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ニート 異世界で チート になる。

抹っちゃん

3話 露店街で

女みたいだなお前!
友達に言われた自分の嫌いなところ。引きニートの原点。忘れられない心の傷。
いつまでも自分にまとわり続ける言葉の鎖。
でも、

「異世界まで引きずっちゃクリアなんて出来ないよな。」

露店街に一歩踏み出す。

沢山の人々。
行き交う目線。

今まで避けてきた人だかりに、俺は混ざった。


                                       ◆



「らっしゃい。ドロップ確率と発見率の高いハトは残り二人分だよ!」

「テントウムシはいかが?運気が上がるよ!商売する人にはもってこいだよ!」

「イヌあと一人!早いもん勝ち!さあさあ買った買ったぁ!」

基本初期講習とやらが終わってから三時間ほどたった。
はじめは荒ぶっていた人たちも喚いても意味がないと理解したのか真剣に〔アニマル・オーブ〕を選んでいる。

俺の空き枠はあと二種類分だ。何か良さそうなのを選ぼう。


「お兄ちゃん、どこ?」

不意に辺りを見回す小さな男の子を見つけた。五歳も満たないだろう。こんな子どもまで巻き込まれたのか。

「どうしたの?」

しゃがんで問いかける。

「お兄ちゃんがどこかに行っちゃったの。」

男の子は涙を目に溜めながら答えてくれた。

「どんな人なの?一緒に探そう。」

「うん。」

俺は男の子に手を差し伸べる。男の子は一瞬見つめたあと、小さな手で俺の手を握った。

「名前は何て言うの?」

「たくや。お姉ちゃんは?」

うぐっ!
俺が女子に見えているらしい。確かにパット見女子ですけど。引きこもってて髪の毛を切らなかったからかな。長くなっててよけいに見せてしまっているのか。

「晴ゆ...。」

名乗ろうとして口ごもってしまった。

「へえー、ハルって言うんだぁ。」

俺の名前をハルと聞き違いしているみたいだ。まぁいいか。女子に見えているらしいから。

「うん。そうだよ。」

そこで安心するように笑って見せる。
慣れないからひきつってしまった。落ち着け、落ち着け。相手は子どもだ。

「お兄ちゃんの名前は?」

「かずき だよ。凄くおっきいの。」

大柄なお兄ちゃんか。それっぽい人に名前を聞いていけばいいだろう。

「どんな色の服を着ていたの?」

見える範囲の人々を見ながら更に尋ねる。

「黒だよ。」

お、大柄な人がいる。服は..白か。
またいた。あれは黒?

大柄な人はこの二人だけみたいだ。
二人目に当たってみよう。

「ちょっと行こうか。お兄ちゃん探そう。」

手を引いて人々の間を縫って歩く。
だか、二人目は藍色の服だった。

「違うみたいだね。ほかにいこう。」

たくやはうんっと頷くと、再び歩きだした。


                                         ◆

探しだして一時間がたった。
かずきという黒い大柄な男の子はまだ見つかっていない。
すべて露店街をまわってみたがそれらしい人には出会わなかった。入れ違いになっているみたいだ。
たくやは歩き疲れたみたいでさっきから俺がおんぶしている。

「あ。」

辺りをキョロキョロ見回している人がいる。それに大柄で黒い服。

「あの、かずきさんですか?」

間違ってたらやだな。人を前にすると緊張してしまう。
「えっ?そうですけど。」

かずきは太い眉毛が印象的な同い年くらいの青年だった。

なんだこいつ。そう顔に書いてある。
目線が俺に背負われているたくやに移ると、

「良かったぁ!捜してたんだぞ!」

かずきは安心したように はぁーっ と胸を撫で下ろした。かなり心配していたみたいだ。

「お姉さんが一緒に捜してくれたんだよ!」

かずきの足に抱き付いた たくや。よかった。

「ありがとう。はぐれちゃってもう会えないかと思ってたところだったんだよ..。」

「いえ...たくやくん、見つかってよかったね。」

「うん!ありがとハルお姉さん!」

俺の手を握ってじゃれついてくる。子どもってかなり癒されるんだな。知らなかったよ。

「ハルさん、本当にありがとう。」

...なんか名前を言うとき照れてたぞ?これ以上誤解されてもな......。

「どういたしまして。ちなみに男ですからね?」

それを聞いてかずきは えっ? と驚いた。

「男なのか...!?肌も色白だし女の子にしか見えなかった.....。」

はい。そうなんです。こんなですけどれっきとした男です。

「よく言われます......。」

かずきも苦笑いだ。そりゃそうだよな。


                                               ◆


なんだかんだで俺とカズキ(この世界の表記だと)は仲良くなった。もちろんタクヤもだ。

タクヤがまだオーブを決めていないそうなので一緒に露店をまわることにした。
売り切れも増えてきて余っている店を探すのも一苦労だ。

「一人限定のユニークオーブだポヨ。誰か買って~ポヨ。」

謎の語尾にポヨを付けて呼び込みしているのは金色の水溜まり。
たまにドロッと動いている。

「防御力は神のお墨付きだポヨ。誰かボクを選んでポヨ~。」

ぐじゅぐじゅ蠢く黄色いゲル状態の謎生物に人々は完全に引いている。

「うえっ、なんだこいつ。」

ドン引きだ。

金色の水溜まり(もうポヨポヨでいいか)は必死で呼び掛けるが誰もが興味を持ちやがて蔑んで去っていく。

「誰かぁ~、ボクを使ってポヨ~っ!」

アピールなのか 、いきなり宙を塊になって飛び跳ねるポヨポヨ。

「?」

突然、ぎゅっとパーカーの裾を引っ張られた。

ずっとポヨポヨを見ていたからか、カズキとタクヤは他の店を見てきたらしい。

「ハルお姉ちゃん!カンガルーにした!どお?」

「うん。いいと思うよ。」

誉めてもらいたがってるみたいだから頭を撫でてあげる。凄く嬉しそうだ。

さて、このポヨポヨはどうしよう?
悩んでいるちょうどその時

ゴーン ゴーン ゴーン

と鐘の音が響いた。

「誰でもいいポヨ!誰かぁ~っ!」

ポヨポヨが触手みたいなのを必死に伸ばしてくる。
ひとりっていうのは寂しいものだ。俺もそれはわかってる。
だからこそ、ポヨポヨにニートの俺が重なって見える。

「誰かぁ~!」

あーもぉ!!!

俺はガシッとそれをつかみ尋ねた。

「俺が使ってやるよ。いいな?」

ポヨポヨは はっ とこっちを見ると

「本当ポヨ?!」

と、嬉しそうに了解した。

「俺も似たようなもんだし、同情してやる。」

視界が白く染まる間際、俺の体にポヨポヨの〔アニマル・オーブ〕が取り込まれた。





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