俺の右手には力が宿っているのだが厨二病だと思われる件

清水 裕斗

エピソード16:忌子??



周りから焼けた様な匂いがし、庭だった場所には草一つ生えていない

気がつくとツンっと鼻につく鉄が錆びた様な生々しい匂いがした。

目の前には僕を庇って亡くなった両親がいた。

とても大切な、両親モノを僕は失った。

全ては奴等の所為だ……僕の日常を壊した奴等の所為だ

だが、、、こんな事が起こったのも全部自分の所為なのではないか?

僕には特殊な能力があると言っていた

僕がいなければ両親は死ななかったのではないか?

そんな不毛な事を考えている内に僕は死ぬのだろう

だんだんと足音が近づいてくる

僕も両親の様なモノになるのだろうか?

そう考えた途端、僕の身体は震え上がった

嫌だ!死にたくない!何も変えられず死ぬのは嫌だ!

力が、、、力が欲しい……

だが、その想いとは裏腹に斧が泉に振り下ろされようとした。

僕は、、、、まだ、、、死にたく……

首から下の感覚が無くなり、痛みよりも喪失感という違和感が泉を襲った

だんだんと痛みが込み上げてきて体温が下がっていく事を感じる

そして僕は死んだ


ーーー筈だった………

泉の記憶が途絶えた瞬間、泉の全身から黒いオーラの様なものが現れた。

そしていつのまにかはその場に立っていた

首には先程、斧に切られた違和感があるが
傷は消えていた。

「いたぶってやるから………楽しめよ」

と泉は不敵な笑みを浮かべ、そこにいた連中を皆殺しにした。連中は皆一回では殺されておらず初めに足をおられ、落ちていた斧を使って四肢を切断し、最後に首を切られ、殺されていた。

「俺以外の人間は皆殺しだ」

と泉は呟いた。








「………んみゃぁ」

と朝の気配を感じながら、泉はふやけた声を漏らす。
泉はかなり朝に弱い。鉛のような眠気にまとわり付かれ、意識の半分は、まだ夢から這い出せずにいた。

薄く開けた瞼、ずっと眠りの闇にあった視界は、暗いままだ。そして、

「んにゅー………?」

腕の中に、柔らかな温もりがあった。
顔も柔らかいものに包まれている感じで、とても気持ちが良い。

まるで何かを抱きしめている感じだ。全身でしがみ付く様な体勢で泉はぴたりと身を擦り寄せていた。

言い知れない、謎の安心感があった

何だろうか、と泉はぎゅっと深く抱きしめ、その感触を確かめる。

「んっ、、、あっ、、」

びくん、と腕の中の何かが震えた。
何か聞こえた気がしたが、意識にまとわりつく眠気のせいでよく分からなかった。

顔にある柔らかく弾力的な、丸みを帯びた幸福感。
泉はそれを無意識に追い求め、顔を埋めていく。

「ふふっ、、、赤ちゃんみたいですね」

そしてその何かに手を伸ばす。丸みを帯びた、手に吸い付くようなしっとりとした手触り。

その正体をを確かめるように、むにむにと指と掌で弄ぶ。すべすべと柔らかな感触が心地良い。何かが、悶えるように身をよじらせた。

「あっ、、、そこは、、、ダメですよ、、んっ、、泉様、、」

自分の名前を呼ぶ声。よく弄んでくる女性の声が聞こえてくる。………あれ?

その幸せな感触を味わいながら、視線を上の方に移した。

本能的な幸福感に浸りながら、泉の視界はようやく焦点を結んでいく。

「ん……にゃ?」

そにには艶めかしい吐息を漏らしてる女性の顔があり、それは吐息のかかりそうな間近にあった。

薄水色の髪を伸ばした、清楚な美貌の娘である。

「み、深雪、、さん?」

「朝から、、激しい、、ですね、泉様」

困ったような、しかし満更でもなさそうな苦笑いを浮かべて、碧色の眼差しで泉を見つめていた。

「今日も、とても良かったですよ、泉様……」

「ほえっ?何が?ねぇ、何が良かったの!??」

と泉が呆けた表情で訪ねる。

「そんな、恥ずかしい事…………言えませんよ」

恥ずかしい事って何!?

