ノベルバユーザー198133

序章

ミーンミン…

蝉の声が鳴り響く。
よくそんな風に言って蝉の存在を疎ましく思い、蝉を貶す人を見るが、普段人間だってそう聞こえているんじゃないかと思う。
例えば物静かなウサギとか、植物だってそう思っているかもしれない。そう思いながら、教室からウサギ小屋やら花壇やらを見てみると、途端に可哀想になったから俺は黒板の方に目を向けた。
担任の緒川が丁寧な文字で「夏休みの過ごし方」と書き、熱い気持ちを語っていた。緒川はそれなりにいい女だから、聞いている奴らも多かった。僕はそんな緒川が嫌いだった。

今度は窓際を見た。空はやはり広かった。
今日は夏らしい、爽快な水色が空を占めていた。それすらも疎ましく感じたので、僕は「可哀想な気持ちになれる」ウサギ小屋や花壇を見てHRを過ごした。
そんなことも露知らず、ウサギと花は静かに微笑んでいた。

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