君と僕と壊れた日常
今日は大会。 これが終わればパンナコッタな2週間。 前編
今日は土曜日。
そう、来るべきサッカーの大会の日だ。
と言っても僕は出ないし、そもそも部活に参加してすらない。
なら何故朝の五時起きで準備をしているのか。
答えは単純、観戦のためである。
今までに海斗が出場する大会は欠かさず行った。 もちろん今日も行く。
幼馴染だからってやりすぎだと思うだろう。 しかし、行かなければならないのだ。 それには理由がある。
海斗の両親は仕事で毎日とても忙しく過ごしている。 そのため、昔から休日は大体一人で過ごしていた。 そんなときに僕は海斗と出会い、仲良くなった。
もともと親同士が知り合いだったのもあり、仲良くなってからは僕の家に預けるという形で海斗はやって来ていた。
たまに海斗の両親に休みが出てくると、両家族揃ってささやかなパーティを開いていた。
小学校に上がった海斗はサッカーをやりだした。 そして僕は海斗の両親に頼まれて、海斗が出場する試合をビデオカメラで撮影することになったのである。
そんなわけで、今日も僕は試合に向かう。 会場は徒歩十五分程のところにあるサッカーコートだ。
現在時刻8時15分。 試合開始は10時の予定だ。 十分間に合うだろう。
「じゃあ、行ってくるね」
台所で作業をしていた母の雪江に声を掛けた。
「ちょっと待って!」
母さんは台所から何か待って飛んできた。
「どしたの?」
「新奈ちゃんお弁当忘れて行っちゃったの。 だから、お願いね? あとこれアラタくんの分ね」
そう言って母さんは二つのお弁当を渡してきた。
バッグにはビデオカメラや三脚などの機材が入っていたが、十分に空きがあったのでそのまま入れた。
「了解、じゃあ行ってくるね」
「気をつけてね」
こうして僕は大会会場へ向かった。
「あっ……」
「……」
5分ほど歩いたところだろうか。 そこで僕は空見華月に出くわした。
彼女はTシャツにホットパンツを合わせていた。 おかげで美脚が顕になっている。
少し見蕩れていると、空見華月は僕を無視してコンビニに入っていった。
無視されたのを心のどこかで不快に感じたのだろうか。 僕は無意識のうちに空見華月を追っていた。
「呆れた。 なんで付いてきたのよ」
空見華月は言葉にした通り呆れている様子だ。 不機嫌なのが見て取れる。
「正直僕もわからん」
「なら、もう行きなさい」
空見華月はいつもより幾分か冷たい気がする。
ここ最近空見華月の冷たい態度にすごく敏感な気がする。
「見たところすごく暇そうだな」
「人の話を……」
「そうだ! これから一緒にサッカー観戦行こう!」
「……」
空見華月の不機嫌さが増した。
「ねえ、人の話を少しくらい聞いたらどうなの? 私は暇じゃない。 前も言ったけど勉強するの。 誰のせいで授業まともに受けれなかったか考えて」
彼女は怒気を顕にし、とても冷たい声でそう言った。
「その節はどうもすみませんでした」
僕は謝った。 まあ、多分許してくれないだろう。
「言葉だけじゃ足らない。 そうね、そこのパンナコッタ買ってくれたら許してあげる」
どうやらこいつの怒りはパンナコッタ1個で治まるようだ。 覚えておいて損はないだろう。
「……分かった。」
僕は陳列棚にあったパンナコッタを1個手に取りレジに向かう。
「ちょっと待って。 1個でいいと思ってるの? 2個に決まってるでしょ」
「このアマ……」
「なんか言った?」
「ごめんなさい」
そして僕はパンナコッタを2個買い、空見華月に渡した。 
「やっぱりパンナコッタは最高よね!」
コンビニから出るなり、駐車場で食べ始めた。
僕はその光景を見て、あることを思いついた。
「ねえ、空見さん。 今日から1週間、毎日パンナコッタ2個ずつ奢ってあげるから今日一緒に来てくれないかな」
「いいよ」
「へ?」
予想外の返答に困惑する僕。
しかし、遠慮の意味の「いいよ」かもしれない。 イントネーション的にそれはないと思うが、確信を持つにはまだ足りない。
「だから行ってあげるって言ってるの」
来てくれるらしい。
どうやら空見華月は無類のパンナコッタ好きらしい。
「ほんと!? ありがとう!」
空見華月は僕の反応を見て引き気味に聞いてきた。
「そんなに私と、その……見に行きたかったの?」