深雪の着ていた薄手の寝間着ははだけており、胸元がほとんど露わになっていた。

「よく、分からないけど………
なんか、迷惑かけてるんだったら深雪は一人で寝ていいよ、いや、寝てください」

と泉は懇願した。
今まで、メイドとしての嗜みという事で渋々一緒に眠っていたがそんな嗜みなどある訳がないと泉は考え、泉はそう懇願したのだ

だが、そんな事は深雪には何もこたえて無いようだった。

「大丈夫なんですか?夜になると恐ろしいモノが
出ますけど」

「お、恐ろしいモノ……」

「そうですね、例えば……」

と深雪は考える素振りを見せた

「幽霊ですかね…?」

その言葉を聞き泉は震えた。
泉はいつもは身体に似合わず、「社会が無ければ働く必要もねぇから」と言っているが、こればかりは子供である。

「それと、虫も」

と深雪が更に追い討ちをかける

泉は更に身体を震わせ、涙目になっている。

深雪は泉が苦手なものである幽霊と虫を出す事によって泉を追い込む

「あっ、虫型幽霊!」

と深雪は泉の後ろを指差して言った

「虫型幽霊!?えっ、、、ほほんとうですか?」

と泉はプルプルと震えている

「ええ、そうですよ。あっ、泉様の肩に虫型幽霊の足が………」

と深雪はしれっと更に嘘をつく

「えっ!?嫌あぁ!!!!」

と泉は目にいっぱい涙を溜めながら

悲鳴を上げて深雪に抱きつく

「うっあぁ!!ねぇ、ねぇ!まだいるの?」

と目を潤ませながら、上目遣いで深雪を見つめる

「はい、いますよ。今、下卑た目で泉様を食べようとしてます」

と深雪が言うと更に身をよじらせ出来るだけ全身を擦り寄せるかたちで深雪に抱きつく

「ごめんなさい、ごめんなさい!許してください!」

と泉は深雪に抱きつきながら謝る

「泉様、更に近づいて来ていますよ」

「うっ、うぅっ………深雪助けてぇ!!」

涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら助けを求めた

「私とこれからも一緒に寝るという事なら助けても良いですよ」

「はい!分かりましたからぁ!!お願い助けてぇえ!!」

「分かりました。」

深雪は力を溜める様な表情をすると
元から何も居ない場所に手をかざした。

「これで、いなくなりましたよ」

「ありがと、、うっ、ぐすっ、、、」

泉は未だに怖いのか身体を震わせ深雪に抱きついて離れない

「ね、、もう少し、、こうしてて良い?」

「はい、良いですよ」

そう言って、泉の震えが止まったのは二時間後だった。




「うっ、、もう大丈夫……」

「そうですか……」

と深雪が名残り惜しそうにした。

泉はまだ少し怖いのか離れても手は握ったままだ。

「今、何時………?」

目を赤く腫らしながら泉は聞いた

朝起きてから虫型幽霊の所為で今の時間が分からなかった為だ。

「今は、、、」

と何処から出したのか小さい時計を出した

「11時25分です」

いつの間にか、そんな時間になっていた様だ。
今日の予定は深雪からのダンス練習を逃げるというだけだから、もう少し寝ておこう。

「じゃあ、もう少し寝るから
深雪はみんなに言っといて」

「畏まりました。」

と頭を下げた。

「では、私はそろそろ行きますね」

泉は手を離した、すると扉の前まで移動した深雪は、ドアノブに手をかけ

「お休みなさい」

と言った。
俺はその言葉に寝たまま手を振った。




「……………」

さっきから寝ようとしてるが眠れない

何回も寝返りをしたり、実際に闇の力でワープホールを作って、草原に繋げて羊の数を数えてみたが、実際見たらうるさくて逆に目が冴えてしまった。

「腹減った、、、」

部屋の時計を見たら短針が1時を指していた。


泉はお腹が空いてしまったので、適当にキッチンで食い物を漁ろうと部屋を出た。





廊下を歩いていると、窓を拭いている赤髪の少女がいた。

まだ、顔色は悪そうだ。ご飯食べてるのかな?

赤髪の少女は何か考え事をしているようでボーと同じ窓をずっと拭いている。

「あっ、、」

と考えていると足を捻らせ、転びそうになった。

(くそっ!!!)

その瞬間、泉の身体に電流が走り六歳の筋力では出す事は不可能な速度で赤髪の少女を支えた。

「ほえっ!?」

と何処から出したのか分からない呆けた声を出した。

「大丈夫ですか?」

と泉が聞くと、赤髪の少女はみるみる顔を赤くした。

「はひっ!??、大丈夫です!!!」

「顔赤いけど本当に大丈夫?」

と言うと俺は彼女の頰をペタペタと触り
顔の温度を確認する

「はひゃっっ!?」

とこれまた何処から出したの?となる様な呆けた声を上げた。

(あれ?なんか更に熱くなってない??)

「滅茶苦茶、顔熱くなってるけど本当に大丈夫?」

「は、はい!大丈夫です、えっと……何か御用ですか?」

と半ば強引に泉の手から逃れた赤髪の少女は焦りながらも答えた。

「いや、お腹空いたからご飯食べよっかな〜って
そしたら、何も無いところでつまづいてる君がいたから支えただけだよ」

「そ、そうだったんですね
私の所為で申し訳ありません!」

と頭を下げた。

「じゃあ、お詫びとして一緒にご飯食べようよ」

一人で食べるのは悲しかったので好都合だ。

「で、ですが私はまだ仕事が……」

「さっきまでずっと同じ窓を拭いてたのに?」

「うっ………分かりました」

図星を突かれたのが痛かったのか今度は了承してくれた。

「じゃあ、お弁当でも作ってピクニックに行こうよ」

と泉は言い赤髪の少女の、手を引いてキッチンに連れていく。その時、また呆けた声を上げていたが気にしない





(さて、料理どうする?
俺オムライスしか作れないけどどうする?
弁当全部オムライスとか辛いし、、、)

