死で
正直あんまり覚えてない。

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