君と僕と壊れた日常
一難去って二人の恋
あの出来事から1日が経過した。
昨日は結局朝のHRをして終わり、それからは緊急措置として停業となった。
現在時刻8時00分。
僕は今、今日から再開ということでいつも通りの時間に登校を終えていた。
「ねぇねぇ、昨日…」
正門から教室までの間にすれ違う生徒は皆口を揃えて僕のクラスの話題を話していた。
どうやら学校全体に行き届いているらしい。それもそうだろう。なにせあの蒼井海斗に彼女が出来たのだ。それだけでもビッグニュースなのに、そのことが原因で揉め事が起きたのだ。広まらない方がおかしいくらいである。
教室に入った僕は驚きを隠せないでいた。
目の前に広がっていたのはどんよりとした表情の生徒達の姿。
予想できることではあったが、今のこの空気の重さは予想の遥か上を行っている。
「来たのね」
そう声をかけてきたのは隣人の空見華月。
席が隣でも、向こうから話しかけてくることは今まで一度もなかったので少し新鮮である。
「来る以外に選択肢ないだろ」
まあ、休むことも可能だろうが昨日の件に関しては妹のために怒っただけである。もちろん手は出ていない。なので僕が休む必要は無い。
「妹さんはどう?」
どう、と言うのは心境のことだろう。
妹は全く悪くないのだがとち狂った川島とかいうヤンデレ予備軍みたいなやつに絡まれたのだ。
「あれから普通に学校にいたけど、帰ってきたときなんかしんどそうだったな」
「そう…」
空見華月は少し悲しげな顔でそう短く答える。
「おはよう…アラタ」
後からそう声をかけられた。
昔からずっと聞いてる声なだけに今日は一段と辛そうだというのが感じ取れた。
「おはよう」
振り向いて海斗に挨拶を返す。笑顔を作ってはいたものの、やはり辛そうである。
「空見さんもおはよう」
「うん、おはよう」
空見華月というやつは僕以外に対してはとても穏やかに接する。現に辛そうな海斗を励ますかのごとく笑顔で挨拶をした。
まあ、今日は珍しくまだ毒づかれてない。
「…私がこいつのついでみたいじゃない。最悪」
思った矢先にこれである。小声で呟いていたので僕を挟んだこの立ち位置だと海斗には聞かれていないだろう。
正直僕に聞かれてもアウトである。
(こいつのこの態度、いつか矯正してやる!)
心の中でそう決心していると海斗が口を開いた。
「アラタごめん!僕のせいで新奈ちゃんが…」
どうやら負い目があるらしい。
「海斗は悪くないよ」
僕は海斗に優しく言う。
「でも!」
それでも海斗はダメらしい。ならばここは少し強く出る必要がありそうだ。
「でももクソもない。お前がそんなだったら新奈はどうなる?それにな、謝るんだとしても僕じゃなくて新奈何じゃないのか?」
海斗はまた一段と暗い表情になった。
少し言いすぎただろうか。
「…謝りたいのは山々なんだけど、なんだろうね、避けられてるんだ。それに新奈ちゃんに対して責任も感じてるんだよ。好きなのもあるけど、前に言ったように取り巻きも壊して欲しかったんだよ。それに巻き込んだ。だから、別れた方がいいんじゃないかな」
こいつは重症である。自責の念が多い。
「海斗、お前バカだろ。新奈もまだ心の整理ができてないんだ、話せなくて当然。それに、別れる?止めてくれよ。責任感じてるんならそんなとり方じゃなくて最後まで責任もって面倒に見てくれよ。ていうかこれ命令な。なんて言うのかな、義兄ちゃん命令?」
「気持ち悪い」
空見華月がせっかくの雰囲気をぶち壊した。
まあ、前と同じくらいの声量だったので海斗には聞こえていないだろうが。
「…アラタらしいな。分かったよ、きちんと話してみる。なんかスッキリしたよ、ありがとう」
海斗はまだぎこちないが、笑顔でそう言うと自分の席に向かっていった。
僕はそれを見た後、空見華月に向き直る。
「結構いいこと言ったと思ったのにぶち壊すなよなな」
僕は空見華月にそう言った。
「いいこと言ってたと思うわ、私が私じゃなかったら今までのあなたの言動、行動もまとめてときめいてたかもしれない」
