始祖の竜神と平凡の僕。

深谷シロ

Ⅵ.夕食リポートと狼人種の村

さぁさぁ、料理のお時間です。今回紹介するのは次の三点。どれも素晴らしい品となっております。是非お立ち寄り下さい。


まずは大鹿肉のシチュー!これはかの竜神すらも舌を巻く絶品となっております!大鹿肉も程良い噛みごたえ。野菜も程々に入る事で栄養満点のシチューになっています。


次に紹介するのはこの品。キノコと蹴兎キックラビットのガーリックソテー!キノコと良質の蹴兎キックラビットの肉をガーリックで炒めることによって香りを引き立てました。香ばしく美味しい。この二点が売りとなっております。


続いてこちらの炭酸飲料水。只の炭酸飲料水ではありません。魔力を回復する炭酸魔力水なのです。これは非売品の品なので特別な一品となっております!シュワシュワと飲み味最高!皆さんも一杯いかがですか?


最後にデザート!バニラアイスです。バニラが街道近くに生えていたため採取し魔法によって加工しました。完全手作りの品です。甘い味が最高ですよ……!


「何やってるの?」


「べ、別にぃ?」


こっちは料理リポートをやっているんだ。邪魔しないでほしいね。君は食べることに集中したまえ。さて、続きを……


「何やってるの?」


「な、何もっ!」


しょうがない。これで料理リポートは終わりか。もうちょっとしたかったのになー……なー……なー……。


アデルの思いは心の中でこだまするのであったが、それを知る者はアデル一人だった。


「なんでアデルの料理は美味しいの?」


ルカはアデルに尋ねた。アデルの料理は都市にあるような料理店では食べられない味だ。特別な味、という訳では無い。美味しいのだ。料理店を出せば大繁盛すること間違いなし。そのレベルで料理上手なのである。


アデルが料理が得意なのは理由がある。アデルの昔の旅仲間から教えてもらったのだ。その旅仲間は王宮に仕える料理長だった。食材を求めた旅の途中でアデルと知り合ったのだ。二人は意気投合し、アデルはその旅仲間に料理を教わった。


その旅仲間による料理道は長く険しいものであったが、懸命な努力によってアデルは一年の修行の末料理道を極めた、という短いお話である。


ルカもルカで料理ができないという訳では無い。実際料理は人並みに出来る。人並みと言ってもルカは人では無いが、人の身体になって数十年も経っているルカは料理も手馴れたものだ。それでもアデルには遠く及ばなかった。


竜神も舌を巻くかの料理を食べている竜神ことルカはアデルに笑顔を向けていた。何か言っているがそれは食べているため、全く分からない。よってスルーしている。とにかくルカは次から次へとシチューを口に運んでいる。


アデルとしては匂いに魔物が釣られないかと心配であった。この危惧は違う形で来ることとなる。


「あれは誰だっ!」


アデルは近付く姿に短剣に手をやった。しかしコンパスが反応しない。コンパスは通常敵意を持った魔物に対して反応する。だが敵意の無い魔物や魔物以外の生物には反応しない。この場合は後者のようだった。


「ルカ……分かるか?」


「うん、あれは亜人。狼人種ウルフヒューマンみたい。」


狼人と言えば某御伽噺の満月の夜に狼になる狼男が有名だが、狼男自体は狼人種に分類される。しかし、狼人種は別に満月の夜に狼になったりはしない。あくまでも御伽噺である。


「子供か?」


匂いに釣られたのは狼人の子供三人であった。どうやら近くに集落があるらしい。森の奥で煙が上がっている。この煙は料理か何かだろう。料理の待ち時間にこちらに釣られたのか。


「いる?」


釣られた子供達にルカがシチューを見せると、子供達は目を輝かせた。どうやらお腹が空いているらしい。まだ食べていないんだな。ルカにアイコンタクトを送る。察してくれたようだ。皿にシチューをついで、子供達に渡した。


「美味しい!!」


どうやらお気に召したようだ。それは良かった。ルカも子供達の表情を見て微笑を浮かべている。子供好きなのかもしれない。もう少し子供達と話したいような様子だが、今は夜だ。子供達を家から遠ざけておくのはあまりに危険である。


「ルカ、もう夜遅い。送っていってあげよう。」


そこで僕らは子供達を送り届ける事にした。子供達が森の中を案内し、僕らはその後をついていく。元気な子供達だなぁ……。


アデルが子供の頃はあまり外で遊ばず、家で本を読む。そんな子供時代であったため、外で遊ぶ子供達の気持ちは完全に理解出来る訳では無いが、少し分かるような気もしていた。これが友達というものなのだろう。アデルには旅仲間はいたが、友達あるいは親友と呼べる人がいなかったのだ。


二人が子供達の村に着く頃には外は完全に暗くなっていた。村は意外と広かった。狼人の姿がチラホラと確認できる。そのまま子供達に付いて行くと一軒の家の前に来た。


「ここだよっ!」


子供達に続いて家に入ると、中は食事中であった。やはり街道から見えたあの煙は料理の火の煙だったらしい。食事前に食べさせたが大丈夫だろうか。


「すみません、この子達に少しシチューを分けてあげたのですが、大丈夫だったでしょうか?」


「に、人間っ!」


……どうやらまだ帰ることは出来ないらしい。僕は狼人の説得を始めることにした。

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