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異能バトルの絶対王者が異世界落ち

チョーカー

『魔法』と『異能』

 
 「なるほど、まずは弟子に相手させて実力を見極めてからって……実戦主義だな」

 まるで、侍がいた時代の道場破り対策だ。 面白い。

 「いやいや、そうじゃないよ。わたしゃ、見ての通りの戦えない体になっちまってるからね」

  『魔女』は透明な姿でそう言った。

 「うん? それは冗談か?」
 「つまらない男だな。よく感情の起伏がないって言われないかい?」
 「……心が死んでいるみたいだと言われた事は何度かある。だが、感情がないわけでない」

 俺だって怒る事はある。例えば―———

 「最近なら、祖父が大量虐殺を計画していた時には……」
 「待ちな。アンタが精神的に不安定な理由がよくわかったよ。
 ……まぁ良いさ。うちの弟子だって似たようなもんで慣れてるからねぇ」

 組み伏せた少女を見る。
 顔を隠していた帽子もいつの間に取れて素顔を晒していたが、俺に怯えているように震えている。

 「アンタ、そういう趣味があるのかもしれないけど、いつまでうちの弟子を拘束するつもりだい? 似た者同士で気に入ったなら、めとってくれても良いんだけどね」 

 「あぁ、すまない」と俺は少女の拘束を解き、立ち上がらせた。
 彼女は警戒するように距離を取っていった。

 「アンタ、嫌われたもんだね」

 誰のせいだ。俺は声に出さずに抗議した。


 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 「さて、私の名前はサマンサ。わたしゃ、禁術の使いすぎでね。体が世界と同化しちまってるんだ。直接、魔法を教えるのは私の弟子になる。こっちが弟子のナナだ」

 「俺の名前は『異能殺し』だ。よろしく頼む」と頭を下げる。

 「最初に言っておくが弟子のナナは話せない」
 「え?そうなのか……いや、案内する途中で喋っていたと思うが?」

 俺はナナを見る。しかし、彼女は目を逸らした。

 「この子の喉には呪いがかかっている。この子の住んでいた町が魔族に襲われた時、生き残ったナナに遊び半分で呪詛を施した者がいてねぇ」

 「なるほど、それで喋れないのか」と俺は納得した。
 しかし、『魔女』は否定した。

 「いや、違うよ」
 「違う?」
 「正確に言えばナナは喋れる。だがねぇ、その声を聴いた者を不幸にする呪詛がかかっているのさ。この子は自ら意志で喋らないのよ」
 「————ッ!? ソイツは……」
 「ふん、良い顔してんじゃないかい。心が死んでるじゃなかったのかい。まぁ、心配しなくても意思疎通は問題ないよ」

 問題ない?
 俺の疑問を察したのか『魔女』は「見せてやんな」とナナへ指示をした。
 すると―――

 「……」

 ナナは宙に指を走らせた。

 「これは筆談か」

 ナナは空中に文字を書いてみせたのだ。
 しかし、問題がないわけではない。

 「読めない」

 俺はこの世界の文字を読めなかった。

 
 ・・・
 ・・・・・・
 ・・・・・・・・・

 「それで、『魔法』の何を知りたいの?」
 「そうだな。まずはこれを見てくれ」

 俺は体内のカルマを操作する。
 俺の異能は炎や水を生み出したり、風をコントロールして攻撃することには不向きだ。
 そのため、『赤き閃光』や『物体破壊』など、鍛え、育て、完成した異能とは違い……

 「これは苦手なんだが」と俺の指差しから火が燈った。
 ライター程度の僅かな火だったが、『魔女』とナナは興味深そうに見つめる。

 「なるほど、私たちで言う魔法に酷似しているが、確かに違うね。ナナ、見せておやり」

 「……」と彼女は頷いた。次の瞬間、彼女の腕から業火が放出された。

 「こりゃ凄いな。炎使いは何人もいたが、ここまでの使い手は珍しい」

 異能力者の中でも一番多いのは炎の異能だった。
 『異能』と言うのは能力者の深層心理に影響されるからだ。
 創作物の主人公としての『炎使い』が、幼少期の憧憬として能力に反映された結果だという説もある。

 「驚くのはまだ早いよ」

 『魔女』はそう言った。
 すると、ナナが放っていた炎が停止する。 
 まるで時が止まったかのように炎が固体のように変化した。
 ナナは個体化した炎に触れていくと―———

 「炎が剣に変わっただと!」

 いや、剣だけではなく、弓だったり槍だったりと炎の形状が変わっていく。
 しかも、炎の特性は失われていない。
 そこら辺にある木に向けて槍を突くと、刺さった先端から煙が昇り始めた。
 炎を操る事に特化した『炎使い』の異能力者でもここまでの使い手はいなかった。

 「これが『魔法』と『異能』の大きな違いよな」
 「どういう事だ?」
 「アンタらの『異能』はカルマとやらを体内で作ったり、溜めたりしてるから、体の外側に向ける力だったり、アンタみたいに身体能力強化に向いているのさ」
 「では『魔法』は?」
 「体内でも形成するし、外部からも取り込むのさ。魔法に使うための燃料ってのは、見えないだけでそこらに転がっているのさ。だから、固定化するにも、外へ排出するのにも向いてる」

 「なるほど」と俺は唸った。
 しかし、俺だけではなく『魔女』も唸っていた。

 「ちょっと解せないわね」
 「なにが解せないと?」
 「ちょっと、アンタ。ステータスを調べてみな」
 「ステータス? なんだそれは?」
 

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