桃から生まれた桃太郎、鬼ヶ島へ鬼退治に旅立つがその前に「きびだんご」って何だよ!ってまずはツッコミたい。。。

極大級マイソン

桃から生まれた桃太郎、鬼ヶ島へ鬼退治に旅立つがその前に「きびだんご」って何だよ!ってまずはツッコミたい。。。

 それは、まだ魑魅魍魎がこの世にいた時代。"桃太郎"という清廉潔白な青年がとある村で、お爺さんとお婆さんと三人で暮らしていた。
 ある日のこと。鬼ヶ島の鬼どもが村の金品や女を奪い、村人達を大変困らせていた。それを見かねた桃太郎は、鬼どもを懲らしめるため、鬼ヶ島へ鬼退治に行くことを決断した。
 桃太郎は、お婆さんに『鬼ヶ島へ鬼退治に行くから"きびだんご"を作ってくれ』とお願いをした。
 可愛い桃太郎のため、お婆さんはきびだんごをつくろうとするのだが、しかしお婆さんは、きびだんごが何なのかさっぱりわからなかった。
『とりあえず、食べられるものなら良いか』
 そう考えたお婆さんは、きびだんごをよく知らないまま、桃太郎のために一生懸命"それらしいモノ"をつくったのだった。



 *****



「ウキィー!! 桃太郎、そのきびだんごよこせぇえええええ!!」
「仲間になるなら、いいよ」

 鬼ヶ島へ鬼退治向かう旅路。桃太郎は1匹のサルと出会った。
 桃太郎は、腰にお婆さんがつくってくれた"きびだんご"が入った腰巾着を下げていた。その匂いにつられたサルが、桃太郎に襲いかかってきたのである。

「へ、へへへ。なるなる仲間になるぜ! さあ俺によこせよ、あのやべえだんごをよぉ。うへへへへへ…………」

 すると、サルがやってきた向こう側から、今度はイヌとキジがこちらに近づいてきた。

「こらこらサルさん。少しがっつきすぎですよ」
「その通り。今の貴方は美しくない」
「うるせえ! 俺はこのだんごのために人生の全てを捧げたと言っても過言じゃねえんだぞ!!」
「また大げさな……」

 桃太郎は、腰巾着から"きびだんご"を3つ取り出して、3匹の方へ渡した。

「え。僕らにもくれるんですか?」
「ああ」
「流石は村を救わんと立ち上がった英雄。その懐の広さ恐れ入ります。ありがたく頂戴しましょう」

 イヌ、サル、キジは桃太郎がくれたきびだんごを口にする。
 すると、どこからともなく音が響いた。


【ピロリロリーン! レベルアップ!!】
【イヌ、サル、キジはLevelが1上がりました!】


「あ。何の音だ?」
「変な音と一緒に声が聞こえたような……」
「レベルアップ? これは一体」

 3匹が訝しんでいると、桃太郎が口を開いた。

「ステータス上昇。3匹はスキルポイントを振れるようだ。何か習得したいスキルはあるか?」
「「「は?」」」
「…………ふむ、そうだな。ならば俺が適当に振り分けを済ませておこう。ステータス・オープン」

 桃太郎がそう叫ぶと、突如桃太郎の目の前に幾何学模様の円盤が出現した。
 呆気にとられている三匹を放っておいて、桃太郎はその円盤を何やら操作していた。
 そしてしばらく経って、桃太郎は再び三匹に向き直る。

「振り分け完了だ。これでイヌは"水"、サルは"火"、キジは"風"の魔法を使えるようになった」
「「「???」」」

 ポカーンと惚けた顔をする3匹。何を言っているのかさっぱりわからない。そんな顔をしていた。
 その時、大柄の男がこちらに近づいてきた事を、桃太郎はとっさに気付いた。

「危ない!」

 3匹をかばう格好で、桃太郎は大柄な男の前に立ち塞がる。

「上級風魔法【聖竜塞壁ロータス・アパラタス】!!」

 桃太郎が詠唱を唱えた直後、巨大な竜巻が桃太郎と3匹を守るように取り囲んだ。
 木々も切り裂かんばかりの強烈な爆風の嵐の中、3匹は吹き飛ばされないよう懸命に地面を掴んでいた。一方で、桃太郎は平然とした様子で竜巻の向こうにいる男を凝視していた。

「へえ、これが桃太郎の力……。なるほど、あの"赤鬼"がやられる訳だ。だがッ!」

 竜巻を隔てて向こう側にいる大柄な男は、突如背中に背負っていた金棒を掴んだ。そしてそれを構えたかと思うと、途端に詠唱を唱え始める。

「最上級雷魔法【雷掌呼びトニトゥルス・アンブラーティオー】!!」
「最上級……っ! 伏せろ!!」

 その瞬間、大柄の男が振り放った金棒の衝撃波が、電撃の嵐となって桃太郎に襲いかかった。草花を燃やし、大地をえぐらんばかりの暴虐が形となって桃太郎の肉体に降り注ぐ。
 最上級魔法。1度で1000人を屠れるとされる最凶クラスの大魔法。修行に30年を費やすとされる魔法をああも簡単に放てる男。その存在を、桃太郎は記憶の片隅から思い起こした。

