番外『異能少女の旅《Alice's travel》』

深谷シロ

番外『異能少女の旅《Alice's travel》』

まさかこんな役目を受けるなんて……。

ある少女『アリシア・ローズレット』は後悔していた。
この少女は『異能者』である。しかしこの世界に『異能力』という力は存在していると信じるものは非常に少ない。この世界に広がる『魔法』という能力をもつこの人々でさえも。

この世界に十数年前は存在していた『学校』という教育機関は『魔法』という存在が明らかになってからはその制度も義務も廃止されてしまった。それはあくまでも『魔法』を使う者の中だけだが。『魔法』を使えない者『非魔法使い』は、学校に通い、知識を身に付ける義務がある。アリスはこの制度が良いものではないと思っている。

と言いつつもアリスは『魔法』を使えるので、学校には行っていない訳であるが。アリスは世界のトップ機関である『国際魔法取締局』に呼び出された。『国際魔法取締局』は処罰以外における全ての権限を受け持つ。『魔法』に関する法律でさえもここが制定するのである。

アリスは『国際魔法取締局』に呼び出され、街に置かれている『テレポートセンター』まで行くか、『魔法』で【テレポート】するか悩んだが、何ヶ月かぶりに外に出ようと思った。

アリスが外に出ると強い日光が襲い、目を細めた。

おっと……こうしている暇はないんでした。急がないと……

アリスは早足で『テレポートセンター』に行った。そして『国際魔法取締局本部』に【テレポート】した。

ここが『国際魔法取締局』の本部……。大きな建物ですね……。では入るとしましょう。

アリスは『国際魔法取締局』の本部に入った。本部内は慌ただしかった。どの局員も忙しそうだ。

何かあったのでしょうか?とアリスは考えつつ、中央の受付に行った。

「すみません。アリシア・ローズレットと言います。本部長に呼ばれて来ました。」

「分かりました。本部長より要件は聞いております。ローズレット様。【タイム・トラベル】で過去に戻り、緋山純という少年をこの時代に連れてくるようにという依頼です。その少年は先日亡くなられた『ジパング』王の跡継ぎになるようです。」

「……わかりました。」

「はい、ローズレット様が来られたことを本部長に連絡しておきます。」

過去に戻るなんて……。確かに私は世界の中でも数少ない【タイム・トラベル】という【時間転移魔法】が使える魔法使いですが……。それに少年があの『十天族』に……?どんな方なのでしょうか……?迷っていても仕方ありません!準備をして過去に行きましょう!

アリスは【時空魔法 テレポート】を使って家に帰ってきた。家に帰るとポストに『魔法文書』が送られていた。『魔法文書』は葉書や封筒などの代わりとして使われるようになった魔法を流すと動き出す『魔導具』の1つだ。アリスは『魔法文書』を開いた。

そこには『緋山純』という少年についての詳細が記されていた。

『緋山純。17歳。男。【タイム・トラベル】を操る『タイム・トラベラー』の一人。この時代より平成時代に【タイム・トラベル】して住んでいる。…………』

緋山純の魔法能力について記されていた。おそろしいほどの魔法力である。体術なども出来るようだ。

「私にこんな人が説得できるでしょうか……?」

アリスは【タイム・トラベル】するのを明日に決め、今日は脳内シミュレーションしていた……。

……上手くまとまりません。何度やっても失敗してしまいます……。どうしましょうか……。今更断るのは失礼ですし……。

そうこうしているうちにアリスは寝てしまっていた。アリスが起きると既に日付は代わり、過去に行く日となっていた。

服は……過去と差異はない、ですね。

【タイム・トラベル】に対する法律として、その時代にあう外見でなければならないというものがあるため、アリスは平成時代に合う服を選んでいた。



外見もインターネットに載っている平成時代の人々のものと変わらないのを確認して、アリスは準備を整えた。一応のために純の家の周りの地図を持参した。すぐ帰ってくるつもりなので食べ物などは持っていかないことにした。

「では行くとしましょう。【時空魔法 タイム・トラベル】!!」

アリスは時間を遡り、平成時代へと来た。アリスは小道へと出てきた。問題点は人に見つかったいないかだ。『魔法』を使って、辺りに人がいないことを確認して歩き出した。

『魔法文書』に書いてある住所を地図で確認しつつ、まずは現在地を確認することから始めた。すると今度は人を探すことになった。人がいない所に【タイム・トラベル】して、人を探すとは皮肉なものだ。

小道より大通りに出ると人が多くいた。アリスは近くにいる人に現在地を聞くと、意外と緋山純という少年の家の近くであった。

「ありがとうございます。」

教えてくれた青年に礼をしつつ、緋山純の家へと地図を頼りに歩き始めた。

道の途中に信号があればルールが分からなかったのだが意外と緋山純は田舎に住んでいるおかげで、信号が無かった。田舎道のせいで地図よりも道は複雑であり、アリスは少し迷った。

「えーっと……ここは……?」

アリスが着いたのは中学校だった。アリスはここがどこであるか再度人に聞いてみることにした。たまたま近くにこの学校の生徒らしき子供が歩いていたので聞いてみた。

その子供によるとアリスは緋山純の家から遠ざかっていたようだ。慌てて道を戻り、元の大通りまで戻った。さきほど来た時は気づかなかったが道の掲示板に地図が貼られていた。

アリスはその地図を手持ちの地図と照らし合わせ、緋山純の家までようやく辿り着いた。

「や、やっと辿り着きました……では、インターホンを鳴らすとしましょう……。」

ピンポーン……。誰も反応しないようだ。

おかしいですね?誰もいないのでしょうか?この時間はいつもいると『魔法文書』には書かれていたのですが……。しょうがないです。家の中で待ちましょう。説明は後でしましょう。

アリスは魔法を使って鍵を開き、緋山純の家に不法侵入した。

次の瞬間にはアリスは倒れていた。この夏の時期に水分補給もせずに1,2時間太陽に照らされながら道を歩いていたのだ。当然だろう。

ガチャ。ドアが開いた。この人が緋山純でしょうか……?

「おーい……大丈夫ですかー」

純は言った。アリスは苦し紛れに返答した。

「みず……水を…1杯……飲み…たい。」

コメント

コメントを書く

「その他」の人気作品

書籍化作品