私の世界〜「部活の後輩と付き合ってみた」スピンオフ〜

きりんのつばさ

失恋初日



広樹に彼女が出来た事を知った日はたまたま金曜日で
あったため、良くも悪くも2日間は広樹と会わずに済む
という状況が出来上がった。
私は夜散々泣いた後、泣き疲れて寝たらしい。
「朝だ・・・起きたくない・・・」
今までは朝起きれば広樹と何が出来るのかという
楽しみがあっだけど、今ほど朝が嫌な日は無かった。
今日は土曜日という事もあって学校は無い。
故に時間に気にしなくてもいいのだけど・・・
「でも、起きないと・・・お母さんが心配する」
そう思い、私は布団から出てリビングに向かった。

リビングでは母が朝食を作っていて
父がテレビを見ていた。
「あ、翔子ちゃん・・・」
母は私を見るなり心配そうな顔をしていた。
「おはよう・・・」
「今日は土曜日だから無理せずにまだ寝てていいのよ?」
「そうだよ翔子ちゃん。無理すると体に悪いから
無理しなくていいよ?」
母と父が私を気遣って言葉をかけている。
多分父は母から私が泣いた理由を聞いたのだろう。
知った上で私に優しく言葉をかけてくれている。
私は改めて両親に愛されていると思う。
・・・そんな両親を心配させるわけにはいかない。
「お母さん、お父さん、私は大丈夫だよ」
「翔子ちゃんがそういうならいいけど・・・」
「よし、翔子ちゃん ︎今日は美味しいオムライスを
食べに行こうか」
と私の父が言うと母は
「お父さん、いいアイデアじゃない〜 ︎気持ちが暗い時は
美味しいご飯を食べるのが一番よ〜」
ノリノリだった。
「って事で翔子ちゃんがよければ行くけど大丈夫かな?」
と父が聞いてきた。
確かに今は何かする気分にはならない。
でも、これ以上両親を心配させるわけにはいかない。
だから・・・
「うん、大丈夫だよ。行くよ」


そしてオムライスを食べ、次の日の日曜日も
特にする事も無く過ごして、遂に月曜日が来てしまった。
「やだ・・・起きたくない・・・」
学校までの道を1人で歩くというのも嫌だし
何よりも同じクラスで広樹と彼女を見なきゃいけない
という苦難がある。
でも・・・
「広樹を心配させる訳にはいかない・・」
あの日、一緒に行けない事を言われた際に広樹が
私を心配しているのが分かった。
私が大丈夫な事を彼に証明しなきゃいけない。
「とりあえず頑張ろう・・・」

いつもの様に着替えて、朝食を食べ家を出た。
今日から1人で登校しなきゃいけない。
といっても別に1人でいけない訳ではない。
私はそこまで方向音痴や寂しがり屋では無いし
というか1人には慣れている。
「ボッチを舐めないでよ、広樹」
と思い、自分を誤魔化すように勢いよく家を出た。
ただ・・・
「寂しい・・・」
1人で歩く道がこんなにも寂しいとは思わなかった。
いつもなら広樹が下らない話や面白い話をしてくれるが
今日からは1人で行かなければならない。
「これがあと2年続くの・・・?」
そう思うとあれほど楽しみだった高校生活が
一気に嫌な事に思えてくる。
あんなに短く感じた登下校の道がこんなにも遠く感じた。
その時、ふと目に桜の風景が入った。
「桜だ・・・」
何故かその時の私にはその光景が眩しかった。

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