私の世界〜「部活の後輩と付き合ってみた」スピンオフ〜

きりんのつばさ

私の大切な同期








「で僕らはこの後どうするの?」
彼は好物のココアを飲みながら言ってきた。
私達は現在、今日泊まる予定のホテルの一室にいる。
そして私達は真ん中にテーブルを挟んで向き合っている。
「そうだね。あらかた復讐相手は復讐し終えたしね〜
あとは黒幕のみだね〜抹茶ラテお代わり〜!!」
「……結局僕が入れるのね。へいへい分かりましたよ」
と国木田は私からカップを受け取ると粉とお湯を入れた。
この手際の良さは日々彼女である平塚を
世話している慣れからくるものだろう。
「ほいよ」
「ありがとう〜」
「てかさ樋口さん」
「ん? なんだいワトソン君?」
「ーー黒幕分かっているんだろう?」
「いきなり何を言いだすんだね?」
「とぼけないで。そろそろ黒幕の正体を
教えてもらってもよくない?」
「そんなに気になる〜?」
「そりゃね。ここまで付き合っているんだから
君の好きな人をあんな目に合わせた奴が
どんな奴なのかぐらいは知っておきたい」
「うんそうだね〜
そろそろ教えてもいいかな〜
ーーまぁその前にお代わりいる?
特別に私が注いであげよう」
「ただお湯を入れるだけだろうが……
じゃあ頼んだ」
と私に向けてカップを差し出してくる。
それを受け取ると粉とお湯を入れて
再び国木田に渡した。
「はい、私の愛情タップリのココアだよ〜
召し上がれ〜!!」
「……ただの市販のココアなんだよな」
と言いながらもしっかりと飲む国木田。
「さてそろそろ教えてもらうよ。
誰が一体黒幕なのか。
ーーちなみにその人物はこれまでの君の話に
出てきた事ある?」
「うん、あるよ〜。結構初期に」
そうだ、黒幕は私が復讐に取り憑かれる前から
私と広樹と関係はあった。
「……って思ったら結構の数いるな。
範囲広いな……」
「ちなみに元クラスメイトだよ〜」
「結構いるじゃないか……
ふぁ……なんか疲れて眠たくなってきた」
「そりゃそうだよ結構な長旅だったし〜
日々の色々な疲れが出てきているんだよ〜」
「そうか……ふぁ〜〜眠い」
と目をこすり出し、あくびを何度もする。


そして5分後……
「すぅ……」
国木田はすっかり夢の中へ飛び立っていった。
「あらら〜寝たか〜?」
試しに身体を揺らしてみるものも
全く起きる気配が無い。
「あらら寝ちゃったか〜
ーー流石に効きすぎたかな」
と私は手元にあるカップを見る。
「国木田〜貴方は人を信じすぎだよ〜。
目の前の相手が本当に信頼していい人物かを
しっかりと見極めないと〜〜」
「すぅ……」
「ーー睡眠薬入れられても文句は言えないよ〜」
そうだ。
私は国木田のカップに睡眠薬を入れておいたのだ。
気づかれないように少しずつ少しずつ
入れておくことによって彼を眠らせる事に成功した。
「国木田、貴方には悪いけどここからは
私一人で行かせてもらうよ。ここまでありがとね」
元々そのつもりだった。
黒幕とは私だけで行くつもりだった。
国木田は最後まで行くと言い張りそうだが
ここまで彼には色々と迷惑をかけた。
流石にこれ以上、このお人好しの同期を
巻き込みたくなかった。
「国木田、今だから言わせてもらうけど。
私さ、貴方の事、広樹の次に好きだよ。
実際大学2年生の頃なんていっそ告白しようか
悩んでいたんだ」
私は国木田の事が好きだった。
広樹に何故か似ていたというのもあったが
あのお人好しさには惹かれていた。
何よりも一緒にいて、広樹と同じぐらい安心出来た。
「でも貴方は平塚という彼女が出来た。
私は少し悔しかったけど良かった」
私は彼の頭を撫でた。
「……七海、塩で綿あめは……作れないよ……」
「何て夢を見ているのさ貴方は……」
というか夢の中でも失敗をする平塚は何なんだろうか。
「まぁ、でも……本当にお似合いだよね貴方達は」
あの2人はうまいぐらいにお互いを補っている。
あそこまで見ていてお似合いだと思うカップルは
私にとって初めてだった。
だがかこそ……
「これ以上貴方を巻き込むわけにはいかないよ。
ーーだって貴方は私の大切な同期なんだから」
彼は本当に良く私に付き合ってくれたと思う。
私の思いつきや行き当たりばったりの行動に
文句を言いながら付き合ってくれた。
本当にこの同期には感謝しかない。

「さて、そろそろ行こうかな。あっ、その前に……」
私は自分のカバンを漁り、1枚の手紙を出した。
これには私が思っていたこと、今回の真犯人の事が
全て書いてある。
何故この手紙を書いたのかというと……
「だって貴方と会うのはこれが最後だからね」
今回のケジメをつけたら私は国木田達とは
二度と会わないつもりだ。
せめてこの最後まで付き合ってくれた同期ぐらいには
真相を知る権利があると思う。
だからこの手紙を書いた。
「よし、私のこの数年の因縁にケリをつけにいきますか」
私は自分の荷物をまとめると、その手紙と宿泊費を
テーブルに置いた。
そして
「じゃあね国木田。今までありがとうね」
私は寝ていて聞こえないはずの国木田に言うと
ホテルの部屋を後にした。








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