THE. SCHOOL STORY
序説 2
 熱っぽい人がチラホラと見える。
季節は冬。どうやら、世間ではインフルエンザが流行っているらしい。
空は薄く白い。こんな日はあまり外に出たくない…のだが、親友が隣を歩いているので、その考えは会ってからすぐに頭から消えた。
「リクトー…お前も高校行くのか?。」
真  陸斗。彼の目は特殊だ。「全て」が見える。
普通見えないものも、それがなんなのかも分かる。
が、それは本人にとってはあまり良いものではないらしい。今も、特殊な眼鏡をし、見えすぎないようにしている。
「いくよ?ここでは高卒しておいた方が何かと良さそうだし。」
「だったら通信教育でよくない?。」
「…えーっと、おまっ、え、高校行く気ないの?。」
「得るものなくない?。」
「叶さんの願いがありながらか?。」
叶の願い…?そんなものは聞かされていない。なんの話をしているんだ。
「叶が高校に行きたいって言ったのか?。」
「えっ、言われてなかったの?。」
「そもそもここ一週間ぐらい会ってないしな。」
「あれ…おかしいな…昨日はもう言ったとか言ってたんだけど…。」
「…会いに行ってみるか。」
「今すぐかい?。」
「…いや、こっちから会いに行く必要はなさそうだね。」
 瞬きをしているうちに、街から人が消えていた。
誰も見ていない信号機はひとりでに色を変え、無人の車はその場で止まっている。
「珍しいね、後ろにいるなんて。」
 背後から、赤い気配。
叶がいる。
「優……、違うの、言ってなかったけど、違うの。」
 振り返ると、とても困った顔をした白髪の少女が立っていた。
赤い目は少し潤んでいて、目を細め視線をこちらに向けている。
「言いたくないことの一つや二つあっても問題ないって前も言ったろ。」
 微笑みながらそう言う。かつて、超危険因子だった彼女は自らそれを言い出せず、非常に悩んでいたことがあった。その時も、今と同じような顔をしていたので、今回もそういった案件なのかもしれない。
 「優、叶さんはそんな事を言えなくて困ってるわけじゃなさそうだよ。」
 横を見ると、眼鏡を外しているリクトがいた。彼でさえも眼鏡を外さなければ介入できない空間にいるらしい。そして眼鏡が無いせいで、僕の思考がバレている。
 「うーんそう言われてもなー…叶は些細なことは普通に言うし、思い浮かぶものと言ったら世界滅亡クラスの案件しか…。」
 こう会話しているうちも、叶は困った顔をしながらソワソワしている。
何を言えず、そんなに困っているのだろうかと思案していると、リクトはため息をし、叶に問いかける。
「あっ、そう言えば、叶さんは学校に通ったりするの?。」
「…えっ、あっ、…そ…その……。」
「なーに突然聴いてるリクト〜、そんなの」
「…行く。」
「えっ。」
「おっ!。」
   ………。
二人の視線が痛い。
そうか、そういうことか…。
流石にこれは、呑むしかない。
「わーったよ、行くよ!俺も行くよッ!。」
 なんだこの緻密に計算されなハメ技は。
伝わるだろうかこの感じ。
連日に渡り学校に通う系の話をチラチラと見せつけられ、挙げ句の果てに親友と半泣きの少女から誘われるわけでもなくただ「えっ、お前行かないの?」みたいな空気を作られたこの感じ…。
かすかに残る記憶だが、恐らくあのおっさんからも釘を刺されたような気がする。
「で、どこに通うんだ?叶は年齢的に中学二年生。俺たちは高校二年生だぞ?。」
「大丈夫、お前もよく知っている奴が、中高一貫の私学を経営しているらしいから。」
 と、苦笑いをしながら言う。その表情は、完璧なハメ技を決めた時の清々しい顔ではなかった。
 叶さんの方に視線を移すと、彼女は困った顔をしながらも喜んでいる時の色を見せた。
それを見て安堵し、瞬きをすると、世界は再び動き出していた。
眼鏡かけ直し、これでよかったのかと思案するが、別に真剣に考えねばならぬことでもない。
私は再び歩き始める親友の隣で、薄く濁った空を見る。
「まだ…空の方がスッキリしてるな〜…。」
「本ッ…と…なー…。」
僕は、これから始まってしまいそうな学校生活と、知り合いが経営している学校というところに不安を覚えながら、吐くようにして呟いた。
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