鋏奇蘭舞

炎舞

最強

「……よう」

繁華街の路地で金髪の男が口を開いた。

「……また会ったな」

それに銀髪の男が答えた。
二人の腰にはそれぞれ刃の鞘が収められている。

「今日こそ決めるぞ」
「ああ」

互いがそう言った直後、二人は自らの刃の柄に手を掛ける。

「「――――どちらが”最強”かを」」

柄に手を掛けたまま、しばらく沈黙が続く。
その時、テーブルに置いてあったグラスが落ち、鋭い音を立てて割れた。
それを合図に、

「抜刀!!!」

先に動いたのは銀髪の男だった。
一気に金髪の男との間合いを詰め、淡く紫に光る刀で斬りかかる。

「遅い!」

金髪の男は飛び上がりそれを避け、柄を引き抜いた。
銀髪の男はすぐに異変に気付いた。
――――男の刀には、”柄”はあるが、”刀身”が無い。

「フン、それでどうやって戦うっていうんだ」
「今に分かる」

そう言って金髪の男は、本来なら刀身のある部分に手を置き、螺旋状に空をなぞる。
――――すぐに、赤々と煌めく炎が燃え出し、なぞった通りの輪郭で刀身が出現した。

「耐えてみろ!”炎斬”!!」

叫ぶや否や、金髪の男は刀で空を切る。炎を纏った波動が銀髪の男に向かって襲い掛かる。

「ちっ」

銀髪の男は地面を蹴り、距離を取る。それでも容赦無く飛んでくる炎に対し、壁を蹴って飛び上がる。
無数の波動が建物の外壁を破壊し、破片までもが銀髪の男に牙を剝く。

「いい気になんなよ!”闇撃”!!」

銀髪の男は刀を斜め向きに振り下ろした。一薙ぎで飛んできた炎を全て消し、二薙ぎで破片を粉末に変え、
――――三薙ぎで道路を砕いた。
道路の破片は紫のオーラを纏って宙にとどまる。

「行け!!!」

銀髪の男が手を振り下ろした瞬間、その破片が金髪の男に向かって一斉に飛んで行った。

「……甘いな」

刹那、金髪の男は刀を道路に突き立てる。

「”隆々”!!」

道路が金髪の男を庇うように・・・・・・・・・・隆起し、破片は全て弾き返される。
直後、金髪の男は壁を自ら切って飛び出した。

「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

ついさっき銀髪の男がそうしたように、勢いよく斬りかかる。

(くそっ……避ける暇がねぇ!)

銀髪の男はそれを刀で止める。重い音が周囲に響き渡る。
刀同士がぶつかりあった衝撃が、そのまま波動となって周りに放たれる。ディスプレイや看板が吹き飛ばされ、車さえもひっくり返される。

「ほぅ……前回よりは成長したらしいな……」
「そっちこそ……一撃が重くなってるぜ……」

二人はギリギリと刀を押し付け合い、しばらく静止した。

「せいっっ!!」

先に銀髪の男が刀を弾き返し、両手で刀を持って気迫を込める。

「御遊びは終わりだ!」

刀に紫のオーラが溜まり、この戦いを終わらせる準備ができたことを示すように発光する。

「面白い…受けて立とう」

金髪の男も刀に気迫を込める。刃区から切先に向かって、真っ赤な炎が刀身を包む。

「決着を付けるぞ!!」
「おう!!!」

しっかりと刀を握った二人は、地面を蹴り、走り出した。

「うおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
「そりゃぁぁぁぁぁああああああ!!!!!」

剣撃、剣撃、剣撃、剣撃、剣撃、剣撃。
閃光、閃光、閃光、閃光、閃光、閃光。
火花を散らしながら、光の残像を残しながら、二人の剣舞はいつまでも繰り返され…

「おーい、お二人さん!」

なかった。

「何だ!」
「何の用だ!」

見ると、繁華街に店を出している中年男性が手を振っている。

「なあ、今日はちょっと長すぎませんかねぇ。いい加減にしてくださいよ。こっちだって店を荒らされちゃ困るんですよ。今日はお引き取り願えませんかねぇ。」

それを聞いた二人は互いに飛び退き、距離を置いた。

「……興醒めだ」

銀髪の男は気迫を霧散させ、刀を鞘に納めた。

「ああ、全くだ」

金髪の男は軽く柄を握って炎を消し、柄を鞘に戻した。

「だが、次会ったときは!」
「ああ、どっちが”最強”か」
「「決着をつけるぞ」」

口元に笑みを浮かべて、二人の男は立ち去った。

………………………………………
……………………………
…………………

戦いが終わった後の繁華街では。
「おーい皆、もう出てきて大丈夫だぞ!」
今まで店の奥で隠れていた人たちがぞろぞろと出てきた。
「全く、”決戦”もいい加減にしてほしいものだね」
そう言って喫茶店のマスターは壊れた壁を札で修復する。
「ホントだよ、ああいうことは他所でやってほしいね」
そう言って肉屋のおばさんは最早崩壊した道路を呪文で引きはがし、新しい道路に変える。
「どうにかならないものかねぇ」

それは、繁華街の人々全員が思っていたことであった。しかし同時に、繁華街の人々全員が口に出して言えないことでもあった。なぜなら、二人はまさしく”最強”であり、彼らに敵う者などいないからだ。

修復が進む繁華街は、徐々に光を取り戻しつつあった。




<了>

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