引き気味に聞いてきたのはいいが、後半から赤くなっていた。 引きながら恥ずかしがる、すごく巧みな技である。
素晴らしい芸当を見せてくれた空見華月には悪いが、あらぬ誤解を生むわけにも行かないので、断言する。
「全くそんなことは無い」
「は?」
空見華月の声音は今、雪女ばりの冷たさになった。
「会場でビデオカメラ回してるとさ、変な目で見られるんだよ。 女子高生多いから。 それに、試合までの話し相手も欲しかったし」
「そう」
空見華月は理解はしたが、あまり納得のいってない様子だ。
「まあいいわ、これから2週間パンナコッタよろしくね」
その時だけ、彼女は笑顔だった。
さりげなく期間を延ばしているせいか、僕にはそれが悪魔が笑っているかのよう思えた。
「じゃあ今から出発な」
「ちょっと待って! 今から!? なんの用意もしてないんだけど」
別に用意は何もいらない気がするのだが、空見華月は慌てふためいている。
「試合見るだけだから、大丈夫でしょ」
「何言ってんのよ、見てわからない? 服とかコンビニ行くために適当に来てきたやつだし」
「変じゃないと思うよ。 それに、そんなに容姿とスタイル良かったら何着ても大して問題にならないと思う」
「気持ち悪い。 変な事言わないでよ」
僕はなにか変な事言っただろうか、事実を述べただけだ。
「てことで出発」
「はあ……」
僕達は試合会場に向かった。
コンビニを出発してからずっと沈黙が続いていた。
そんな中、試合会場が見えてきた。
会場はとても広い公園内に作られていて、普段からサッカーやラグビーなどさまざまな競技の大会が行われている。 公園内には体育館もある。 公園は約5年前に完成したので、そのどれもがとても綺麗だ。
それを目にしたからか、空見華月が沈黙を破った。
「すごい、こんな施設があったなんて。 7年前にはなかったからビックリだわ」
「そう言えば昔この街に住んでたんだっけ。 ここは外観もそうだけど中身もすごいよ」
「ちょっと楽しみ」
空見華月がコンビニのときに出していた不機嫌オーラはもうなくなっていた。
「あそこが入口だよ」
そう言いながら僕は指さす。
指の先には入口と時計。 時刻は8時45分。 予期せぬ遭遇のせいで思っていたより時間が経過していたが、試合開始まではまだ十分余裕がある。
「あ! やっと来た! お兄ちゃんこっち……え!?空見さん!?」
声とリアクションが大きい。
「アラタおはよう。 空見さんも」
「またおまけ扱い……」
空見華月は小声でボヤく。
前回、同じ光景が広がった時にはもっと毒づいていた気がする。 これは成長だろうか。
そこまで考えていたらあることを思い出した。
「あ、そうだ。 新奈、お前お弁当忘れてるぞ」
そう言って僕はカバンから弁当箱を取り出そうとする。
「いいよいいよ。 忘れたの気づいて買っちゃったから。 お兄ちゃん、私の分も食べて?」
食べての部分をなぜ上げ調子で行ったのだろうか。
可愛子ぶったのならお門違い。 僕は妹は好きだが、あくまで妹である。
「そうか、わかった」
「席は確保してあげてるから。 ベストポジションだよ! よく撮れるよ! 目印あるからちゃんと見つけてね」
今日の試合は三年生が主役だが、人数の関係で海斗がスタメンで出場することになっている。
そのため新奈がやる気満々だ。 もちろん、出場する海斗もやる気満々である。
「ありがとな」
「じゃあ、アラタと空見さん、これからアップがあるから行くね。 新奈ちゃん、行くよ」
「わかりました! お兄ちゃん、ちゃんと撮ってよね」
そう言うと、新奈と海斗は会場へ向かっていった。
「じゃあ、僕達も行きますか」
「そうね」
僕達は会場の観客席へと向かっていった。
久しぶりのあとがきです。
どうも、作者です。
こんな感じでここまで進んできましたが、重大なミスに気づきました。
作中の1週間の日数が1日多くなっています。
小説家になろう。さんの方では変更し終わりましたが、時間の都合上ノベルバさんの方で変更がいつになるか分からないので、どうしても気になる方は小説家になろう。さんでの同タイトルの作品を閲覧ください。
コピペで済むのですがとても忙しいので、ご了承ください。
変更の案内は変更後次の回であとがきとして書かせていただきます。
今後ともよろしくお願いします。
