アルソミトラ

夕宮 梓

2

これから、未来に向かって駆け抜けていく。 今はなんてすぐに消えてしまう。期待などして何になるのだろう。
過去に、俺たちは、天才子役と呼ばれ、世間から、いつも注目されていた。 でも、その幸せは、一瞬にして消える。自分を誰よりも一番だと思っていた。
小学校の頃には、世間的俳優だった。そして、同じ歳の子とよりも優れていた。成績も スポーツも一番以外は、取ってことがなかった。
でも、周りの子とは、違う世界にいた気がする。友達も一人も居なかった。傍には、誰 でも居なかった。 桜の花びらが舞う空。この頃の俺には、春を感じる余裕がなかった。仕事漬けの毎日がた だなんとなく過ぎていた。 時間は、1秒ずつゆっくりと流れていると思っていた。でも、私の時間は、人の何倍も早 く流れていた。
2・恐ろしい翼と能力
俺、神野 羽空(かみの はく)
今は、舞台照明の仕事をしている。
でも、十年前の描いていた未来は、こんなものではなかった。 3歳で、芸能界に入った俺、あるドラマの演技で、高い評価を受け、次世代のトップスタ ーになるとまで言われていた。 でも、その幸せは、長くは続かなかった。
東京の街にサイレンが鳴り響く 俺は、道路に寝転がっていたというより、倒れていた。 目が覚めたのは、朝日が、まだ 顔を出したばかりのころだった。
「ここは、」
体を起こし、マネージャーに聞いた。朝日が、カーテンに反射し、その光が、俺の目へと 入り込んでいた。
「病院だ」
マネージャーは、電話を片手に、そういった。
「どうして病室に?」
「昨日、街中で倒れたんだ」
ハンカチで、額を拭きながら、応えた。

コメント

コメントを書く

「恋愛」の人気作品

書籍化作品