この''ゲーム"の中で生き抜く

ノベルバユーザー196386

第1話 『ゲームの世界』

カチカチッ、カチカチッ
部屋の中に、PCのキーボードを叩く音が響く。現在時刻は午前4時。久しぶりに、ゲームにのめり込んでしまった。いつぶりだろうか、こんなにも熱中できるゲームを見つけたのは。

「もう4時…寝るか…」

明日、というか今日は学校だ。せめて少しでも睡眠をとらなければ。俺はベットに寝そべると、1分も立たないまま眠りに落ちた。






──別の世界に興味はあるか──






誰の声か分からない。なんだ、この違和感…脳内に直接…話しかけてくる…





ガバッ!
違和感から目が覚めた。

「……ふっー……何だったんだ、あの言葉…」

少し、考えた。前にテレビで、テレパシーを使う人がいる、と見たことがある。その類かと思ったが、そんなものは実在するはずないので、流石にそれは無いなと考えた。ちらりと時計を見ると、時刻はもう午前7時過ぎだった。そろそろ幼なじみのやつが家に来るので、学校の支度をしなければならない。もうあの違和感と言葉の意味については、考えないことにした。

ピンポーンピンポンピンポンピンポーン
「早く出てこーい!!学校行くぞ!!」

相変わらずうるさい。朝からいっつもこんなんだ。

「今行くから、ちょっと待ってろ!」

「こっちはもう10分待ってんだよ!」

「あーはいはい」

なぜこんなにうるさいのだろう?
そんなことを考えながら、玄関を開けた。

「待たせたな、玲奈」

「遅すぎなんだよ、斗真は!何時まで起きてたの?」

「あーっと…4時くらい?」

「遅すぎる。もっと早く寝ろ!」

と、いうようないつもどうりの会話が始る。柳川 玲奈 [やなかわ れな]幼稚園からの付き合いで、まぁ色んなことでお世話になっている存在。たまに、中身は男なんじゃと疑ってしまう行動も起こすが、れっきとした女だ。

「じゃあ行こっか!」

何故こんなにも一瞬で雰囲気が変わるのだろうか。よく分からん。

「おう」

鍵を閉めたことを確認して、学校へと向かった。




〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜





「やっと終わった…」

正直いって学校は、あまり好きじゃない。勉強は嫌いではない。んーなんて言うんだろう、まー、なんか苦手なのだ。

「とっとっと帰って、続きする…か…」

ゾッ…
な、なんか後ろから冷たい視線が…!

「今日はあたしと遊ぶ約束してたよねー」

ジトーっとした目で、玲奈がこっちを見ている…

(忘れてたなんて言ったら、絶対殺される!)

「そ、そうだったな!わ、忘れてない!忘れてないから!」

「それならよしっ!」

(あ、あぶねー!!完全に忘れてた!)

俺と玲奈は、昔からの流れ的な感じで毎週水曜日は一緒に遊んでいる。まぁ、カラオケだったり買い物に付き合わされてるだけだが…

「買いたい服があるから、NEONに行くよ!」

「了解」

完全に手下感溢れている。


買い物が終わった。案の定俺は荷物持ちだった。

「今日はありがとね!またよろしく!」

今日"は"?"また"?なんか変な感じになりながらも、玲奈が満面の笑みを浮かべてくるから

「お、おう」

としか返せなかった。


帰宅している途中、今俺がハマっているゲームの話題になった。玲奈もこう見えてけっこうゲーマーなのだ。

「今俺がハマってるのは、《ジャッジメント・クエスト12》。なんと、シリーズ初のオープンワールド!!やっぱオープンワールド最高!!なんと言っても、しんきの」

「そのくらいあたし、知ってる。してるもん。」

「ですよねー」

「とーまは職《ジョブ》は何にしたの?」

「俺は剣士にしたよ。やっぱり使いやすいし。そういう玲奈は?」

「あたしは弓使い。遠くからメッタメタにするの楽しいし!」

(やっぱこの女こえーーっっ!!)

そんなことを話しながら、分かれ道に着いた。いつもここで玲奈とは別れる。

「んじゃまた明日ね~」

「おう、またあし…た…」

──別の世界に興味はあるか──

また同じ言葉…なんで思い出したんだろう。

ズキンッ!
急に頭が痛んだ
この感じ…朝と同じ…頭に直接入ってくる感じ…

いや、それ以上の違和感!なにか来るっ!

