私の世界〜「部活の後輩と付き合ってみた」スピンオフ〜

きりんのつばさ

暇だからだよ



私達は電車で揺られる事数時間……
目的地ーー私の故郷に着いた。
「改めて見ると何にもないわーー」 
「……おいおい、一応自分の地元でしょうが」
「地元だから言えるのさ〜」
数年ぶりに帰って来た地元の割には何にも思わなかった。
よくドラマや小説では故郷に帰って来て懐かしむ描写が
あるが、私は殆ど何にも感じなかった。
(そうか……私はこの風景を何とも思わないのか。
それぐらい何とも思わなくなったのね……)
そんなところにまで来てしまった自分の感情に
やや悲しくなりながらも、私は今回の目的の為に
気合いを入れ直した。
「よし!! 国木田、作戦会議だーー!!」
「おぉっ!? なんだよ、びっくりさせないでよ……」
「作戦〜作戦〜会議だ〜会議だ〜暴れるぞ〜」
「頼むから暴れないでくれよ……?」
と口ではそう言いながらも私に付き合ってくれる
国木田には感謝している。
(だって……私の過去を知ってもなお、私と普通に
接してくれているのがどれだけ私にとって嬉しいか)
私の過去を知ってもなお、私にお節介を焼いてくるし
しょっちゅう気にかけてくれるし、今回もわざわざ
来てくれた。
(本当、私なんかにはもったいないぐらいの同期だよ。
ありがとう国木田)
私は心の中で彼に感謝した。



私達は国木田が泊まる旅館の部屋で作戦会議を
する事にした。
「さて、ワトソン君。問題の同窓会は明日の7時だ。
君にはさりげなく従業員のフリをして潜入してもらう」
「それに関しては同意しよう、ホームズ
で、僕は何をすればいいんだい?
そしていつまで茶番に付き合えばいい?」
ワトソンこと国木田は私に言ってきた。
「初歩的な事だよ、ワトソン君。
ーー私が飽きるまでだよ」
「真面目にやれや!?」
「私の灰色の脳細胞がこう言っている……
ーー今の内に遊んでおけと」
「……お前の脳に直接、ペンキで色塗るぞ?」
「いやん、私の隅々まで見られちゃう〜
もう国木田の変態〜!!」
「マジで帰っていいかな僕!?」
国木田がキレ始めた。
「まぁまぁ、冗談はこれぐらいにしておいて……」
「付き合ってらんねぇ……」
「とりあえず国木田には従業員のフリをしてもらって
私を主に見張っていて欲しいな〜」
「前、言っていた暴れない様にだっけ?」
「そうそう、だって私この地元に住んでいる人で家族以外
ーー全員敵だもんね〜」
そうだ。
私にとって広樹を追い出したこの町に住んでいる全員が
敵であり、復讐相手なのだ。
高校時代はあの2人で留めておいたが、今広樹の悪口を
言われたら抑えられる保証が無い。
「おいおい、そこまでかよ……そこまでこの人達を
恨む必要あるのかい?」
「ふふ、そりゃね〜
ーー許すと思っているの?」
「……君がそれなら僕は構わないが
まぁ僕が変に口出しする事では無いのか……」
国木田は渋々と言った形で私の案を了承した。
「ありがとう、国木田」
「協力はするけど、自分から問題を起こすなよ?
……せめて同期で一緒に卒業したいからさ」
「分かっているよ〜大丈夫だって」

ーー大丈夫だよ国木田。

ーーだって

ーーバレない様に消すからさ








次回から同窓会に入っていきます

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