「貴様……、"青鬼"か!?」
「ふ、あの魔法を受けて倒れないとはな。流石は英雄」

 大柄な男、青鬼は桃太郎を見てほくそ笑んだ。青色の肌に虎のパンツ、そして2本の角。文献で読んだ稀代の大鬼の姿が、桃太郎の視界に映っていた。

「しかし、貴様はかつての大戦で死んだはず! それが何故こんな場所に」
「お前には関係のない事だ。ここで死ぬお前にとっては、な」

 青鬼は、再び金棒を振りかぶり、詠唱を唱え始めた。また先ほどの魔法を使うつもりなのだろう。
 絶体絶命。桃太郎は、すぐ側で倒れている3匹に振り返った。

「くっ。3匹とも頼む! 今この時だけ力を貸してくれ!! でなければ、この場にいる全員が奴にやられてしまう!!」
「えと。すみません、全く状況がつかめないです」
「とりあえず我々は何をすれば良いのですか?」
「俺の体にしがみついてくれ! それで何とかなる!!」
「おう! よくわかんねえけどわかったぜ!!」

 3匹は言われるがままに、桃太郎の体にしがみついた。
 すると、突如桃太郎の体が発光しだす。何事かと驚く3匹は、その瞬間、自分たちの体からナニカが吸い取られているような錯覚を怯えた。
 青鬼が呻く。

「これは……、あの3匹の力を吸収しているというのか?」
「そうだ。お前を倒すにはこの方法しかない」
「ハッハッハッハ! 血迷ったか! たかがイヌとサルとキジの力を吸収してどうなるというのだ!?」
「どうかな?」

 不敵な笑みを浮かべる桃太郎。
 そして青鬼は、桃太郎に宿る力がどんどん強くなっている事に気がつく。果てしないほど昇るエネルギーの本流は、やがて青鬼ですら判然としないぐらいに至った。

「なッ!! こ、この力の波長……。まさかその3匹、"きびだんご"を受け継ぎし者か!?」
「そうだ。この3匹はただのイヌ、サル、キジじゃない。きびだんごを受け入れ、きびだんごに認められた、偉大なる"戦士"だ!!」

 桃太郎から迸る光が、一層強くなる。彼が鞘から刀を引き抜くと、青鬼は再び金棒を振り払った。

「我が稲妻で塵となれ!! 最上級雷魔法【雷掌呼びトニトゥルス・アンブラーティオー】!!!!」

 先ほどより強い電撃の嵐が、桃太郎たちに襲う。桃太郎は刀を構え、じっと青鬼を見据えた。

「見よ、これがきびだんごの力! 最上級四属性混沌魔法【白輝五光線シグマ・インフィーニトゥム】!!!!」

 桃太郎が唱え、刀を振り降ろすと、青鬼に金色の煌めきが放たれた。青鬼の出した最上級魔法は、その閃光の渦に飲み込まれ、そして跡形もなく消失した。

「ぐ、ぐふぁああああああああああああ!!!!」

 強大な力を前に、青鬼は為す術なく桃太郎の魔法を受け、倒れた。

「か、勝った?」

 恐る恐るイヌが呟いた。
 青鬼は倒れ伏してもまだ息があるようで、ゼェゼェと荒い息を吐いている。
 そして突如、青鬼はキミ悪く声を出して笑った。

「ふ、ふっはっはっはっは!! 見事だ桃太郎! そして小さき3匹どもよ!! だが無駄な足掻きだ! 鬼ヶ島には、俺より強い奴がゴロゴロいる。貴様らはいずれこの果ての聖戦、"キビウォーズ"の糧となるのだ!! くふふふっ! はーっはっはっはぁ!!」

 キュイーンどかぁーーーーーーーーーん!!!!!!!!!!!!
 直後、青鬼の体が"謎の爆発"によって激しく燃え上がった。

「うわっ! いきなり爆発したぞ!? 新手か!」
「いや、違う。鬼たちは命尽きる際には必ず大爆発するんだ」
「そんな『特撮番組の悪者』みたいな仕様があるんですか!?」

 青鬼は爆ぜ、パラパラと音を立てて塵となった。青い肌も虎のパンツもそこには無かった。
 しーんと静まり返る一同。あまりに唐突な展開に、3匹は何を言ったものかわからない様子だ。
 その間、桃太郎は冷静な表情で荷物をまとめて立ち上がった。

「行こう」
「ど、どこへ?」
「もちろん、鬼ヶ島へ鬼退治にさ。"キビウォーズ"は既に幕を上げた。誰かがこの聖戦を終わらせなければならない」
「えっと……。ひょっとしてだけど、俺らも鬼ヶ島へ行くの?」

 桃太郎はこくりと頷く。

「君たちもまた、きびだんごに選ばれた戦士だ。共に戦おう」
「じょ、冗談じゃないぜ! きびだんごのためにそこまでやってられるか俺は帰るぜグワァアアアアアアアア!!!!」
「ああっ、サルさん!!」
「はっ! お、お前は"黄鬼"!!」
「くくく。青鬼を倒したくらいで良い気になるなよ。次は拙者が相手でござる!!」
「イヌ、キジ、協力してくれ! サルがやられた今、戦えるのは俺たちだけだ!!」
「どうやらやるしかないようですね。行きますよイヌさん!」
「何でキジさんノリノリなの!? あーもうっ! 僕たちの戦いはこれからだぁー!!」

 イヌが吠えると同時に、黄鬼との激闘が始まる。
 桃太郎と3匹の旅は始まったばかり、果たして鬼ヶ島への鬼退治は、どんな結末迎えるのだろうか?
 つづく!

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