ニート 異世界で チート になる。

抹っちゃん

5話 初めての戦闘

堕落神が話し始めるとざわついていた人々がしっかりと前を向いた。
『力をつかっているとまず、姿が少し変わります。特に耳や髪の毛、眼の色が変わったり、尾や翅が生えるなどです。
その変化のことを 動物化 と言い、自分のステータスに動物の驚異的な体質、ステータスを上乗せすることを指します。
〈チェンジ〉とコマンドを言うことで 動物化 し、〈リリース〉で元に戻します。』

あ、さっせくしてる奴らがいる。でも、

「〈チェン...〉なんだよ?」

真似して〈チェンジ〉しようとしたカズキを止める。

「ほかの人間が敵になることも考えられる。手の内を見せるのはやめた方がいい。」

いつまで続くかわからないんだ。それにゲームだとはいえここにも死が存在する。魔物以外にも敵はまだいるのだから注意するべきだ。
カズキは俺の考えがわかったのか真剣な表情で頷く。

『 動物化 は魔力が続く限り効果を発揮します。地球に存在する通常生物の場合、1分で1減り、話獣の場合は1分で3減ります。そして神獣の場合、8ずつ減っていきます。

 動物化 はステータスの上乗せだけでなく、動物の生態からつくられた 技(アニマルスキル) が使えます。
これは使う度に魔力を別に必要量使います。
アニマルスキルはどのような場合のみに使うかは決まっていません。戦闘でも生活用でもなんにでも使うことは可能です。

力は、動物化状態で暮らしたり、戦闘したりすることでレベルを上げることが出来ます。
レベルが高くなるにつれ 上乗せされるステータスが上がったり、新しいアニマルスキルが手に入ります。
高レベルになるほど威力や実用性、必要魔力量が高まります。
レベル上限は100です。』

俺の場合、通常生物2     話獣1     神獣4    空欄1    なんなんだよな。
神獣が毎分8ずつ魔力を消費するけど、神獣だけ使うのでも8621000÷8だから......1077625分動物化していられる。時間になおすと約18時間だね。
うん。すごい機動力だね。 

あぁ、チーターになってしまった。

『力を更に得る方法は、何処かにある 空きユニット付与アイテム を見つける。または最大魔力量をレベル上げや専用ポーションを使って上げることです。
動物から認められれば〔アニマル・オーブ〕を貰えるでしょう。』

あっちにいっても貰えるんだ。ならあと1つは異世界でだな。
ほかの奴らも貰う気みたいだ。
俺の場合、空欄はもうあるから使えそうな動物を見つければいいだろう。

『これで基本最終講座は終了です。これより異世界への転移を開始します。転移先は駆け出し冒険者の町〔オリジナ〕周辺にランダムで配置されます。
服装は現地に合わせたものに自動変更します。』

ザワザワ

「ハルお姉ちゃん、手繋ご?カズキお兄ちゃんも!」

タクヤが小さな手で俺とカズキの手を握る。

「そうだな、もしかしたら一緒のところにいくかも知れねぇしな。」

カズキは ニッ と笑うと俺の手もとり、円になる。
そんな風に言ってくれるカズキやタクヤの手を俺はしっかりと握り直す。

ついに異世界か。
いっきに現実感が増す。

『転移を開始します。
あなたたちが向かうのはゲームのような異世界ですが、そこにいる人々は昔から住んでいた現地人です。彼らはこの企画とは関係のない人々だということをお忘れなく。
では、ご武運を、そして良き新たなる人生を。』


視界が真っ白になり、からだが宙に浮くような感覚。
そして引っ張られるような感じ。風に押されるようにやさしく、だか力強く。
白一色の世界に突如沢山の色とりどりのリボンが伸びてきて、なびくように、今までの世界に後ろ髪を引かれるように、真っ直ぐに伸びてゆく。
流されるように向かう先で、リボンの先端が全て一ヶ所に集まると、色とりどりの光が弾け、屈折し重なりあってゆく。
光のつくりだした丸いゲートを潜ると、温かい日の光と風が気持ちよい草原に俺は立っていた。



