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劣等魔法の黙示録

雨草ハルタ

P.1 睡余

『ねぇ?キミはなんで自分が疎まれるか知ってる?』

酷く子供じみた声が響く。

『教えてあげよっか?ねぇ?どうする?』

まるで、これからイタズラをする子供のような声。

『お話するには、まず、そこから出てもらわないとね』

ニコッと笑うそのコは、僕に向かって手を伸ばした。

僕に触らないで。キミもバケモノになるよ。

『構わないさ!だってボクは────

そのコは僕の腕をつかみ、強引に引き寄せた。

さっきまで、曖昧だった意識が妙に急にハッキリとした。

そこにはさっきまでの闇とは違った。

中央には真っ白なロココ調の机が1つと、椅子が二脚。

そして、周りにはたくさんのクローバー。

空は2つに割れている。

片方は昼。青空に太陽。程よい量の雲。

片方は夜。暗闇に輝く満天の星と月。

そこは、箱庭だという。完璧な程に美しいその景色。

そのコは僕の手を引いて、その美しい所まで連れていってくれた。

僕に椅子に座るように促す。僕が座ると反対側にそのコが座る。

僕の顔を見ながらニコニコ笑うそのコは、真っ白な長い髪に僕と同じ赤い目。

赤い、目と目がかち合う。

『ねぇ、ボクがはじめに言ったこと覚えてる?』

コクコクと頷く。

『それはね、キミがほかの人と違うし、弱いからだよ。』

僕は俯きギュッとズボンを掴む。

『でもね、ほかの人と違うのは当たり前。でも、キミには力がある。ボクがその寝坊助さんな力を起こしてあげる。』

急に目の前が眩しくなる。

『またね!起きたらキミはボクと同じ本当のバケモノ・・・・・・・だ!』





重たい瞼をこじ開ける。久しぶりに届く光に僕の目は驚いているようだ。

体が重い...

僕はゆっくりと体を起こした。

周りには見慣れないものしかなかった。

「ここは...どこ?」

フカフカの大きなベット。
丁寧な彫刻が施された木製の家具。
部屋にはたくさんの植物が飾られている。
そして、床や壁はまるで植物の根や枝のようだった。

僕はベットから降りると、少し部屋を歩き回る。
体を伸ばしたりして、感覚を確かめた。うん。筋力は落ちたがそれ以外は以前と変わらない...

ん?以前?前の僕って誰だ?

あれ?なんだこの違和感は...?考えようにも、頭が働かない。

そして、部屋の奥にある大きな鏡の前で、何気なく止まった。

そこにあった、僕の姿はまるでバケモノ・・・・のようだった。

額から黒い角が2本。そして、黒々とした左足。

しかし、僕はそんな異形になった自分を見ても何故か驚かなかった。何となく、こうなることがわかっていたような気がする。

何だかとても、頭がぼーっとする。まるで、モヤがかかっているようだった。
僕がそのまま鏡を眺めていると、ガチャっと扉の開く音がした。

(「?!   だ、誰だ?」)

振り返るとそこには、黒色の背広を着た銀髪金眼の少年が立っていた。とても、整った顔をしている。

僕の姿を見るなり手に持っていた、水の入った容器とタオルを床に落とした。

目を見開いて、持っていた手の形のままフリーズしている。

そんなに、この姿が醜いのか…驚くのも仕方がない...

少年はカツカツと革靴の音をさせながらこちらに近寄ってきた。

すると、僕の目の前で跪き、涙ぐんだ優しい眼差しで僕を見て微笑んだ。
「おはようございマス。ええっと、シン様?」

すると、さっきまで靄がかかっているようだった頭が急に鮮明になった。そして、激しい頭痛とともに、古い映像が頭に過った。

「ぐぁッ!?」
ぼくは頭を抱えながらその場にしゃがみ込んだ。
これは、森か?たくさんの獣達と戯れる1人の少年。彼は誰だ?

「?!   シン様大丈夫ですか?」
銀髪の少年は金色の瞳を見開き驚き、戸惑っている。

「ゔ...また...頭が...」
"シン"そう呼ばれる度に頭痛は酷くなり、頭に流れる映像は鮮明になった。

そして次第に、その映像は僕の意識を1匹のケモノに辿り着かせた。

「リ...アン...?」
僕は割れそうな程に痛い頭に唐突に浮かんだ単語を呟いた。

(「って、誰だ...?」)

ズキン!今度の頭痛はあまりの痛さに視界が白くなった。

ふらっと床に倒れ込みそうになる僕を銀髪の少年が受け止めた。

「無理をなさらないでください...まだ、目覚めたばかりです」
そう言って少年は僕をヒョイっと抱えるとベットへ運んでくれた。

僕の意識はそこで再び暗闇へと落ちていった。
その時見た、少し寂しそうな少年の顔が妙に印象的だった。

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