「じゃあなんで…」
よかった、第三者から見てもいいこと言っていたようだ。しかし同時に気持ち悪かったらしい。何故だろう。
「考えてみて、同級生に自分のこと"義兄ちゃん"って言ったのよ?気持ち悪い以外のなんになるのよ」
そう言われると恥ずかしくなる。
「…気持ち悪い」
認めてしまった。完全敗北である。
「ほらね」
朝の予鈴までの時間はこんな感じで過ぎていった。僕と空見華月に関してはいつも通りと言った感じだが、周りでは少なからず一昨日の弊害がある。それは朝のHRが始まってからも同じであった。
「おはよう。えーっと、まずお前らに報告な」
りつ先生はそう切り出した。報告、一昨日のことだろう。
「川島だが、退学することになった。自主退学だ」
『!!!!』
停学処分くらいのものだと思っていたが退学らしい。自主退学ということは一昨日の一件でみんなに顔向けできなくなったのだろう。彼女にとっては経歴にも記憶にも黒歴史を刻むことになった高校生活だった。
りつ先生は続ける。
「昨日のことは非常に残念なことだ。今後はあんなことがないように!では、今日の予定から…」
りつ先生は切り替えていつものような感じになった。
先生的にも退学者を出してしまったことになにか思うところがあるのだろう。どこかで無理矢理にでも切り替えないとやっていけない。それは先生だけでなく、僕達も同じなのだろう。
そんなこんなでその後は何にもなく、先生のおかげでみんなの顔にも少しづつ笑顔が見えだし、1日が終わった。
「ただいま〜」
部活から新奈が帰ってきたみたいだ。
海斗には今朝あー言ったものの、二人の事情だ。わざわざ聞いてやることもないので、気にせずそのまま自室の勉強机で宿題を進める。
トントントン
誰かが階段を上がってきた。
「お兄ちゃん、入るよ」
ガチャ
言いながらドアを開ける新奈。
「なんだ?」
「ちょっと相談…いい?」
多分海斗とのことだろう。
「いいよ、言ってみ」
ここ最近の新奈はとても辛そうだった。僕はできるだけ優しく言う。
「私ね、わかないの。このまま海斗くんと付き合っててもいいのかな…」
うん、知らん。全くもって分からない。
「そんなの僕が知るわけないよ」
「うぅ〜」
泣きそうになる新奈。泣かれても分からないものは分からない。
「泣くな泣くな。妹よ、お前は海斗のこと好きなのか?」
海斗が新奈のことを好きだというのはこの前聞いたから分かる。昔からの付き合いだ、新奈も悪い印象は持っていないとは思うがよく分からない。
「うん、三人で遊び出したくらいからずっと好きだった」
「マジか」
最初からずっと好きだったらしい。僕の妹は一途を極めている。
「ならいいじゃん、付き合って」
「でも…」
「でももクソもない。両思いなんだし何も気にすることないだろ。そんなに心配なら海斗に聞いてみればいい。お前も海斗も、きちんと話し合うべきだ」
何故だろう、漂う既視感。「でも」からのこの流れ、とてもデジャブってる気がする。
それは一旦置いておこう。
「いい…のかな」
「いいんだよ、気にするな」
「うん、分かった!話してみる!お兄ちゃん、ありがと!」
うっすらと涙を浮かべながらも笑顔でそう言う新奈。嬉し涙なのだろう。
そのとき、僕は不意に疑問に思った。
「なあ、お前らっていつから付き合ってんの?」
付き合っていること自体昨日の一件で初めて知った。多分ここ最近だろうが、どのタイミングでそうなったのだろうか。
「えーっとね、この前お兄ちゃんがドタキャンした時だよ」
「あー」
そう言えば、僕が空見華月の家で看病やらなんやらしている間、海斗とこいつは二人っきりで遊んでいた。
だが、あの日は雨だった。付き合うとかそのような空気になるだろうか。恋愛経験がないから分からない。
「ちょっと教えてくれないか?」
「恥ずかしいけど…いいよ。あの日ね……」
新奈は話し出した。兄として、そして幼馴染として、すごく気になる。