                                             ◆



風が吹く度に足元の短い青々とした草がゆれる。
青い空に鳥が飛んでいる。

異世界。ここは異世界なのだ。
地球がベースのたいして変わらない世界。
 
本当に来てしまった。ゲームやラノベの世界に。
あるはずのない空想の世界に。


空気に匂いがある。土の匂い。草花の匂い。

「こんな匂いがあったんだ...。」

俺のいた世界は科学の発達した世界だったからなのか、空気に匂いを感じられなかった。そんなの無いと思っていた。
ましてや、部屋に引きこもっていたから知らなかったよ。

この世界は剣や魔法が使われる未発達の世界だ。
だからこそ、こんな匂い、景色が美しく見えるのだろう。


しばらく眺めて気持ちを落ち着かせる。
周囲に人はいないからカズキたちとは離れてしまったようだ。
代わりに 、見るからに わたしは魔物です! と言っているかのような生物が一匹。
ゴムのトゲトゲボールがバランスボールサイズになったような緑色のやつ。
ブニンブニンと跳ねて移動している。
こちらに向かっているから戦わなけはればいけないのだろう。
飛び跳ねているくせに意外と速い。
おそらくあと二回で着くだろう。と思ったその時

ポーンっ!

なっ?!
一跳びで目の前まで跳んで来た。

ズドンっと着地する衝撃で地面が揺れる。
どんだけ重いんだよ!

驚いている隙に、先の丸いトゲでわき腹を突かれ俺は吹き飛ぶ。
地面に叩きつかれる。ぐえっ!
肺の空気がいっきに押し出され、むせてしまう。

「ゲホッ......!」

くっそぉ~。
視界に映ったトゲトゲボールにAR表示で[トゲボールスライム]HP50/50とでる。そのまんまかよ!てか、スライムかよ!

俺は自分のHPバーをみて悪寒が走った。
3/5。
地面に叩きつかれただけで残り3。2も減ってしまった。
防御力も低い俺は少しのダメージでも死ぬ可能性がある。まともにくらったらおそらく俺は死ぬだろう。

トゲボールスライムは威嚇するように膨らんでいる。

怖い。そう思った。

こいつは雑魚モンスターだろう。それは間違いない。
普通の人ならば倒せる相手だ。
しかし、俺は体力、攻撃、防御が一桁しかない。あるのは速さと魔力だけ。
んお? 
速さと魔力?

そうか、速さで回避に専念して、バカ多い魔力で動物化しアニマルスキルでダメージを与えればいいんだ。

よし、それでのりきろう。

「〈チェンジ〉!」

突如、体から収納の時のような光が弾ける。

「うぉ?」

体を見てみる。と、視界に白金色の長い髪が映った。
なんだこれ!?
振り向いてみると、太ももに届くくらい長いストレート。そして足元に垂れる二本の黄金色の紐みたいなやつ。
引っ張ってみるとつむじに近いところが痛いか、頭の上の方から生えているようだ。

トゲボールスライムは魔力に反応したのかいっそう大きく膨らみ始めた。

「えっと、スキルは......。」

〈ステータス〉を開き、確認する。


動物化  天竜Lv1  
属性  光・飛


アニマルスキル

閃駆(光)Lv1  消費魔力 (1~10)×20
魔力で(1~10)歩分を 一瞬で移動する。

ライトブレード(光・斬)Lv1   消費魔力(1~10)×10
光の斬撃をつくる又は武器に付与する。(1~10)に魔力を加減出来る。      

ヒール(光)Lv1    消費魔力 固定15
相手の体力を10回復させる。




この中で使えそうなのはライトブレードかな?
ヒールは自分には無理みたいだ、おしい。これが使えたら良かったのに。

トゲボールスライムがトゲを数本こちらに伸ばしてきた。
もう迷っている暇はない!

「〈ライトブレード〉!」

フォンッと音がして右手に薄い光の刃が30㎝ほど伸びる。
頼り無さそうだがこれでやるしかない!

迫ってきたトゲをライトブレードで切る。
スパッと切れた先端は離れたところにドサッと落ちた。
いける。
次のトゲも切り落としながら駆け寄る。
次々にトゲが襲いかかってくるがスピードで回避、ライトブレードで阻止する。

「やぁぁっ!」

俺の放った光の斬撃はトゲボールスライムを浅く切りつけた。
スライムは縮み上がるような反応をしたがそのHPは41/50でまだまだある。
対して俺のHPは3/5。
だが、動物化で向上するのはHP以外のステータス数値だけではなく体感や特性もだ。
次にどういう風に動けばいいのか、どこの部位で攻撃を受け流せば一番ダメージが小さいのか、いつアニマルスキルを使えばいいのか、それらがわかる。
だから、

「ここだっ!」

俺は速度を上げ、回り込んで突貫する。相手の隙は何故かこれだとわかっている。
俺の単純な攻撃力はこいつを倒すには至らない。だから、速度を上げ、全力の突きで貫通力を増させる。

「やあぁぁぁっ!」

ばしゅっ と音がして、スライムが真ん中から吹き飛ぶ。
突如、スライムのHPが0/50になり、俺は戦闘に勝利した。




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