チートなはぐれ魔王の規格外な学園生活

つくつく

9.反撃のための一歩

ベル「マオー。学校にいると思う?」
そうベルに問われた。質問の意味は十分に理解している。学校に魔族がいるかどうかだ。
答えはいるだ。
だがそんなことはベルも分かっている。分かっていて聞いてきたのだ。
なら、この質問の本当にベルが知りたいことは何だろう。
正直少しもわからない。分からないがー。
魔王「いても。俺とお前はそのままだ。大丈夫だ。きっと何とかなる」
そう言って、いつも学校で無防備な体勢で幸せそうに寝ている少女を慰めた。

数日後
亡くなった生徒のために黙祷を毎日のようにしていた。深い恐怖を植え付けられ、学校を休んでいる生徒も中にはいた。
そして、今日も隣で幸せそうに寝ている少女に目を向けた。それを微笑ましく思い、次に逆隣の空いている席に目を移動させた。
あれからエリカは忙しそうに動いていた。
1匹の魔族に好き放題され、責任を感じてないといいけどなと思いながら、窓の外を眺めた。

校長室
校長「いやぁ。悪いね。いつも来てもらって」
そう言って子供っぽい校長にため息をついた後
エリカ「それで何か分かったんですか?」
それに校長はふふと薄く笑った。
校長「実はね。死者の数が分からないんだ」
エリカ「えっ!?」
校長「まぁ。驚くのも無理はないが、最後まで聞いてくれ」
そう言って続けた。
校長「あれだけ切り刻まれ、顔を食べられた生徒もいた。そんなことされたら人数の把握は出来ないよ。この学校は狙われた事を考え名家がバレないように個人情報は自己管理でやってもらってるんだ。つまりー」
エリカ「…魔族に入られても特定は難しいと?」
校長「その通りだね。そういった事を考えての行動だったのかもしれないね」
相当にまずい事態だ。その考えが頭に浮かぶ。それが顔に出ていたのか。
校長「…事態の把握は出来たみたいだね。ここからなんだが、もし、仮に魔族が入ったとしたらマオ君達狙いの可能性が高い。魔族になったのがジャック君だからね。それを考えると一体どれほどのレベルの魔族なのか。いやぁ完全に後手だねぇ」
そう言いながら校長は、こちらの顔を見ると
校長「もしもの時は頼りにしてるよ」
と優しく言ってきた。
エリカ「はい!」
そう言ってエリカは出た。
彼女が出て行くのを見てから、校長は机に向け拳を振り下ろした。すると机はバキバキに折れた。
襲われたのが経験のない1年生ではなく、3年生であったならば被害はほとんどなかっただろう。そんな思いが頭をよぎる。しかしそんなものは人任せに過ぎない。まったく!
校長「つくづく自分の無力を思い知る!襲われた場所に私がいれば!」
挙句の果てにまだ幼い生徒に託さねばならない状況に陥っている。
そんな思いを抱えながら気分転換に外に出ることにし、校長室を出た。

廊下を早歩きで歩いて行く。自分が焦っているのが分かる。魔族のことならば彼らを頼るのが一番だと分かっている。しかし、それは彼女にとって屈辱でもあった。だが、今は私情を挟んではいられない。
そんな思いで廊下を歩き、教室の扉を勢いよく開けた。そして、目当ての生徒の前まで行くと
マオ「おぉー!どうした?エリカ」
エリカ「マオ!手を貸しなさい!」
勇者が魔王に助けを求める。そんなことはあってはならない。だが、それでも勇者は魔王に助けを求めた。
エリカ「一時休戦よ!」
これは反撃のための一歩だ。




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