僕は興味津々に新奈の話しを聞いていた。
昨日は結局朝のHRをして終わり、それからは緊急措置として停業となった。
現在時刻8時00分。
僕は今、今日から再開ということでいつも通りの時間に登校を終えていた。
「ねぇねぇ、昨日…」
正門から教室までの間にすれ違う生徒は皆口を揃えて僕のクラスの話題を話していた。
どうやら学校全体に行き届いているらしい。それもそうだろう。なにせあの蒼井海斗に彼女が出来たのだ。それだけでもビッグニュースなのに、そのことが原因で揉め事が起きたのだ。広まらない方がおかしいくらいである。
教室に入った僕は驚きを隠せないでいた。
目の前に広がっていたのはどんよりとした表情の生徒達の姿。
予想できることではあったが、今のこの空気の重さは予想の遥か上を行っている。
「来たのね」
そう声をかけてきたのは隣人の空見華月。
席が隣でも、向こうから話しかけてくることは今まで一度もなかったので少し新鮮である。
「来る以外に選択肢ないだろ」
まあ、休むことも可能だろうが昨日の件に関しては妹のために怒っただけである。もちろん手は出ていない。なので僕が休む必要は無い。
「妹さんはどう?」
どう、と言うのは心境のことだろう。
妹は全く悪くないのだがとち狂った川島とかいうヤンデレ予備軍みたいなやつに絡まれたのだ。
「あれから普通に学校にいたけど、帰ってきたときなんかしんどそうだったな」
「そう…」
空見華月は少し悲しげな顔でそう短く答える。
「おはよう…アラタ」
後からそう声をかけられた。
昔からずっと聞いてる声なだけに今日は一段と辛そうだというのが感じ取れた。
「おはよう」
振り向いて海斗に挨拶を返す。笑顔を作ってはいたものの、やはり辛そうである。
「空見さんもおはよう」
「うん、おはよう」
空見華月というやつは僕以外に対してはとても穏やかに接する。現に辛そうな海斗を励ますかのごとく笑顔で挨拶をした。
まあ、今日は珍しくまだ毒づかれてない。
「…私がこいつのついでみたいじゃない。最悪」
思った矢先にこれである。小声で呟いていたので僕を挟んだこの立ち位置だと海斗には聞かれていないだろう。
正直僕に聞かれてもアウトである。
(こいつのこの態度、いつか矯正してやる!)
心の中でそう決心していると海斗が口を開いた。
「アラタごめん!僕のせいで新奈ちゃんが…」
どうやら負い目があるらしい。
「海斗は悪くないよ」
僕は海斗に優しく言う。
「でも!」
それでも海斗はダメらしい。ならばここは少し強く出る必要がありそうだ。
「でももクソもない。お前がそんなだったら新奈はどうなる?それにな、謝るんだとしても僕じゃなくて新奈何じゃないのか?」
海斗はまた一段と暗い表情になった。
少し言いすぎただろうか。
「…謝りたいのは山々なんだけど、なんだろうね、避けられてるんだ。それに新奈ちゃんに対して責任も感じてるんだよ。好きなのもあるけど、前に言ったように取り巻きも壊して欲しかったんだよ。それに巻き込んだ。だから、別れた方がいいんじゃないかな」
こいつは重症である。自責の念が多い。
「海斗、お前バカだろ。新奈もまだ心の整理ができてないんだ、話せなくて当然。それに、別れる?止めてくれよ。責任感じてるんならそんなとり方じゃなくて最後まで責任もって面倒に見てくれよ。ていうかこれ命令な。なんて言うのかな、義兄ちゃん命令?」
「気持ち悪い」
空見華月がせっかくの雰囲気をぶち壊した。
まあ、前と同じくらいの声量だったので海斗には聞こえていないだろうが。
「…アラタらしいな。分かったよ、きちんと話してみる。なんかスッキリしたよ、ありがとう」
海斗はまだぎこちないが、笑顔でそう言うと自分の席に向かっていった。
僕はそれを見た後、空見華月に向き直る。
「結構いいこと言ったと思ったのにぶち壊すなよなな」
僕は空見華月にそう言った。
「いいこと言ってたと思うわ、私が私じゃなかったら今までのあなたの言動、行動もまとめてときめいてたかもしれない」
