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劣等魔法の黙示録

雨草ハルタ

P.8 帰宅

「少年様? やはりここにいらしたんですね」

トゥスとベーチェの小屋にショウが訪れた。

僕には、まだ正式な名前が無い。その為、今は少年というのが、僕の呼び名だ。

「ミルディン様から、そろそろ着くと連絡がありました」

「わかったりました。今行きます」

トゥスとベーチェに別れを告げて、小屋を後にした。

「少し、御髪が乱れていますね…」

サッと一瞬で僕の髪を整えた。

「はい、直りましたよ」

「ありがとうございます」

次の瞬間、僕らの正面の方向から、こちらに高速で向かってくる反応を察知した。

そして、僕達の頭上を大きな影が横切った。遅れて風が巻き起こる。

せっかく直してもらった髪も、風に撒かれてしまった。

「帰ってきた様ですね…ご無事に…」

眩しそうに、空を見上げる。髪が風で揺れる。その表情には安堵の感情と少しの寂しさが伺えた。

力ずよく、黒々とした大きく翼を広げ、僕らの上を何回か旋回。速度を落として目の前に着陸した。

ウィングバードの変異種だろうか…この辺の森で見るものとは、かなり違うけど。

背中から降り立ったのは、やはりミルディンだった。久しぶりに見たその顔は、心做しか痩せてみえ、髪もだいぶ伸びている。

僕らの方に歩み寄ると、ぎゅっと抱きしめられた。なんだか、小っ恥ずかしい…

「ただいま…ショウ、少年…待たせたねぇ」

「お帰りなさいませ。ミルディン様。変わらず元気そうで安心致しました。」

淡々とした、模範解答のような答えだった。その表情は遮られてよく見えない。

「お、おかえりなさい…」

遅れて僕も言葉を発した。

「今回も留守をありがとうねぇ…」

「…当然の務めです」

その後ミルディンとショウは二人で話しがあるからと、その場を後にする事になった。

「ソイツはトルク。お前なら話し相手になるだろうねぇ」

ポツンと僕とウィングバードのトルクが残った。

「…よろしくお願いします。トルクさん」

「ああ、こちらこそ……名前は呼び捨てで構わない」

言葉数が少ない人なのかな?その黒さと相まってクールさが際立つ。

「言語変換使わなくても大丈夫ですよ」

「使わなくても分かるのか?」

コクリと頷く。

「話し相手になる…そういう事か…」

真剣な表情をしている…何だかこっちまで緊張してきた。

『いやー、言語変換って結構疲れるんだよねー。あ、ちなみに俺は君たちの言語わかるからそのまんまで大丈夫だから!』

凄く流暢に話し始めた、トルクに少し驚きつつ会話を続けた。

『そちらが素なんですか?何と言うか…猫かぶりすぎてませんか?』

『いやー、どうも俺は言語変換が苦手で…
あっちの方が楽なんだよねー』

言語変換はかなり高度な技術が必要だ。出来るだけでも十分すごいらしい。
僕は何故かその技術に長けているらしく、習得に困らなかった。

『まあ、俺はお前を気に入ったからな!兄貴だと思って困ったらなんでも聞いてくれ』

この日、新たに気のいい兄貴が、僕にできた。

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