と泉が頭を悩ませていると、

「あ、あの……私が作りましょうか?」

「君、ご飯作れるの?」

「いつも家事は私がしておりますので」

まじかよ、、、同い年くらいなのにあんな綺麗な料理とか作れるのかよ………俺なんか下手なオムライスぐらいしか作れないんですけど……

「それと、私の事はアンヌと呼んで下さい」

今まで忘れてたがこの子の名前を知らなかった事に気付いた泉は慌てて自分の自己紹介もした。

「俺の名前は泉、永遠の六歳です」

「私も六歳です、同い年だったんですね」

「何ですか、あまりにも幼稚で同い年に見えませんでしたか?」

とムスッとした顔で泉は言った

「い、いえ、ただ……嬉しくて」

「……???」

泉は首を傾げたが、アンヌはふふっと笑って料理を作る作業にはいってしまった。





「料理も作ったし、ピクニックに行こう!!!」

ほとんど作ったのはアンヌだったのだが泉は野菜とか切ったり弁当に具材を詰めたりしただけで満足気な顔をしている。

「はい、分かりました。ですが、この辺にピクニックの出来るような場所はありませんよ?」

「ふっふっふ、その辺は大丈夫!!」

と発達してない胸を張って自慢気にする

いや、発達しなくて良いんだけどね?
男の子だし………

「ばーん!ワープホールぅ!
これで草原に………」





「やってきましたー!!」

「凄いですね………周り全部草原です」

「俺のワープは座標設定するタイプだから
座標さえ覚えれば何処にでもいけるぜ!」

と格好つけたが、お腹からぐぅ〜という音が聞こえた
それで察してくれたアンヌが

「あの、、ご飯にしますか?」

と聞いた。

「あっ、はい、お願いします」

朝から何も食べていなかった泉はとてもお腹が空いていたので即答した。


お弁当を開け、美味しそうな具材が顔をだす

泉はお弁当の蓋を開けた瞬間卵焼きをとり、口の中に入れた。甘い卵独特の香りが鼻孔をくすぐり咀嚼する


そして次に唐揚げをとり口の中に放り込むそういった事をがむしゃらに続けている。


アンヌの方は上品に少しずつ食べている
もはや、六歳では無い気品を放っている

「もぐっ、んぐっ、そういえばアンヌは何でメイドしてるの?」

「………私は[忌子]ですので、、」

「[忌子]ってだけであんな扱いするんだね」

「私が無能なのが悪いんです」

「無能ね……俺なんかより美味しい料理作れるやつがそういう事言うと皮肉に聞こえるんだけど」

「異能がない私は無能ですよ……」

「適材適所って言葉知ってる?」

「………え、はい」

泉のいきなりの言葉に驚いた顔をしているアンヌ。

「これ、俺の座右の銘なんだけどね
出来ない事は人に任す事が大事なんだよ
一見サボる為に言ってるみたいって思うかもしれないけど誰かに頼るの大事だよ」

いつの間にか泉が弁当を食べ終わり夕日に染まる笑顔でそう言った


するとアンヌは一筋の涙を流した

「えっ!?何で泣いてるの!??」

「すいません………私は頼る事なんて出来ないと思ってたので、、、」

涙で顔をくしゃくしゃにしながらも言葉を紡いでいく

「わっ、私は、……わたしも頼って良いのでしょうか?」

泉はわたわたと泣きだしてしまったアンヌに戸惑っていたけどこういう時は自分が一番安心した事をするべきだと思った。

だから、泉はアンヌの顔を自分の胸に押し当て優しく髪を撫でた。

「ああ、頼れよ。俺はアンヌを絶対に守り抜いてやるから………」

アンヌはとうとう涙腺が決壊してしまった様だ。

「頼ってもいい」は彼女にとってそれ程安心できる事だった。


「あぐっ、、うぐっ、うっ、嘘じゃないですよね?」

「うん、こう見えて強いんだから俺、安心して頼って良いよ」

「良いんですね、、、わたし甘えまくりますよ?」

「どんと来いだよ!」

するとアンヌの顔に涙が一筋流れた。
その涙は悲しみの詰まったソレでは無く「嬉し涙」という美しい涙が流れた。






「そろそろ、パーティだし帰ろうか?」

「はい、ありがとうございます」


「いい加減、敬語やめていいよ
俺とアンヌは頼り合う仲間なんだから」


「ですが、私は敬語以外の話し方が分かりません」

「じゃあ、分かった時
初めに俺に敬語無しで言ってよ……約束ね?」

「………はい」

「うん、では行こうか?」

そして、草原から一瞬で消えた。













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