始祖の竜神と平凡の僕。

深谷シロ

Ⅴ.大事で大事な食料確保

僕とルカは旅を始めた。旅の理由は?そう問い掛けられれば、僕はこう答えるだろう。


「旅に理由なんて必要なの?」


僕はこの旅に理由付けは必要ないと思っている。旅は旅だ。旅をしたいと思ったから旅をしている。それだけでいいじゃないか。それに理由なんて必要ない。……そんなこんなで僕らの旅は始まった。



「ルカ。まずはどこに行く?」


「……当年は国内。」


ルカは相変わらず口数が少ない。少し前までは饒舌だったような気もしなくもないが、今はこの通りだ。国内と言ってもこの国は広い。僕らが今いるのは国の南方地域。その辺りは辺境の地域とされ、郊外都市とも呼ばれる。王都などから実力者が休暇目的でよく訪れる。


僕らが目指したのは東方地域である。東方地域は王都こそ遠いが、第二の王都と呼ばれる都市がある。商業が栄え、海に面した都市だ。また漁業が盛んな都市となっている。


南方地域から東方地域へ行く時に最もメジャーである街道を僕らは今歩いている。僕は短剣を腰に下げ、防具とマントを着けている。ルカはマントのみで武具防具は着けていない。竜神だから必要無いだろうが。


「そう言えばそのマント何?」


早速話題になった。ルカと森で再会した時から薄々勘づかれてはいたのだ。マントも指輪も。コンパスは指輪という名の〈アイテムボックス〉に収納していたため、気付かれずに済んだのであるが、マントと指輪はそうはいかない。ずっと睨みつけている。マントと指輪を。


「ハハハ……。マントは旧友に貰った魔道具アーティファクト。〈琥竜ノ鎧〉って言うんだ。すごく硬い。」


「……琥竜って聖竜。竜神の次に強い。」


「解説ありがとう。」


ルカは竜神だからだろう。博識である。これで眼鏡を掛ければ……書店にいそうだな。想像したら少し噴き出しそうになったな……。


しかしルカはマントの説明を終えても不服そうだった。指輪も説明しろ、という事か。


「はぁ……この指輪?」


顔と胴体が離れそうな勢いで首を振るルカ。……何回頷くんだ?まあまあと落ち着かせると僕は説明する。


「これは〈アイテムボックス〉。量に制限はない。無限に収納出来る。」


するとルカは何か考えているようなポーズを取った。右手を顎に当てている。そして閃いた、とでも言いたそうに顔を輝かせた。


「分かった!」


あ、口でも言った。そして両手を掌を上にした状態で皿の形にした。何かを念じているが、人間には理解できない言語だった。恐らく竜族言語。古代の言語である。それを高速で詠唱しているらしい。相変わらずの高スペック竜神のようです。


暫くすると掌の近くの魔力が凝縮して何やら形作った。……あれは指輪?まさか……どこまで高スペックなんだ、竜神は!


「……人目見ただけで全く同じ物を作るとは。それも魔法を付与してある……。」


ルカは僕の指輪と瓜二つの指輪を作り出した。当然アイテムボックスとしての役割も果たしている。それをルカは指に付けた。お揃い、だ。


「へへ~」


どうだと言わんばかりに指輪を見せつけてくる。ルカの笑顔は魅力的ではあるのだが、正直言うと……ウザイ。適当に「ああ、凄いな。」とあしらっておいた。ルカは不満そうだったが。


それから僕らはまた歩き出した。いや、ルカの指輪作成中も歩いていたのだが、歩くペースを戻したのである。街道は先が見えない程に続いている。周囲は森。偶に魔物が出てくる事があるらしいが、それはかなり稀なケースのようだ。現に僕らはまだ見かけていない。


二人が歩いていると何かの看板が目に付いた。同時にコンパスが反応し始めた。魔物だ。看板に近付くにつれてコンパスの反応は大きくなる。魔物の数は一体。距離は看板までと同じ長さ。魔物の種類は……擬態鼠ミミクリーマウス。どうやら看板に擬態しているらしい。人間慣れしているな……。既に被害者がいるのかもしれない。


「ルカ……」


「分かってる。」


僕は一定の距離を取って立ち止まった。あまり近付きすぎると襲われる為だ。五メートルほど離れているから飛び掛ってきても余裕で魔法を放つ隙はあるだろう。詠唱を開始する。


「【消え去れ、気となれ】【ヒートヘイズ】。」


上級魔術。火魔法が一つ【陽炎】の魔法。春、夏の陽炎のように気となって対象を消え去る魔法だ。正体は超高温で肉体を蒸発させているだけなのだが……。擬態鼠ミミクリーマウスは一瞬のうちに蒸発した。


「あっ……食料が。」


「あっ……。」


今気付いた。そうだった、別属性の魔法で攻撃すれば肉として食べる事が出来たのだ。完全な選択ミスであった。次こそはしっかりと仕留めなくてはならない。


「次は蹴兎キックラビット。中距離からの飛び蹴り攻撃に気を付けて。」


すぐに次の魔物が見つかった。これは上々だ。魔物の肉としては美味しい部類に入る。まあまあ高値で売ることが出来る。ルカも完全に食料としてしか見ていない。既にルカが森で手に入れた魔物達の食料はあるが、更に夕食を豪勢にするために済まないっっ!!


「【切り裂け、風の刃よ】【ウインド・エッジ】!」


風の刃が蹴兎キックラビットの首をはねた。頭が飛ぶが、この部位は美味しくないためいらない。焼いて処分する。初級魔術で焼いた。急いで血抜きを済ませる。別にここで魔物とやり合いたい訳では無いので血抜きは早めに。僕は慣れてるし、ルカは竜だ。どちらも血抜きには慣れている。僕らは早めの夕食につくことにした。

「始祖の竜神と平凡の僕。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く