そう、来るべきサッカーの大会の日だ。
と言っても僕は出ないし、そもそも部活に参加してすらない。
なら何故朝の五時起きで準備をしているのか。
答えは単純、観戦のためである。
今までに海斗が出場する大会は欠かさず行った。 もちろん今日も行く。
幼馴染だからってやりすぎだと思うだろう。 しかし、行かなければならないのだ。 それには理由がある。
海斗の両親は仕事で毎日とても忙しく過ごしている。 そのため、昔から休日は大体一人で過ごしていた。 そんなときに僕は海斗と出会い、仲良くなった。
もともと親同士が知り合いだったのもあり、仲良くなってからは僕の家に預けるという形で海斗はやって来ていた。
たまに海斗の両親に休みが出てくると、両家族揃ってささやかなパーティを開いていた。
小学校に上がった海斗はサッカーをやりだした。 そして僕は海斗の両親に頼まれて、海斗が出場する試合をビデオカメラで撮影することになったのである。
そんなわけで、今日も僕は試合に向かう。 会場は徒歩十五分程のところにあるサッカーコートだ。
現在時刻8時15分。 試合開始は10時の予定だ。 十分間に合うだろう。
「じゃあ、行ってくるね」
台所で作業をしていた母の雪江に声を掛けた。
「ちょっと待って!」
母さんは台所から何か待って飛んできた。
「どしたの?」
「新奈ちゃんお弁当忘れて行っちゃったの。 だから、お願いね? あとこれアラタくんの分ね」
そう言って母さんは二つのお弁当を渡してきた。
バッグにはビデオカメラや三脚などの機材が入っていたが、十分に空きがあったのでそのまま入れた。
「了解、じゃあ行ってくるね」
「気をつけてね」
こうして僕は大会会場へ向かった。
「あっ……」
「……」
5分ほど歩いたところだろうか。 そこで僕は空見華月に出くわした。
彼女はTシャツにホットパンツを合わせていた。 おかげで美脚が顕になっている。
少し見蕩れていると、空見華月は僕を無視してコンビニに入っていった。
無視されたのを心のどこかで不快に感じたのだろうか。 僕は無意識のうちに空見華月を追っていた。
「呆れた。 なんで付いてきたのよ」
空見華月は言葉にした通り呆れている様子だ。 不機嫌なのが見て取れる。
「正直僕もわからん」
「なら、もう行きなさい」
空見華月はいつもより幾分か冷たい気がする。
ここ最近空見華月の冷たい態度にすごく敏感な気がする。
「見たところすごく暇そうだな」
「人の話を……」
「そうだ! これから一緒にサッカー観戦行こう!」
「……」
空見華月の不機嫌さが増した。
「ねえ、人の話を少しくらい聞いたらどうなの? 私は暇じゃない。 前も言ったけど勉強するの。 誰のせいで授業まともに受けれなかったか考えて」
彼女は怒気を顕にし、とても冷たい声でそう言った。
「その節はどうもすみませんでした」
僕は謝った。 まあ、多分許してくれないだろう。
「言葉だけじゃ足らない。 そうね、そこのパンナコッタ買ってくれたら許してあげる」
どうやらこいつの怒りはパンナコッタ1個で治まるようだ。 覚えておいて損はないだろう。
「……分かった。」
僕は陳列棚にあったパンナコッタを1個手に取りレジに向かう。
「ちょっと待って。 1個でいいと思ってるの? 2個に決まってるでしょ」
「このアマ……」
「なんか言った?」
「ごめんなさい」
そして僕はパンナコッタを2個買い、空見華月に渡した。 
「やっぱりパンナコッタは最高よね!」
コンビニから出るなり、駐車場で食べ始めた。
僕はその光景を見て、あることを思いついた。
「ねえ、空見さん。 今日から1週間、毎日パンナコッタ2個ずつ奢ってあげるから今日一緒に来てくれないかな」
「いいよ」
「へ?」
予想外の返答に困惑する僕。
しかし、遠慮の意味の「いいよ」かもしれない。 イントネーション的にそれはないと思うが、確信を持つにはまだ足りない。
「だから行ってあげるって言ってるの」
来てくれるらしい。
どうやら空見華月は無類のパンナコッタ好きらしい。
「ほんと!? ありがとう!」
空見華月は僕の反応を見て引き気味に聞いてきた。
「そんなに私と、その……見に行きたかったの?」
引き気味に聞いてきたのはいいが、後半から赤くなっていた。 引きながら恥ずかしがる、すごく巧みな技である。
