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俺の部屋に魔法少女が現れたんだが。

浪原ヨム

第1話 幽霊ですか?



「あっ、こんにちは柚来ゆずき いつきさん」

 俺は学校から家に帰り自分の部屋のドアを10cm開いたところで聞いたことのない誰かの声を聞いた。しかも女性の声である。
 その瞬間すごい早さでドアを閉める。汗が全身に、にじんでいる気がしてきた。
 俺の部屋に知らない誰かがいるということは……入る家、間違えたってことになるかもしれない。
 つまり……不法進入ってことになる。
 魔法の言葉である、てへぺろっ♪ では許されねぇレベルにまで達してしまったのか……俺。仮に超絶美少女でも許されないだろうけど。

 いくらマンションでも自分の家を間違えるなんておかしい。
 病院行った方が良いというより行かなくちゃいけないヤツだと思う。

 自分の職業柄、頭が動かないとまったく役にもたたないためか、間違えてしまった自分に怒りを覚えてくる。そして、それまで動けなかった体を俊敏に動かし家に人影がないことを確認し、玄関にダッシュした。

 俺は、焦りながら急いで靴を履き、外に出た。
 玄関ドアの前に立つ俺の目の前には見慣れて少しほこりをかぶった『Yuzuki』の表札。マンションに表札、しかもローマ字はおかしいかもしれないが、この表札は大切な家族の形見だからなんとなくつけている。大切なら掃除しよ……?
 まぁ、結論……バリッバリッ、俺の家マイホームだったってことだ。

 さっき入った家(俺の家だ)は冷静に思い出してみると玄関に置かれたカーペットなど、家具がシンプルが特徴のマイホームそのままだったと思う。
 人間、焦ると考える力というかそのための時間がなくなってしまうものなのかもしれない。多分、アレだあれ。恋は盲目ってやつ。えっ、違う? 同じだと思ってたんだけど。

 そんなことはさておき、ホント間違えてなくて良かったと思う。マジで病院さがしちゃうとこだったわ。
 ほっと安心し、胸をなでおろしたところで、ふわっと何かが頭を横切り、あのとき、聞こえてきた声を思い出した。
 あの落ち着いた声は多分、女性の声だったよな。数分前の記憶を辿り、徐々に明確になってきた。首を傾けて考えて見る。

 確か、『こんにちは、柚来 樹さん』って言ってたような……?
 妹すら入らない俺の部屋に誰が……? まさか……。

「幽霊っ!?」

 暗い廊下と俺の頭にこだまする。慌てて開いた口を閉じた。
 いやいや、ないない。なにそれ、超つまんない。非科学的存在は認めないし。
 そんな考えを振り払うように俺は首を左右にふった。頭が飛んでいきそう。

 そもそも、そこまでして自分を否定する必要はないはずだ。幽霊なんているわけないんだからねっ!
 まぁ、幽霊であるかどうかは、いないという結論が出る前からないとして考えると。
 誰かが勝手に進入し、その誰かは俺の名前を知っていたということに……なる。のかな? 我ながら、ぶっとんだ考えだけど、どうも、今日も元気な俺です。

 いや、でも誰だよ。そんなストーカーじみたことする女。
 問題が解けそうで解けないというもどかしさを感じながら、顎に手をやってみた。このポーズをすると考えが浮かんできそうな気しかしないよね! うんうん。と自分で頷く。

「おにぃ、何やってんの? 動きがきもいんだけど」
「おぉっ」

 くだらないことを考えていたら、聞き慣れただるそうな声が聞こえて、驚きながら振り返ると、そこには買い物から帰ってきたところなのかスーパーの袋を下げた、俺の妹が立っていた。

 妹はというと、黒髪は肩に着くか着かないかくらいの長さで服は地味な色のジャージにスニーカーと兄としては少し、いや、かなり残念な服装をしていた。マンションの暗く静まり返った雰囲気にぴったりの地味さだ。

