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劣等魔法の黙示録

雨草ハルタ

P.3 余韻

「ここの部屋をお使いください」

案内されたのは、僕が先程まで寝ていた部屋とは違う所だった。一体、ココにはいくつの部屋があるのだろう?

「お着替えは...自分でなさいますか?」

「はい 何から何まで...すみません...」

僕は深々とお辞儀をした。

「失礼しますねッ?」

突然おでこにデコピンを食らった。

「い、痛い...」

僕は涙目になりながら顔を上げた。ショウの顔は何故か少し悲しそうだった。

「貴方はまだ子供です 大人に甘えていいんです だから、謝罪よりも感謝をしてくれた方が私も好ましいです」

ふわりと、優しく僕の頭を撫でた。

「だから、そんな思い詰めた暗い顔、しないで貰えますか?」

その言葉でなんだか僕の心は軽くなった。本当に、この人は、この人達は僕の事を心配しているんだ。

「色々と、ありがとうございます。ショウ」

僕は、今、出来得る最高の笑顔で笑った。感謝の気持ちと、何より、僕自身が嬉しかったからだ。

「はい お誉めに預かり光栄です」

ふわりと、笑い返してくれたショウ。このまま少し話していたいけど...睡魔が...

ふわぁ〜、思わず大きな欠伸をしてしまった。

「本日は色々あってお疲れでしょう。着替えはこちらで、その他の部屋の使い方はこちらの本をお読み下さい」

そう言って、ショウはそれらが入っている、バスケットを僕に渡した。

「それでは、おやすみなさいませ」

「おやすみなさい、ショウ」

パタン...扉が静かに閉じはれ、僕は部屋に1人になった。

渡された服に着替え、僕はそのまま、寝具に倒れ込んだ。

「今日は、怒涛の1日だった...」

ミルディン・アステ=セルヴェード...彼女は恐らくこの屋敷の主。すごく、からかわれたし、よく笑う人だった。悪い人ではないと思う。

ショウ...彼は僕にとても良くしてくれる。何故だろう?そして、僕を見る時、とても悲しそうな顔を時々見せるのは何故だろう?

2人ともいい人だ。きっと。でもなんで...何でこんなにも暖かく迎えてくれる?

だって、普通はもっと冷たい...?扱いを受ける...はず...?だと思う...

「普通って? なんで、そう思ったんだろ?」

この考えも、感情も以前の自分のものなのか?それとも、常識なのか?

「分からないことだらけだ...」

でも、ひとつだけ確かなことは、あの2人とはこれからも一緒にいたい...

そう感じたことだ。

明日からもっと、2人と話そう...そうすればきっと、疑問も解けるはず...

そのまま僕はふかい眠りについた。



「ショウ 少年の様子はどうだったかねぇ?」

「やはり、まだ他人行儀なところはありますが、警戒心はだいぶ無くなったようです」

「そうかい...少し、強引にした所もあったからねぇ。でも、大丈夫そうだねぇ」

窓の外を見ると、大きな満月が空に浮かんでいた。曇1つなく、星がめいいっぱいに輝いている。

「ショウ...明日から、少し出かけてくる あの子の事、よろしく頼むねぇ」

「分かりました。お気を付けて...」

そうしてその日から1年間、ミルディンは戻ってこなかった。

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