異能バトルの絶対王者が異世界落ち

チョーカー

ステータス 世界を滅ぼしかねない魔力貯蔵量

 約束の30分が経過して、修練場に戻ってきたのだが……

 「どこにいるか、わかるか? ナナ」
 「……」

 ナナは首を横に振った。
 場内の修練場でも広い場所。サッカーなら3試合同時に行っても問題ない空間スペースだ。
 俺たちは完全に『魔女』の場所を消失ロストしていた。

 「これ、やばいかな?」

 「……」とナナは頷く。今度は横ではなく縦だった。

 「『魔女』って怒ると恐いか?」
 「……」

 またもコクリと頷かれた。

 「そうだ。ナナは『魔女』の弟子だろ? 普段、こういう時はどうやって探すんだ?」

 ダメだ。ナナがコミュニケーションを拒否して震え始めた。
 それほどまでに恐いのか。

 「……そんなとこで突っ立て、どうしたんだアンタ等? 早くおいでよ」
 「!? 『魔女』か?」
 「なんだい? 見たらわかるだろうよ……あたしゃ見えないのか。まったく慣れやしないわ。やだねぇ、こんな時は不便でしょうがないよ」

 俺たちは『魔女』の誘導で一際大きい木の下へ移動した。 

 「さて、アンタのステータスをこの紙に書かれえている」

 丸められた紙が空中を浮遊している。
 俺はそれを受け取ろうとする。しかし、「待ちな」と『魔女』から止められた。 

 「いいかい? コイツはちょいとマズイ件になっちまってる」
 「マズイ件って、俺のステータスだろ? 何があったんだ?」
 「単純な話さ。世界がひっくり返るようなステータスが表示されちまってる」
 「ステータスで! 世界がひっくり返るのか?」
 「まず、間違いなくね。見るなら覚悟を決めてから見る事だね」

 俺は無言で『魔女』から紙を受け取る
 そして、紙を広げてステータスを確認した。

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・


 『異能殺し』

 本名 ◆◆ 楓

 職業 異能力者 勇者

 第七次および第八次異能力戦争勝者 『絶対王者』

 レベル1

 HP 10/10
 MP 900000000/900000000

 力 8

 耐久 13

 器用 7

 俊敏 15

 魔力 1

 保有魔法 「  」
 固有魔法 「  」 

 保有スキル 「  」

 異能力 『赤き閃光』 
     『物理破壊』
     『アリアドネの赤い糸』
     『××××(封印状態)』
     「××××(封印状態)」
     『肉体強化(大)』
     『自動回復(大)』
     『カルマ吸収』
     『××××(封印状態)』

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 「……なるほど、それで何が問題なんだ?」
 「お前さんにゃMP9億の数字が見えないのかい?」
 「いや、いきなり数字だけ見せられても何が凄いのかわからないのさ」
 「これだからアナログ人間は、いいかい? アンタは少し前に異能で火を出しただろ?」

 出したか? と一瞬、考えた。
 確かに『魔法』と『異能』を比べるのに使った事を思い出す。

 「アンタが、異能で炎を出すのが苦手なのは基本となる魔力が1だからだよ」
 「何を言ってるんだ? 俺が出した火は異能力であって……魔力とは……」
 「『魔法』と『異能』の違いは説明しただろ?」

 魔法と異能の違い? 確か、異能力は体から出すエネルギーだとしたら、魔法は自身の体だけではなく、周囲からも得るエネルギーだったはず……

 「要は『異能』と『魔法』の使い方が違うだけで根本は同じだったって事なのさ。アンタのステータスに刻まれた魔力1って数字は、アンタにも魔法を使う才能を持ってるって証明なのさ」

 「俺が魔法を?」そんな馬鹿なと笑ったが、『魔女』は笑わなかった。


 「それより……そんな事よりも重要なのかMP9億って数字さ。MPってのは魔力の貯蔵量。それをアンタは既に9億なんて規格外の魔力を体内に有している。おそらくは、アンタ等の言うカルマが魔力の代わりになっているんだろうね」

 なるほど……少し心当たりがあった。それを言うべきか迷っている間に『魔女』は話を続けた。

 「規格外のMP数値。それなのに肝心の魔力をコントロールする力量を示す『魔力』はたったの1。
 今のアンタは、ちょっとした歩く爆弾みたいなもんよ。何かがきっかけで、魔力が暴走したら……魔族の戦争どころか、世界は滅ぶわ」

 「世界が滅ぶ……か」と俺は笑った。
 俺のカルマ値……この世界ではMPか。それが異常な数値を出した心当たり――――

 原因はわかっている。

 2回連続で行われた異能力戦争。
 その勝者として奇跡を起こす力を手に入れて使っていない。
 それも2回分だ。
 そのエネルギーは、今も俺の体内に――――

 だが―――-

 「あいにくだが、世界を壊したり、世界を救った経験は、何度もある」

 俺の言葉に流石の『魔女』も「アンタ、イカレてるよ」と言った。

 「それで、俺はこれからどうしたら良い?」
 「わたしゃ、世界に関与する力が失われている。アンタに何もできない。だから、弟子のナナを預ける」

 「ナナを?」と俺はナナの方を向く。
 少女は木に持たれて寝ていた。どおりで反応がないはずだ。

 「弟子のナナから『魔法』を学びな。アンタの力が暴走しないように……
 わたしがナナに授けた『魔法』をアンタが身につけたら、アンタは『魔法』なんて概念を超えた新しい――――」

 

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