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異能バトルの絶対王者が異世界落ち

チョーカー

『魔法』と『異能』 その2

 
 「確かにトップアスリートはトレーニングの指標として、運動能力をデータとして数字化するものだからな。ステータスって言うの同じようなものか」
 「ちょっと、アンタ、本当に異世界から召喚されたの? ゲームとかやらない人? まだ若そうに見えるけど?」
 「ん? そうか、俺以外にも勇者として召喚されていた人がいるのだから、アンタ等にもゲームとかの知識もあるのか」

 俺は少し考えて、こう続けた。

 「あいにく、俺はゲームができる環境で育ってなかったからなぁ。娯楽に詳しい友達もいなかったし、歳も15才から数えるを止めた」
 「向うの世界は、それなりに平和と聞いていたけど、アンタは殺伐とした人生だったのね」

 そう言うと『魔女』はため息をついた。
 それから「ほら、受け取りなさいよ」と空中から紙が現れた。
 たぶん、『魔女』が持っていた物だろうが、透明なだけにシュールな光景だった。

 「この紙をどうすればいいのだ?」
 「どこでもいいから血を一滴だけ……ちょっと、ナイフくらい貸すから、指を噛んで血を出そうとしないでよ」

 「むっ……そうか」と宙に現れたナイフを受け取る。
 言われた通りに血を垂らしてみたが―———

 「何も起きないぞ」
 「もう少し待ちなさい。こらえ性がないわね。あと、30分は必要よ」
 「そうか。では、その間……」

 「ちょうど良いから、ナナに城の案内をしてあげな」


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・


 俺は目立っていた。修練場を歩けば兵士から興味深く見られていたのは前回と同じだが……

 「なあ、あれはマズいんじゃないか? 城内で女の子を連れまわすなどと……」
 「なぁにアレが『異能殺し』殿の趣味という話ではないか。存外、女好きなのだろう」
 「しかし、なぜ、娘にベルトを掴ませている?」
 「だから趣味だろ。趣味。自分が口説き落した娘を我らに見せつけているのだ」
 「ほう…深い趣味だな」 

 誤解が激しい。
 できるだけ早く修練場を抜けないと……それにしても……

 「ところで、ベルトを離してくれないか? いくらなんでも目立って仕方がない」

 俺は振り向いて、ナナに言ったが、彼女は「……」と首を横に振った。

 「いや、でもさぁ」
 「……」
 「いや……そうか。わかった」

 ナナは意外と頑固だった。

 「しかし、困ったなぁ。城を案内してくれと言われても、俺もまだ不慣れだ。どうする? 俺の部屋で時間を潰すか?」

 「……」とナナは首を縦に振った。

 こうして俺の部屋に連れ来た。
 ナナは室内を興味深く見て回っている。それなりに楽しんでくれているみたいだが……

 初めて会った少女を自室に連れ込むの倫理的にまずいのではないか?

 連れてきてから気づいてしまった。
 「むっ……」と少し考える。
 この城内で案内を頼める知り合いはアスカとライスだけ。
 しかし、アスカはこの城の姫。ライスは王直属の騎士。

 「2人共、立場がある人間だ。簡単に頼んでいいのだろうか?」

 俺はベットに座り考え込む。
 そんな様子がナナにはどう映ったのか、俺の横に座り、不安げにベルトを掴んだ。

 「城を案内と言っても時間は30分以内。 そんな短時間なら、2人に頼まなくてもいいか。じゃ……見たいところはあるか?」

 そう訊ねた時だった。
 外から、ノックが聞こえてきた。
 何も考えずに「どうぞ」と返事をした。

 「では、失礼します。 こんにちわ、異能殺しさ……」
 「あぁ、アスカか。 こんにちわ……ってどうした?そんなに固まって」

 アスカは、まるで石像にでもなったかのように動きを止めた。
 それから―――

 「か……」
 「か?」
 「可愛い! ど、どうしてのですか? この子? 異能殺しさまの妹ですか!」
 「いや、落ち着け。俺の妹のはずないだろ?」

 混乱している様子のアスカにナナをどう紹介したらいいのか悩んだ。

 「俺に魔法を教えてくれる先生……みたいな関係だ」
 「先生。こんなに可愛いのに先生。な、何を……どんな事を教えて貰えるのかしら。かしら!」
 「どうしたんだ? お前? ナナが怯えているじゃないか」
 「!? わ、私としたことがはしたない所をお見せしました。あまりもこの子が可愛い過ぎて」
 「そうか。では、この子に城の案内を頼んでもいいか?」

 「是非に!」と食いつき気味にアスカは返事をした。
 俺の背後でナナが震えているのは無視していいのだろうか?

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 「こうやって見ると、まるで親子ですね。ウフフフ」

 アスカはナナの手を握っている。
 一方でナナは俺のベルトから手を離すつもりはないのだろう。
 俺はナナの案内をアスカに任せようとしていたのだが、彼女は頑としてベルトから手を離さなかったのだ。

 「ここが異能殺しさまを召喚した場所です。ここは魔力の通り道になっていて儀式に相応しい場所なのですよ」

 『魔女』の弟子であるナナに案内する場所としても相応しかったのだろう。
 ピョンピョンと飛び跳ねたり、走り回っている。

 「ちなみに横は、地下牢になっていまして、王族が隠しておきたい罪人を見学できますが、ご覧になります」
 「いや、それはいい。パスだ」

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 「こちらはお父様とお母様の寝室になります」
 「おい、やめろ。忍び込んだバレたら殺される」

 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 「名残惜しいですが、時間がないのでしたら仕方ありません」

 あっと言う間に30分が経過した。

 「いつでも、私を訪ねて来ていいのですよ。ナナさん」

 「……」とナナは宙に指を走らせて文字を書いた。

 「あら、可愛らしい」
 「……なんて書いたんだ?」
 「そうですね————

 『姫さま 今日はありがとう。 大きなお世話だ。二度と会うか! ばばぁ!』

 と書かれてました。照れちゃって、文字まで可愛いかったです!」

 「……そうか。お前が満足してるなら、それで構わない」

 ナナは意外と毒舌だったらしい。 
  

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