私の世界〜「部活の後輩と付き合ってみた」スピンオフ〜

きりんのつばさ

思い出は邪魔だ


今回で樋口の復讐はおしまいです。






私がライターに火をつけようとした瞬間。
部屋のとある場所が目に入った。
「あれは……」
それは昔広樹と一緒に本を読んでいた机だった。
その机を見た途端、広樹との思い出が蘇ってきた。

ーー本を一緒に読んだり

ーーかくれんぼをしたり

ーーお菓子を食べたり

(何でここで思い出が蘇ってくるの!?
今の私には邪魔なのに!!)
と頭から離れさせようとしても中々離れない。
それどころか余計に強く蘇ってくる。
(何でこんなタイミングなの!?)
今、そんなのが蘇ってきたら火を放てない。
そうしないと目の前にいる担任と私は死ねない。
ーー今ここで死なないと私はこれからどんな風に
生きていけばいいのか?
(今の私はここで死なないといけないの!!
もうこんな事をして広樹に顔向け出来ない!!
会えなきゃ意味が私の人生に意味が無い!!)
そしてそんな中である言葉が頭の中に響いた。

"翔子は何があっても変わらないでくれよ"

それは広樹があのデートの日の別れ際に言った言葉だ。
彼は何でこんな言葉を言ったのか分からない。
もしかしたらこうなる事を予測して、この言葉を
私にかけたのかもしれない。
「くっ……広樹……」
(ねぇ、何で私の邪魔をするの!?
何で私に無言で行ったの!?
答えてよ、広樹!?)
私がどんなに聞きたくても、今この場に彼はいない。
そう思うと一気に力が抜けてきた。
ライターをポケットにしまってしまった。
担任を見るとその場に倒れておりどうやら
気絶しているようだった。
先程までの恐怖で気をやられてしまったのだろう。
確かにあの時の私は本気で担任を殺すつもりだった。
だから綿密に計画を練って、自分自身も逃げれない環境を
作って、殺すつもりだった。
だけど出来なかった。
(私の思い出の場所で殺そうとしたら、まさか思い出に
邪魔されるなんてね……まだまだ私も甘いな)
私は目の前で気絶している担任をもう一度見た。
(あんたは広樹に助けてもらったな……運が良い奴)
どうせこのままにすれば明日ぐらいには誰かが
担任を見つけて、犯人が私だって判明するだろう。
(とりあえず出入り口を全部開けておこう……)
私は出入り口を全部閉めたのと同じ要領で
全部の出入り口を解放した。
そして私はその場を後にした。


私は家までの帰り道をゆっくり歩いていた。
そして周りに誰もいない場所にたどり着いた。
(ここなら良いよね……?)
私はもう一度周りに誰もいない事を確認し
そして
「うわぁぁぁーーん!!」
大声で泣いた。
果たして復讐が不完全に終わった事への不甲斐なさか
もしくは広樹がいない事への寂しさなのか
泣いている私自身にも分からない。
ただ分かる事は泣きたいから泣いている事だけだ。
広樹がいなくなってから泣くまいと思っていたが
まさか泣く事があるとは思わなかった。
私の復讐は終わった。
半分は成功して、半分は失敗した。
明日には私は警察に捕まっているだろう。
(あぁ〜これで私も終わりか……
復讐に取り憑かれて色々と根回しをしてきて
最後の最後に足をすくわれるとはね……)
しかも自分が好きだった人の思い出に邪魔されるとは。
(思い出は邪魔だ……
って私は簡単に割り切れないんだよね……)
だって私にとって広樹との思い出は今の私を形作っている
大事な要素だからだ。
(明日は学校で私は捕まるのかな?
まるであのクズみたいだな〜
……まぁ私も同じ方法でクズを追い出したし。
同じ穴のムジナって奴か)


だが、運命は皮肉な事に私の人生に終わりを迎えさせて
くれないのだった。







そして後数話で過去編が終わります

次は国木田達が出てくる現代編になります。

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