私の世界〜「部活の後輩と付き合ってみた」スピンオフ〜

きりんのつばさ

僻みもある











国木田が作ったお昼ご飯を食べて
私は国木田がさっきまで読んでいた恋愛小説を
試しに読んでみることにした。
ちなみに彼は読み終えた本をもう一度読み返すらしい。
「……」
ペラペラ
私は読みながらページをめくっていた。
今、私が読んでいる本のストーリーは
よくあるテンプレの流れであり、幼馴染だった2人が
とある事で離れ離れになり数年後偶然再会するところから
物語が始まる。
……というか国木田は何故このストーリーの本を
わざわざチョイスしたのだろうか。
ある意味私への当てつけだろうか?
"幼馴染"  →私と広樹

"離れ離れ"  →高校時代に広樹が退学

 "数年後偶然再会"→昨日会ったよ……

ここまで私と広樹に似ているカテゴリを持ってくるとは
国木田は何を考えているのだろうか?
まぁ多分私に貸すつもりは無かったからだろうけど。
(まぁこの物語では最後はハッピーエンドみたいだけど)
偶然再会した2人は徐々に昔みたいに親睦を深めていき
途中色々な問題が起こりながらも周りの人達の力を借り
最後には結婚して、子供達との家族団欒の場面で
物語は終わる。
うん、なんというハッピーエンドだろうか。
(まぁ実際にはこんなに上手くはいかないでしょ?
街中で偶然再会? 無理無理あり得ないあり得ない
数年経って、前みたいに仲良くは無理だよ)
若干私自身の僻みもあるだろうが、読んでいて
イライラしてきた。
「……ちょっと樋口さん、顔に出てるって」
「ん?……何が?」
「不機嫌か不満かは分からないけどさ
顔に明らかに出てるよ」
「別に……出してない……」
「なんなら声のトーンから分かるよ……」
「……あらら」
そんなに分かりやすかったかな?
「まぁ昨日の件から中々は難しいと思うけど
まだ君にもこの作品と同じ様にハッピーエンドは
残っているんじゃないのかな?」
「……もういいって」
「へいへい、別に無理強いはしないよ」
と国木田はスマホの画面に目を戻した。
それと同時に私も国木田から借りた別の本を読み始めた。

「……クスクス」
今度私が読み始めたのはラブコメだった。
とある高校の常にハイテンションな後輩が巻き起こす
事件に必ず巻き込まれる真面目な先輩の話で
後輩の方は先輩の事が大好きで気を引くために
問題を起こすのだが、先輩はそんな気持ちなど知らず
嫌々顔で解決に駆り出されている。
このバカ騒ぎが意外と心地よい。
……まぁでも妙にハイテンションな後輩と
真面目な先輩って既視感があるんだよね。
「……ん?どうしたの樋口さん?」
国木田が不思議そうに聞いてきた。
「……いや……別に……」
「そうか」
とまたスマホの画面に目を戻す国木田だった。
私もこんな日常を広樹と一緒に過ごしてみたかった。
だけど、もうそんな日常は送れない。
もう私と広樹の人生は二度と交わらないからだ。
「……ねぇ……国木田」
「ん?なんだい?」
「私は……ハッピーエンド……嫌い」
「ほう、珍しく意見が違ったね」
「なんか……見てて……嫌だ」
「まっ、そういう人もいるから仕方ないさ」
「……国木田は……私に悪いって……言わないの?」
「だってそんなん、人それぞれでしょ?
僕は好き、君は嫌い。それでいいんじゃないの?」
国木田は私が悪い、間違っているとは言わなかった。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品