素晴らしい芸当を見せてくれた空見華月には悪いが、あらぬ誤解を生むわけにも行かないので、断言する。
「全くそんなことは無い」
「は?」
空見華月の声音は今、雪女ばりの冷たさになった。
「会場でビデオカメラ回してるとさ、変な目で見られるんだよ。 女子高生多いから。 それに、試合までの話し相手も欲しかったし」
「そう」
空見華月は理解はしたが、あまり納得のいってない様子だ。
「まあいいわ、これから2週間パンナコッタよろしくね」
その時だけ、彼女は笑顔だった。
さりげなく期間を延ばしているせいか、僕にはそれが悪魔が笑っているかのよう思えた。
「じゃあ今から出発な」
「ちょっと待って! 今から!? なんの用意もしてないんだけど」
別に用意は何もいらない気がするのだが、空見華月は慌てふためいている。
「試合見るだけだから、大丈夫でしょ」
「何言ってんのよ、見てわからない? 服とかコンビニ行くために適当に来てきたやつだし」
「変じゃないと思うよ。 それに、そんなに容姿とスタイル良かったら何着ても大して問題にならないと思う」
「気持ち悪い。 変な事言わないでよ」
僕はなにか変な事言っただろうか、事実を述べただけだ。
「てことで出発」
「はあ……」
僕達は試合会場に向かった。
コンビニを出発してからずっと沈黙が続いていた。
そんな中、試合会場が見えてきた。
会場はとても広い公園内に作られていて、普段からサッカーやラグビーなどさまざまな競技の大会が行われている。 公園内には体育館もある。 公園は約5年前に完成したので、そのどれもがとても綺麗だ。
それを目にしたからか、空見華月が沈黙を破った。
「すごい、こんな施設があったなんて。 7年前にはなかったからビックリだわ」
「そう言えば昔この街に住んでたんだっけ。 ここは外観もそうだけど中身もすごいよ」
「ちょっと楽しみ」
空見華月がコンビニのときに出していた不機嫌オーラはもうなくなっていた。
「あそこが入口だよ」
そう言いながら僕は指さす。
指の先には入口と時計。 時刻は8時45分。 予期せぬ遭遇のせいで思っていたより時間が経過していたが、試合開始まではまだ十分余裕がある。
「あ! やっと来た! お兄ちゃんこっち……え!?空見さん!?」
声とリアクションが大きい。
「アラタおはよう。 空見さんも」
「またおまけ扱い……」
空見華月は小声でボヤく。
前回、同じ光景が広がった時にはもっと毒づいていた気がする。 これは成長だろうか。
そこまで考えていたらあることを思い出した。
「あ、そうだ。 新奈、お前お弁当忘れてるぞ」
そう言って僕はカバンから弁当箱を取り出そうとする。
「いいよいいよ。 忘れたの気づいて買っちゃったから。 お兄ちゃん、私の分も食べて?」
食べての部分をなぜ上げ調子で行ったのだろうか。
可愛子ぶったのならお門違い。 僕は妹は好きだが、あくまで妹である。
「そうか、わかった」
「席は確保してあげてるから。 ベストポジションだよ! よく撮れるよ! 目印あるからちゃんと見つけてね」
今日の試合は三年生が主役だが、人数の関係で海斗がスタメンで出場することになっている。
そのため新奈がやる気満々だ。 もちろん、出場する海斗もやる気満々である。
「ありがとな」
「じゃあ、アラタと空見さん、これからアップがあるから行くね。 新奈ちゃん、行くよ」
「わかりました! お兄ちゃん、ちゃんと撮ってよね」
そう言うと、新奈と海斗は会場へ向かっていった。
「じゃあ、僕達も行きますか」
「そうね」
僕達は会場の観客席へと向かっていった。
久しぶりのあとがきです。
どうも、作者です。
こんな感じでここまで進んできましたが、重大なミスに気づきました。
作中の1週間の日数が1日多くなっています。
小説家になろう。さんの方では変更し終わりましたが、時間の都合上ノベルバさんの方で変更がいつになるか分からないので、どうしても気になる方は小説家になろう。さんでの同タイトルの作品を閲覧ください。
コピペで済むのですがとても忙しいので、ご了承ください。
変更の案内は変更後次の回であとがきとして書かせていただきます。
今後ともよろしくお願いします。
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