私の世界〜「部活の後輩と付き合ってみた」スピンオフ〜

きりんのつばさ

私の世界が壊れた日




今回は長めです。

そして内容がかなり暗めです。











広樹と遊んだ次の日
私の高校に向かう足取りは軽かった。
「今日から・・・広樹と一緒に・・・うふふ」
久しぶりに広樹と一緒に学校生活を送れる
それだけで私の気分はますます盛り上がってくる。
「しかも・・・今日は・・・ノートを見せる口実で
一緒に・・・いられる」
カバンには国数英理社の広樹が休んでいた期間と
私が徹夜で作った特製のテスト対策ノートが入っている。
広樹にはいいと言われたけど、昨日の髪留めをもらった
テンションで全て作れてしまった。
・・・なお昨日もらった髪留めはつけるのが
もったいなくて家で大事に保管している。
「・・・今回のは・・・自己最高傑作・・・ドヤ」
多分今までのテスト対策ノートの中でも最高傑作だと
自分でも自負している。
今日は何か午前中用事があるらしく広樹は午後から
登校するらしいけど、私の気持ちは既に午後に
向いていた。
「授業中の広樹を・・・見れる・・・幸せ」
そして学校が終われば広樹と一緒に帰宅できて
一緒に寄り道したりして・・・
「えへへ・・・楽しみ・・・」
私はスキップしながら学校まで向かった。



この時の私は浮かれていた。
ーーこれから1時間もしない内に私の幸せな気分は
一気に絶望へと変わるなんて思いもしなかった。















そして私は学校に着き、いつもの様に準備をしていた。
この頃になると誰も広樹の話をしなくなってきた。
(興味がある時は徹底的に叩くのに興味が無くなって
きたら一気に無視する・・・酷い)
私はクラスメイトの薄情さを非難していたが
それもありだと思っていた。
(だって・・・もう広樹が・・・苛められずに済む
もしまたやられたら今度は・・・私が守る)
それが今まで私を守ってくれた
広樹への私なりの恩返しだ。
(頑張れ・・・私・・・ ︎えいえいおー ︎)
私は1人でちっちゃく決意をしていた。
そして朝のホームルームが始まった。
「うん、全員いるわね」
(あっ、こいつ広樹忘れた・・・)
私は担任に多少イラッとしながらも
ホームルームを聞いていた。
「ここでみんなに重大なお知らせがあります」
担任がそう言うとクラス内でのザワつきが収まった。
(・・・ん?何だろう?)
私はそう思いながらも自分には関係無いだろうと
話を聞き流すつもりだった。
ーーそうこの瞬間までは

「君達のクラスメイトである澁澤広樹君は
ーー本日で別の学校に転校する事になった」
「えっ・・・」
ザワ
いきなりクラスがザワザワとし始めた。
(今、何て言った・・・?)
私は担任が言った言葉の意味が分からなかった。
いや、分かるけど頭が理解するのを拒否していた。
「先生、それって本当なんですか?」
とあるクラスメイトが担任に尋ねた。
「えぇ、本当よ。澁澤君は今日から別の学校に
登校しているわ」
(嘘だよね・・・そんな事・・・広樹がするわけ・・・
無いよね・・・)
私は更に混乱していた。
広樹は私に何も言わずに出て行くはずが無い。
だって幼馴染だよ?
10年以上、一緒にいたんだよ?
そんなはずが無い ︎
「今日から1人減ったけど、これからもみんなで
協力してい」
「嘘だ ︎」
クラス中の視線が私に集まる。
それはそうだろう。担任が話している最中に大声を出して
更にいつもは無口な私が大声を出したんだ。
そうなるのは当たり前だろう。
けど、私は構わず続ける。
「ひ、樋口さん ︎どうしたの ︎」
担任も私が大声を出した事に驚いていた。
「広樹が・・・転校するはずが無い ︎
嘘ですよね先生 ︎」
「い、いや嘘じゃ無いわ。
彼は金曜日でこの学校の生徒では無いわ」
担任は若干たじろぎながら答えた。
「嘘だ・・・そんなの嘘だよ・・・ ︎」
私はとある考えが浮かんだ。
(そうだ、広樹の家に行けば・・・)
あそこに行けば、広樹が絶対いるはずだ。
(そうだ・・・そうに違いない ︎・・・そうなんだ ︎)
私は教室を走って出て行った。
「樋口さん ︎待ちなさい ︎まだホームルーム中よ ︎」
後ろの方では担任が私を止めようとしているが
そんなの私は無視して学校を飛び出した。
(広樹・・・ ︎広樹・・・ ︎広樹・・・ ︎)
私は無性に彼に会いたかった。


学校から全力で家までの道を走っている。
(あそこに行けば・・・いるはず・・・ ︎
広樹が・・・いるはずなの ︎)
普段私はあまり運動をしないが広樹に会う事だけを
頼みの綱としてかなり無理をして走っていた。
そして走り始めて十数分後、私の家が見えてきた。
(み、見えてきた ︎あともう少しで・・・
もう少しで広樹に会える ︎)
そしてついに広樹の家の前に着いた。
いつもなら必ず押すインターホンを押さずに
直接家のドアを叩いた。
ドンドン ︎
「広樹 ︎広樹 ︎いるんでしょ ︎いるなら返事して ︎」
私が家の前で叫んでも何も反応が無い。
試しにドアに手をかけてみたところドアが開いた。
「入るよ ︎」
私は玄関で靴を脱ぐと、真っ先に広樹の部屋に向かった。
(部屋にならいるはず・・・ ︎今度こそ ︎)
そして広樹の部屋のドアを勢いよく開けた。
「広樹 ︎
・・・嘘でしょ?」
目の前の部屋には広樹おろか棚すら無かった。
(そ、そんなはずが無い・・・ ︎
そんな訳があるはずが無い・・・ ︎)
私はこの後も広樹の家の隅々まで全力で
探したが結局最後まで彼を見つけられなかった。
そして広樹の家を出ると目の前には私の母がいた。
「翔子ちゃん ︎」
私を見つけると走って抱き着いてきた。
「お母さん?何でここに・・・?」
「それは翔子ちゃんが大声でドアを叩いていたら
普通じゃないって思うじゃないの ︎」
「お、お、お、お母さん・・・」
「どうしたの翔子ちゃん・・・」
「ひ、ひ、ひ、ひ、広樹がいないよ・・・」
「うんうん・・・」
「おかしいの・・・どこ探してもいないの・・・
お母さん、広樹がどこにもいないの・・・」
「翔子ちゃん、辛いだろうけど・・・
広樹君は引っ越ししたの」
「み、みんなそう言うの・・・みんなで私を
騙してるの・・・?」
「翔子ちゃん」
「酷いよ・・・みんなで私を・・・騙すなんて」
「翔子ちゃん ︎」
母は私を更に強く抱きしめた。
「ッ ︎」
「泣きたければいくらでも泣いていいから ︎
現実を見て ︎お願いだから ︎」
「いや ︎」
「翔子ちゃん ︎」
「嫌なの ︎嫌なの・・・うぅ・・・」
「翔子ちゃん、いくらでも泣いていいよ」
「うわぁぁぁぁ〜 ︎」
私は母の胸で思っ切り泣いた。




私はこの日を一生忘れないだろう。

ーー私の世界が壊れた日を

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