お魚くわえたどら猫、何処へ

青キング

お魚くわえたどら猫、何処へ

とある民家からお魚くわえてどら猫が逃げ出した。
その民家の者は追うのを諦め、心残りで引き返した。
お魚くわえたどら猫、何処へ?
どら猫がまず向かうのは安心して食べられる場所だ。
さて、どこがいいだろう?
考えついた場所は自分の縄張りだ。
お魚くわえて歩き出す。
縄張りは空き家の軒下、何事もなくたどり着くが見知らぬどら猫が陣取っていた。
毛を逆立て威嚇する。
相手のどら猫もそれに対抗する。
相手のどら猫が飛びかかってきた。お魚くわえたどら猫は倒れ魚を口から落とした。
確かな憎々しさ、そしてこちらも飛びかかる。
激しい闘いの末、やっとのことで追い払うことができた。
その間に踏んだくられ、お魚に傷ができてしまった。
どら猫は悲しんだ。
それでも食べ物にありつけたことに、どら猫は嬉しかった。
お魚をむさぼり食う。
しかし安らかな時は続かない。
軒から下りてきた新たなどら猫に、お魚をかっさらわれる。
軽い身のこなしで塀を越えたお魚くわえた新たなどら猫を、お魚をかっさらわれたどら猫は追いかける。
しかし逃げられてしまった。
塀の上で途方に暮れる。
お魚くわえたどら猫、何処へ?
安心して食べられる場所の縄張りに向かう。
暗い路地裏に入り金網のゴミ箱の前に、座を占めた。
路地の奥から別の猫の威嚇する鳴き声。お魚をめぐり睨み合う。
そこにここぞとばかりにゴミ箱裏に隠れていたどら猫が、お魚を横取りしていった。
そのどら猫は力の限りに走り逃げた。
追ったどら猫二匹は、諦めて縄張りに帰っていった。
お魚くわえたどら猫、何処へ?
いがみ合っていたどら猫二匹を振り切って、安心して食べられる場所を探した。
側溝の沿道を歩いていると、空き家の塀の上にいたどら猫が突然飛び掛かる。
それを避けようとしてお魚を口から落とした。
お魚が側溝に沈んでいった。
飛びかかってきたどら猫は残念に思ったが、その道の中で、近くの民家から魚を焼いているいい匂いが民家から漂ってくる。
どら猫はその民家に踏み入り、縁側の七輪で焼かれている魚をくわえた。
この民家の者がどら猫がお魚をくわえているのを目にする。
どら猫は駆け出した。
民家の者はどら猫を追っかけた。












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