「何、びっくりしてんの? えっ、きもいんだけど」

 妹は一歩後ろに下がっていつもは眠たげな瞳をくわっと見開き言う。割とガチでドン引きされてるし。
 ちょっと、かなりお兄ちゃんショックぅ! 言葉のナイフで切り刻まれた俺の心は叫びたがっていた。
 あと、もう一回訂正しておくが、さっきは別に、驚いてはいない。幽霊もいないし、本もボールも友達ではないことは周知のことだ。
 だから、さっき、急に話しかけられて脳裏に『幽霊』という言葉が浮かんだのは、気のせいだ。
 仮にそうでもたまたま。そう、たまたまだ。うん。

「いや、特になにも……ドアを眺めてただけだ」

 返答に困ったので、テキトーに質問に答えておく。ていうか言えるわけないだろ。妹に。自分の家かどうか確かめてたなんて。完全に頭おかしいヤツだと思われる可能性しかない。いや、もう十分思われてるか。
 それから、しばらく間があいて、我が妹はゴミを見るみたいな目をしてから首を傾け、手を胸の前でひらひらと振った。うぜぇ。魚にでもなっとけ。

「眺める? えっ、ないない。それがきもいわ」
「きもい、言い過ぎだろ。何回目だよ。ひでーな」
「えっ別に多くないし。今日、五回くらいしか言ってないし」
「一日の『きもい』数の五回のうち三回が俺ってどうなってんだよ!?」
「え? 普通じゃない? あっ、ちなみに残り二回は朝におにぃに言ったから五回中、全部おにぃで、今日、一番きもかったのもおにぃ。分かった?」

 すごい真面目な顔で早口でかえしてきた。割と、ガチなやつだ。
 容赦ねぇ、ひでぇヤツだな。おにぃちゃん怒るお? キモイですね。はい。

「ヘイ、ワカリマシタ。まぁ、家入るか」

 これ以上話し続けると豆腐メンタルの俺のメンタルが修復不可能になりそうだから話しを切っておくことにする。妹ははぁとため息をついた。そんなに疲れたか? 俺と話すのが。不安な気持ちもあったけど、言葉のナイフは捨てたみたいでほっと、俺もため息をついた。
 だが、次の一言でもう、俺の豆腐メンタルがつぶれそうになった。高野豆腐から木綿豆腐、そしてついにきぬ豆腐へと変化をとげる俺のメンタルは多分、醤油をかけたら美味しい食べどきだ。

「はっいまさら? おにぃが邪魔で入れなかったんですけど」
「もう良いわっ! 俺が悪かったよ」

 言い終わった頃にはもう妹は家に入って姿が見えなくなっていた。
 どうやら、何と言おうと俺がキモイのは変わらないらしい。悲しいね。

 妹との会話は諦めて、俺も家に入り、誰かがいる自分の部屋に戻ることとしよう。俺は重たく感じる玄関ドアをあけて家に入った。


 どうしよう。開けるの怖いんだけど。
 シンプルで何も特徴のない自分の部屋のドアの前で俺はこの状況をどうしようか思案しているところだ。誰かのトイレを待つみたいな気分だ。
 開けようと思うとなんか嫌な予感がしてためらってしまう。

 俺がうわぁーと叫びてぇ思いながら部屋の前を右往左往しはじめたところでキッチンにいる妹が何か言っているのが聞こえてきた。

「おにぃぃー。夕飯何時ぃー? 食べるなら早くしてくんない?」

 やべっ、もうそんな時間か。学校から帰りに夕日を見たのを思い出す。時間は七時くらいだろうか。
 急がねばっ。
 そう考えて気づけばドアノブを握ってガチャと部屋の中に入っていた。
 おぉ、ヤバっ。勢いで入ってしまった。これが妹の逆らえない力ってやつのか!
 後悔しても遅い、なんとか割り切り、前傾姿勢になっていた体を起こすのと同時に目も前に向けた。

「うおぉっ!」

 思わず声が出ていた。
 思ってた通り、視界の端にちろりと人がいるのが見えた。
 俺の知らない誰かがいるのだろう。

      

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