雨の調

Knavery@語り部

僕とお姉さん

『お元気ですか?

 宛名のない手紙を書き続け、4年の月日が経ちました。

 1人は慣れているはずなのに、この時期になると、それが妙に寂しく感じます。今年も訪れた雨の季節が、あなたを思い出させるからでしょう。

 4年前にあなたを運んできた、大好きな雨を、今は嫌いになりそうです。

 あなたは今どこで、何を描いているのでしょうか?

 元気でお過ごしでしょうか?

 ……会いたいです』

 見せる相手がいるわけでもないのに、僕はなんだか気恥ずかしくなって『会いたいです』を黒いインクで、何が書いてあったのかもわからないくらいにぐちゃぐちゃに塗りつぶした。
 そして、乱暴に便せんにしまい込むと、文机の引き出しを勢いよく開け、積み重なる手紙の上に押し込むように置き、引き出しを閉める。
 引き出しが閉まりにくくなるほどに重なった手紙。これが何通目だったかを、僕はもう覚えていない。けど、あの日からずっと書き続けている手紙。あの人を思い出すたびに書くようになった手紙。決して宛名を書くことがない手紙。――――大好きな彼女へとむけた恋文――――。
 僕は窓の外を見た。今日も……雨が降っていた。梅雨の訪れを感じさせる。蒸し暑さを連れてきた雨。ザーザーと振り続ける止まない雨。
 四年前も、こんな雨が降っていたな……。
 僕は彼女との出会いを思い出す。雨の日に出会った彼女のことを――――

「ねえ、少年――――私を拾ってくれないかな?」

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