零から始めるスカイ♡ラブ

井手 健

1.好きなことして生きてく

 ブルッ‥ブル‥ブルルルルルル!!!

 「ウヒョー、かかったかかった!さすがアポロだ馬鹿力!」

 「ねえマーブ!馬鹿力やめてよぉ!私一応女の子なんですけど!」

 二人の怒鳴り声と、けたたましい星型エンジンの爆音とが夜明けの密林の滑走路にこだまする。

 二人の名はマーブルとアポロ。両親共に元アメリカ合衆国国民であったが、数十年前の悲劇により国は消滅。今では国籍不明のまま旅を続ける毎日を過ごしている。

 マーブルは、165cmぐらいの平均的は身体つきの男性。ブラウンのボサボサヘアーに、気の強そうな顔つきでメカの操縦がいかにも好きそうなやんちゃそうな少年である。繊細な操作系や、メカの調整などを務める。アポロにはマーブと呼ばれている。

 アポロは、160cm程の一見すると平均的な身体つきだが、かなり筋肉で引き締まっている褐色肌の女性。髪は金髪でポニーテールにしている。目はおっとりとしていて会話もゆっくりしている。主にクランキングや部品の交換などといった力作業を請け負っている。

 二人は「零戦」と呼ばれる九七式元艦上攻撃機を所有している。

 零戦のエンジン始動はクランクを人力で回し、力技で掛けるもので、それは相当に重く、大の成人男性をもってしても大変なのである。それを朝飯前にこなしてしまうのがアポロの凄いところだ。

 だが、それだけでは足りないのだ、いくらクランキングしても、エンジン始動に適切な混合気を入れなければならない。それをするのがマーブルの役目である。

 「ねぇマーブ?今日はどちらまで?」

 「もちろんどっかまでだろ!」

 生産性のない話で、少しばかりお互いに意思表示をする二人、これも朝の二人の日課になっている。

 やがて朝日が半分に差し掛かったところで、アポロは身軽な移動で飛行機の後部座席を陣取る。

 「今日もよろしく!運転手さん!」

 「それじゃあ、張り切って参りましょう!!」

 星型エンジンが一斉に唸りをあげ、二人+荷物一式を入れても2トン強の軽量な機体は、滑走路を僅かな距離で軽やかに飛び立ち、密林にある滑走路を後にする。
 

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