ドラゴン&メイド喫茶へようこそ!
第五話
「このお店って、昔から存在していたのかな」
『どうした、藪から棒に』
僕はいつも通りマスターと話をしていた。今日は天気も良いし、この前天気が悪かった分天日干ししておかないとね。それにいろいろと話したいことも溜まっていたし。
「このお店は、僕が生まれる前からあることは確かなんだよ。けれど、それよりも昔にあったのなら、どうやってお父さんとお母さんはこのお店を継ぐことが出来たのかな、って。それともお父さんとお母さんがここでお店を始めたのか」
『……成程。君はこの店の元祖を知りたい、ということだね?』
こくり、と僕は頷いた。
『……私が知っている限りでは、四百年ほど昔のことだよ。かつては私も人間だった。そうしてこのお店のマスターだったのだよ。君の名付けたとおり、マスターだった』
「ええっ? ほんとうに?」
『ああ、ほんとうだ』
「……それで? それでそれで?」
僕の頭の中は興味でいっぱいだった。
好奇心。或いは興味。いずれにせよ、その興味は途絶えるところを知らない。
そうして僕はいろいろと話を聞いた。
四百年前は、一人でお店をやっていたこと。
そのお店はたった一人でやっていたけれど、忙しいこともなく、日々平穏に過ごしていたこと。
そしてある日――一匹のドラゴンを拾ったこと。
◇◇◇
「ドラゴンを……拾った?」
『傷ついておったのだよ。そのドラゴンは。大方、ドラゴンを捕縛しようとした人間に傷つけられたのだろう。ドラゴンはずっとこちらを睨み付けていた。死にそうになっていたのに、まだ敵対心をもっていたのだ』
「ドラゴンは、どうなったのですか?」
『助けない訳がないだろう。そのドラゴンは、何とか助けることが出来たよ。何度も指を噛み千切られそうになったが、それでも、食事を与えて治療をしたところ、やっと敵じゃないと認識してくれたのか、私を味方だと思ってすやすや寝息を立て始めたのだ』
「そう……だったんですね。でも、その後は……」
『その後は……済まない。私も憶えていないのだよ』
「何をしているの、メイト」
僕は振り返る。
そこに立っていたのは――ティアだった。
そして僕が見ていたもの、その本を見ると、ティアは小さく舌打ちする。
「あなたは、知るべきではなかった」
「え?」
「あなたは、私たちの『楽園』を、知るべきではなかった。このボルケイノの、血塗られた過去を知らなくて良かった!」
ティアはぼろぼろと涙をこぼし始める。
突然何のことやら、と思ったが、マスターはティアに話し始めた。
『そうか、お前さんがあのドラゴンの娘……だったのか』
そして、ティアはゆっくりと、しかしはっきりと、頷くのだった。
『どうした、藪から棒に』
僕はいつも通りマスターと話をしていた。今日は天気も良いし、この前天気が悪かった分天日干ししておかないとね。それにいろいろと話したいことも溜まっていたし。
「このお店は、僕が生まれる前からあることは確かなんだよ。けれど、それよりも昔にあったのなら、どうやってお父さんとお母さんはこのお店を継ぐことが出来たのかな、って。それともお父さんとお母さんがここでお店を始めたのか」
『……成程。君はこの店の元祖を知りたい、ということだね?』
こくり、と僕は頷いた。
『……私が知っている限りでは、四百年ほど昔のことだよ。かつては私も人間だった。そうしてこのお店のマスターだったのだよ。君の名付けたとおり、マスターだった』
「ええっ? ほんとうに?」
『ああ、ほんとうだ』
「……それで? それでそれで?」
僕の頭の中は興味でいっぱいだった。
好奇心。或いは興味。いずれにせよ、その興味は途絶えるところを知らない。
そうして僕はいろいろと話を聞いた。
四百年前は、一人でお店をやっていたこと。
そのお店はたった一人でやっていたけれど、忙しいこともなく、日々平穏に過ごしていたこと。
そしてある日――一匹のドラゴンを拾ったこと。
◇◇◇
「ドラゴンを……拾った?」
『傷ついておったのだよ。そのドラゴンは。大方、ドラゴンを捕縛しようとした人間に傷つけられたのだろう。ドラゴンはずっとこちらを睨み付けていた。死にそうになっていたのに、まだ敵対心をもっていたのだ』
「ドラゴンは、どうなったのですか?」
『助けない訳がないだろう。そのドラゴンは、何とか助けることが出来たよ。何度も指を噛み千切られそうになったが、それでも、食事を与えて治療をしたところ、やっと敵じゃないと認識してくれたのか、私を味方だと思ってすやすや寝息を立て始めたのだ』
「そう……だったんですね。でも、その後は……」
『その後は……済まない。私も憶えていないのだよ』
「何をしているの、メイト」
僕は振り返る。
そこに立っていたのは――ティアだった。
そして僕が見ていたもの、その本を見ると、ティアは小さく舌打ちする。
「あなたは、知るべきではなかった」
「え?」
「あなたは、私たちの『楽園』を、知るべきではなかった。このボルケイノの、血塗られた過去を知らなくて良かった!」
ティアはぼろぼろと涙をこぼし始める。
突然何のことやら、と思ったが、マスターはティアに話し始めた。
『そうか、お前さんがあのドラゴンの娘……だったのか』
そして、ティアはゆっくりと、しかしはっきりと、頷くのだった。
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