召喚された賢者は異世界を往く ~最強なのは不要在庫のアイテムでした〜
第1話 目指す先は
「もうすぐ街が見えると思います」
アルの言葉に頷き、期待をしてコクヨウを駆けさせる。
そして頂上についた。
丘から見下ろす風景は――――街へと向かう蟻の群れのような兵士だった。
「?! みんなっ! 街が攻められるっ!」
俺の言葉に三人は驚き、小窓から顔をだす。
数千人、いや一万人近くいるかもしれない。門までまだ距離はあるが、それもいつまで持つかわからない状態である。リアンの街でも、門の上には人が並び立ち防衛の準備は整えていた。
しかし、人数差がありすぎる。正面からぶつかったら半日も持たずに門を突破されるだろう。
「トーヤ様!! リアンの街がっ!?」
「あぁ、分かっている」
シャルが叫ぶが、どう動けばいいのか。
たった四人でこの人数を切り抜けられるか……。本気を出せば可能かもしれないが、こちらにも被害が出る可能性がある。この人数を相手にできるほど、俺の魔力は多くない。
俺は悩みながらリアンに殺到する兵士たちを見下ろすと、少し後ろに百人くらいに囲まれ戦況を見守るために陣取っている者達がいた。
……あれは。あそこだけだったら。
「攻めるのは――あそこだ」
俺は後方の集団を指差した。
「それでは、門が……」
「俺たちだけで、あの数を相手にするのは無理だ。それなら、あそこに見える――指揮官を叩けばいい」
「頭を取るということじゃな」
「あぁ、そうだ」
アル少し納得出来ていなかったが、ナタリーはすぐに理解した。
俺たちは装備を整える。今出来る最高の装備を次元収納から取り出し、三人に装備するように伝えた。
出し惜しみをするようなことはない。ナタリーはその価値が分かったようで、目を見開く。
「この装備は……トーヤ……お主、本当に一体何者なのじゃ……」
「今はそんな事を気にする時間はないっ。用意出来たらすぐに突っ込むぞ」
コクヨウを兵士から見えない場所まで下げ、五分ほどで準備を整えた。。
「ナタリーは御者台の左側を、シャルは右側を。アルはコクヨウの手綱を握っててくれ。いや、コクヨウは大丈夫だ。二人に向かって矢が放たれたらカバーを頼む」
「トーヤさん、トーヤさんはっ!?」
「俺は……ここから魔法を放つ」
指差した場所は馬車の天井だ。他の者ではコクヨウのスピードで振り落とされるかもしれない。
俺はコクヨウに「頼むぞ。お前に掛かっているからな」と一声かけ、首を撫でる。
コクヨウは眼下に広がるの兵士たちを蹂躙したいのか、興奮した様子であった。
「怪我したらすぐに言え! 回復は俺に任せろ」
「「はいっ」」
「わかったのじゃ。久々の戦争、腕が鳴るのぉ。わしがなぜ『黄昏の賢者』と言われていたのか見せつけるのじゃ」
全員が準備が終わり配置についた。
「コクヨウ頼んだぞ!」
その合図で、コクヨウは駆け出す。次第とスピードが上がっていき、一直線に目的へと進んでいった。
丘から一気に駆け下りる。
リアンへ向かう兵士たちの後方に出た事で、未だに気づいてはいない。
……あと、もう少し。
俺は両手に魔力込めていく。一発大きいのは当てて混乱しているところにコクヨウを突っ込ませるつもりだ。
草原を下る俺たちの馬車に、後方の指揮官たちも気づいたようで、忙しく兵士が動き始める。
武器を持ち、こちらに対して準備をしているのが見えた。
だんだんとその兵士達に近づいていく。
「最初に俺が魔法を放つ! 混乱したところを頼むぞ」
「はいっ!」
「任せておくのじゃ!」
兵士たちも馬車が一台駆けてくるが、未だに敵か味方か分からず武器は構えるが、こちらに向かってくる様子はない。
そして距離が一〇〇メートルを切ったところで、俺が魔法を放つ。
『火炎竜巻』
二〇メートルはあろうかという高さの炎の竜巻が、兵士たちを襲う。
突然放たれた魔法に、兵士たちは混乱し、そのまま炎に巻かれていく。
「トーヤ、お主、もう上級まで使えるのかっ! さすが賢者じゃのぉ。わしも負けてられんのじゃ!」
『我が名の下へ、集え炎よ。我の意思の下で目の前の敵を燃やし尽くせ。火炎竜巻』
「私もいきますっ!」
『炎の精霊達よ。私に力を貸してください。そして目の前の敵を打ち払って!』
二人からも炎の魔法が放たれる。只でさえ混乱しているところに、上級魔法が更に二発も打ち込まれたら、兵士たちも逃げようがなかった。
炎に包まれて次々と倒れていく。
「コクヨウ! そのまま突っ込んでくれ!!」
俺の言葉を理解したコクヨウはそのまま倒れた兵士たちを踏み越えて進んでいく。
そして、見えた。
一際豪華な鎧を着て、喚いている指揮官が。
その周りにはすでに数人しかいなかった。
俺は火球を二〇ほど浮かべ、周りの兵士に向けて放っていく。
「あとは俺に任せろ。指揮官を捉えてくる!」
馬車から飛び降りて、バスターソードを取り出し、魔法を受け倒れていく兵士たちの間を駆け抜けていく。
三人ほど盾を使いガードしたようだったが、俺はその盾ごと一刀のもと斬り伏せていく。
そして指揮官一人だけが残った。
「何なんだお前達は! 私は――」
俺は指揮官の言葉を待たずに蹴り飛ばす。
転がった指揮官が立ち上がろうとするところに、踏みつけ、剣を首に当てた。
「お前が指揮官だな。大人しくすれば、今は命は取らん……。もし、抵抗するなら――」
頬に剣先を当て、軽く斬りつける。
痛みからか、指揮官は恐怖に怯え、すぐに首を縦に何度も振った。
「では、まず、兵士たちを引かせてもらおうか?」
俺がにやりと笑みを浮かべると、指揮官の男の表情は一気に暗くなった。
コメント
如月 時雨
約8ヶ月更新されてないけど楽しみにしてます。
〔このまま更新されない可能性があるけど〕
べべ
更新楽しみ(*^^*)
面白かったです(๑•̀ㅁ•́ฅ✧♥
更新待ってます(。 ・`ω・´) キラン☆
ノベルバユーザー257425
すごく面白かったです。更新されることを願ってます。
ノベルバユーザー257291
とうやの時点で察しʬʬʬʬʬʬʬ