童話集1

増田朋美

鳥の歌

私は、ほんのすこし眠らせてほしい、それだけのつもりだった。私は、TVをみながら、炬燵で横になった。すると、私は、やさしく何かにくるまれて、そう、母親に抱かれたような柔らかいものにくるまれて、空を飛んでいるような、何かに引っ張られてあがっていくような、錯覚を覚えた。
気がつくと、私は広い野原にいた。そこに、大きな木があった。そして、ひとつの扉があった。
好奇心の強い私は扉をあけてみた。中は、黄色い部屋だった。
ひとはいつか鳥にかわる
体を離れて、、、
細い、男性のこえだった。
こえのほうへいくと、白い肌の、長く尖った耳をした男性が、紙と鉛筆をもって何かかいていた。
「ようこそ。鈴木さん、ここは天界へいくにあたって、何かわすれものをした方がおとずれるへやです。」
「わ、わすれもの?って、わたし、もう亡くなったってこと?」
「そういうことになりますね。あなたは、いま、炬燵でねむりながら、なくなっています。」
「それはこまります、孫も就職してないし、娘はいそがしいし、娘の亭主はリストラとかにあって、すぐ
仕事はあったけど、最低限の賃金しかいただけないから、私がはたらかなければ。」
私は、いま、自宅でおきている問題を列記した。どっちにしろ、私がいなければ、娘たちは、どうしても、くらしていけない。まごは、高校を中退し、ひたすらに引きこもっている。うんともすんともくちをきかず、ひたすらになく。娘は、孫のそばにいるように医者からいわれているため、家をでられない。婿養子として、やってきた娘の亭主は、ひどくだらしがなく、サービス精神がない。私は娘の亭主をよくしかったが、亭主は、うるさい!としかいわない。
そんなじょうたいで、迎えがきたのだから、私は、とにかく現世にもどりたくてたまらないのだ。
「ねえ、あなた」
私は妖精にいった。
「お迎えはまだ、はやすぎます。わたしをもとにもどしてください。あのこたち、私がいなきゃ、やれないんですよ。」
「そうですかね。」
と、妖精は答えた。
「第一、ここは、現世でわすれものをしたひとがくる所でしょう?わたし、わすれものがおおすぎます。だから、もどしてください。」
「了解です。もどすのは簡単です。ただ、条件があります。」
「なんですか、それは。」
「あなたは、人間の姿にはなれませんよ。鳥の姿にしかもどれません。そして、あなたのご家族が、あなたをおぼえていてくれること。これは、必然です。」
「覚えているに決まっていますよ。わたしは、娘の大学の費用もはらったし、一生懸命そだてたんですから。早く夫も亡くしましたし、その分あたしは厳しくそだてたんたから。あの子だって、それは、わかりますよ。早く、あたしをもどして!」
「はい。にどと、こちらには、これませんけどね。」
妖精は指を鳴らした。
わたしは、目の前に自宅があるのをみてほっとした。しかし、むすめと孫は、どこにもいない。数分後、二人は、なにやら、大きな紙の袋に、たくさんの洋服をいれて帰ってきた。こんなにたくさん、どこでてにいれたのだろう。そして、孫は、小さなはこのような、携帯電話で、いつまでも、話をしている。娘の方はメールをうっている。そのうちに亭主も帰ってきたが、夕食は会社で済ませてきてしまったようだ。父親が帰ってきたにもかかわらず、孫はお帰りなさいともいわず、父のビール腹のことをからかったり、ハゲ頭と笑ったり、尊敬するような態度はとらない。むすめも、孫といっしょにわらっていた。みな、丑三つ時あたりまでおきていて、朝は、九時あたりまでねている。娘の亭主も、勤務は11時から、という理由でいつまでも、ねている。
たべものは、全て、レストランやコンビニ弁当で、一緒にたべることは、まったくない。そんな贅沢なくらし、私が生きていたときには、できるはずがなかった。どこから、その資金を手にしているのだろうか。
わたしは、娘が、ある預金通帳を頻繁に使うことをしった。
それは、わたしが、ささやかなれど、孫の結婚祝いにでもしてくれと、ためていた、お金だった。むすめは、それをつかっていた。さらに、私の桐だんすにいれておいた、私の着物は、すべてなくなっていた!
娘が、私の顔写真に向かって、こんなことをいっていた!
「おかあさん、長年あたしのことを良い子といってはくれませんでしたし、何をしてもみとめてくれませんでした。だから、お母さんにされてきたことは、絶対にしませんから!」
何て言うことだろう!わたしは、一生懸命やっていたつもりなのに。これが、私にくれた礼か!
わたしは、ほととぎすになってお前をよんでいる。愛していると。
ひとはいつか、とりにかわる、
体を離れて、、

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