「じゃあなんで…」
よかった、第三者から見てもいいこと言っていたようだ。しかし同時に気持ち悪かったらしい。何故だろう。
「考えてみて、同級生に自分のこと"義兄ちゃん"って言ったのよ?気持ち悪い以外のなんになるのよ」
そう言われると恥ずかしくなる。
「…気持ち悪い」
認めてしまった。完全敗北である。
「ほらね」
朝の予鈴までの時間はこんな感じで過ぎていった。僕と空見華月に関してはいつも通りと言った感じだが、周りでは少なからず一昨日の弊害がある。それは朝のHRが始まってからも同じであった。
「おはよう。えーっと、まずお前らに報告な」
りつ先生はそう切り出した。報告、一昨日のことだろう。
「川島だが、退学することになった。自主退学だ」
『!!!!』
停学処分くらいのものだと思っていたが退学らしい。自主退学ということは一昨日の一件でみんなに顔向けできなくなったのだろう。彼女にとっては経歴にも記憶にも黒歴史を刻むことになった高校生活だった。
りつ先生は続ける。
「昨日のことは非常に残念なことだ。今後はあんなことがないように!では、今日の予定から…」
りつ先生は切り替えていつものような感じになった。
先生的にも退学者を出してしまったことになにか思うところがあるのだろう。どこかで無理矢理にでも切り替えないとやっていけない。それは先生だけでなく、僕達も同じなのだろう。
そんなこんなでその後は何にもなく、先生のおかげでみんなの顔にも少しづつ笑顔が見えだし、1日が終わった。
「ただいま〜」
部活から新奈が帰ってきたみたいだ。
海斗には今朝あー言ったものの、二人の事情だ。わざわざ聞いてやることもないので、気にせずそのまま自室の勉強机で宿題を進める。
トントントン
誰かが階段を上がってきた。
「お兄ちゃん、入るよ」
ガチャ
言いながらドアを開ける新奈。
「なんだ?」
「ちょっと相談…いい?」
多分海斗とのことだろう。
「いいよ、言ってみ」
ここ最近の新奈はとても辛そうだった。僕はできるだけ優しく言う。
「私ね、わかないの。このまま海斗くんと付き合っててもいいのかな…」
うん、知らん。全くもって分からない。
「そんなの僕が知るわけないよ」
「うぅ〜」
泣きそうになる新奈。泣かれても分からないものは分からない。
「泣くな泣くな。妹よ、お前は海斗のこと好きなのか?」
海斗が新奈のことを好きだというのはこの前聞いたから分かる。昔からの付き合いだ、新奈も悪い印象は持っていないとは思うがよく分からない。
「うん、三人で遊び出したくらいからずっと好きだった」
「マジか」
最初からずっと好きだったらしい。僕の妹は一途を極めている。
「ならいいじゃん、付き合って」
「でも…」
「でももクソもない。両思いなんだし何も気にすることないだろ。そんなに心配なら海斗に聞いてみればいい。お前も海斗も、きちんと話し合うべきだ」
何故だろう、漂う既視感。「でも」からのこの流れ、とてもデジャブってる気がする。
それは一旦置いておこう。
「いい…のかな」
「いいんだよ、気にするな」
「うん、分かった!話してみる!お兄ちゃん、ありがと!」
うっすらと涙を浮かべながらも笑顔でそう言う新奈。嬉し涙なのだろう。
そのとき、僕は不意に疑問に思った。
「なあ、お前らっていつから付き合ってんの?」
付き合っていること自体昨日の一件で初めて知った。多分ここ最近だろうが、どのタイミングでそうなったのだろうか。
「えーっとね、この前お兄ちゃんがドタキャンした時だよ」
「あー」
そう言えば、僕が空見華月の家で看病やらなんやらしている間、海斗とこいつは二人っきりで遊んでいた。
だが、あの日は雨だった。付き合うとかそのような空気になるだろうか。恋愛経験がないから分からない。
「ちょっと教えてくれないか?」
「恥ずかしいけど…いいよ。あの日ね……」
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