「おーい、とーまーどうした…」

「伏せろ!!」

俺は、玲奈を抱えて、道路に倒れ込む

「キャッ!ちょっ…なに…!」

直後、頭上を何かが通りすぎた。その何かは、電柱のてっぺんに止まった。

「さぁ、瀬端斗真、貴様の答えを聞かせろ。」

「何の事だ。その前にお前は誰だ。」

「えっ、とーまの知り合い?」

「んなわけねーだろ!なんで名前聞いてるのに、知り合いなんだよ!」

「あっそうか」

「我が名は、No.14。貴様をゲームの世界に招待するためにやってきた」

「別の世界っていうのは、ゲームの世界ってことか?」

「そうだ」

「どんな世界だ」

「自分の目で確かめろ。我は貴様の答えを聞きにやってきた。」

なるほど、こいつはただ俺がゲームの世界に興味があるか知りたいってわけだ。だが、なぜ俺のとこにこいつが来た。別のやつでも良かったはずだ。しかも、今は玲奈がいる。下手に答えるわけにも行かない。

「もし興味があると言ったら?」

ゲームの世界ならば、興味はある。だが、こいつは恐らく俺にテレパシーを使った。何をするかわからない。

「貴様をゲームの世界に連れていく。」

「!?」

訳が分からない。所詮ゲームはゲーム。画面の奥のプログラムだ。そんなとこに入れるわけがない。

「ねぇあたし訳わかんないんだけど」

ご最もの意見だ。

「ゲームの世界、か…。そんなものあるはずねーよな。」

「ゲームは所詮プログラム。人間が入れるわけないよ」

「だよな…」

あるわけがないって分かってる。でも、ほんとにそんな世界があるのなら、俺は行ってみたい。あいつの、興味があるかないかって、もしかして…

「なぁNo.14」

「なんだ」

「連れてってくれるのか?その世界に」

「貴様が望むなら」

「ちょっと、とーま!まさか!」

ニヤリ
俺は今まで見せたことがないような不敵な笑を零した。

「No.14!行ってやるよ!ゲームの世界ってやつに!!」

「とーま本気なの?!」

「ああ、こんなチャンス二度とないぜ。簡単に言えば自分がゲームキャラだ。きっとなんでも出来るぜ。ゲーマーなら行かねーやつはいねーだろ。」

「承知した。貴様をゲームの世界へ転送する。10秒前」

「ちょっととーま!決断が早すぎるよ!」

8秒前

「ゲームの世界に行けるチャンスだ!逃してどうする!」

「……わかった、あたしも行く」

6秒前

「とーま1人じゃ不安」

「えっ!?」

「とにかくつれてって!!」

「えーーーっっ!!!」

3秒前…

「行くのは俺だけでいいって!」

2秒前…

「あたしもゲーマーだもん!」

1秒前…

「あーっもうどうにでもなれーーーっっ!!!」

「転送!!」

一瞬にして、足元の感覚が消えた。唯一感じるのは、玲奈の体温だけだ。これから俺はどこに向かうのだろう。どんな世界が待っているのだろう。ゲームならクリアがあるはずだ。そこまでたどり着いてみせる。なぜだか急に睡魔が襲ってきた──



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「フゴッ!」
盛大な鼻づまりで目が覚めた。
風が気持ちいい。空気が澄んでいる。ゆっくりと体を起こし、周りを見回した。

「ここは、どこだ…」

「うーん」

隣に玲奈がいた。

「とーま…おはよぉ。」

「おはよう…」

「って、ここどこ!?」

まぁそりゃそうなるわな。目が覚めたら知らない草原に寝そべってるんだもん。とりあえず、昨日の記憶を辿ってみた。学校が終わって、玲奈の買い物に付き合わされて、No.14に出会って…そうだ、そうだった!

「ゲームの世界…」

「えっ、ここが…ゲーム…?」

「ああ、恐らくそうだ。No.14によって、ゲームの世界に飛ばされたんだ…」

「嘘…現実と全く一緒じゃない!」

風が吹く、草木や水面が揺れる、鳥が飛ぶ…玲奈の言うとうり、現実世界そのままだった。

ザッザッザッ…

その時、後ろから何者かが現れた。

「ようこそ、ゲームの世界《エトセトラ・ワールド》へ」



            第1話 〜完〜

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品