ビアンカ嬢の波瀾万丈異世界生活っ!!

葵里

久し振りの長兄上様(1)

時は経ち、私は本を読みながらいつのまにか寝てしまっていたみたいです。起きると太陽が隠れて空が青から赤に変わっていました。鳥の囀りも聞こえません。代わりに魔獣でしょうか?遠吠えが聞こえます。今は、夕方なのね。長兄上様が帰ってくるのにまだ時間がありそう。この本を読み終わらせてしまいましょうと黙々と読んでいる。外が徐々に暗くなってくる。

私が読んでいる本は、貴族の家系の本。現在、公爵家が4、侯爵家が3、伯爵家が5、子爵家が8、男爵家が12、準男爵が6ございます。我が公爵家は古く王家創立の頃からある由緒正しい家柄にあります。また、母上様は隣国の第1王女であり、父上様は現国王様の弟であるようです。ルベリオン公爵家へ養子に出されたそうです。まぁ、継承権争いなどゴタゴタがあったらしく父上様自らが望んで養子になったそうです。ルベリオン公爵家には女性しか生まれず、跡継ぎがいなかったらしいので丁度良かったのでしょう。こうして自分のルーツを確かめるのは大切なことです。

「お嬢様、マーサにございます。ノックをしたのですがお返事が御座いませんでしたので、失礼ですが入らせて頂きました。」
「あら?ノック音に気がつかなかったわ。それは申し訳ななかったわね、マーサ。」
「いえいえ。お嬢様ですから。さぁ、ご夕食の準備をしますよ。」

なんだか納得がいかないと思うが黙々とマーサはドレスや靴を選び始める。貴族は普段着るドレスと夕食用のドレスがある。普段着の方は動きやすいものでもいいのだが、夕食用は着飾る。親しき仲にも礼儀ありとの言葉があるように家族であっても礼を尽くすのが貴族社会にはある。他には、お客様が来た時用のドレスや婚約者用のドレス、夜会やパーティなどの正装用のドレスなどがある。現代日本人からすればとてつもなく面倒臭い。しかし、これが、此方のマナーであるというなら慣れるしかないだろう。

「マーサ頼むわ。それと、これを髪につけてくださらない?」

化粧台の引き戸からあるものを出す。
マーサに手渡したのは、花飾り。蔓がカチューシャを覆い、薄桃色の花にオレンジ色の花が交互に続いているデザインをしている。これは長兄上様に初めてお会いした時に自分の妹の容姿を想像しながら買ったんだと照れながらプレゼントされたものだ。今日長兄上様が帰ってくるならこれを付けて見せたいと思ったのだ。

「お嬢様、承知いたしましたわ。なら、髪飾りに合う様にコーディネートしていきましょうね。」

マーサは楽しそうに選び始める。今まで選んでいたドレスから変更させてしまうのは申し訳なく思うが、マーサは最近浮かない顔ばかりしていたからほっとした。
長兄上様は私にこの髪飾りをプレゼントしたことを覚えていらっしゃるのかしら?
目を瞑りながら優しい長兄上様を思い浮かべ、微笑んだ。

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