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神が泣くなら悪魔になろう

犬飼ゆかり

ドミノが倒れる音




悲劇は突然来るから悲劇という


あと一ヶ月程で魔王の病が完治するくらいの時だった

勇者が来た

魔王討伐という大義名分を持って


魔王は応じた

不完全だが強大な力を持って


戦いは三日続いた
僕にはとても長く感じた

ゆっくり

ゆっくり

世界がコマ送りになったかのように

今まで並べてきたドミノの倒したかのように


終わった


そして


御伽噺のエンディングが

僕の望んだモノが

最後の賭けが


始まった



僕が賭けたモノは僕の全てだ




勇者は疑わない、自分の行いを

「僕は勇者だ!世界の平和の為にお前を倒す!!」

魔王は信じない、神も世界も

「余は魔王だ、魔族の中で最も強大な力を持つ王」

自己紹介が終わった後、戦いは始まった



久しぶりに見る勇者は今までの勇者じゃなかった

光る剣に飛ぶ斬撃、光の魔法に盾、S級の冒険者だって防げない力をぶつけた



不完全の魔王は薬が苦手な少女じゃなかった

白い炎に黒い氷、暴風を起こし雷を落とす、世界が悲鳴を上げる力をぶつけた


戦いは三日続いた



そして





勇者は





負けた




互いに満身創痍だった

魔王が立ち尽くし、勇者が倒れた


「シャロ、お疲れ様、頑張ったね」

戦いが終わった後、僕は顔を出す

「え…ジルさん…?」

倒れた勇者が困惑する

「久しぶりだね、まさかもう魔王を倒しに来るなんて思わなかった、予定ではあと二ヶ月はあったんだけどね、さすが神に愛された者と言うべきか」

そして僕は続ける

「ごめんね、僕に妹がいるのは知ってるよね、病気なんだ、そりゃもう、神様を恨むくらい重い病気なんだ」

神が嫌いなんだ、勇者の前で言う

「僕は村の薬師に懇願したんだ、妹を助けてって、そうしたらエクリサーって言う薬があるって教えてくれたんだ」

それを作るために薬師になったけど意味なかったね、あはは

「エクリサーって別名があるんだよ、なんて言うか知ってる?」

誰にも聞いてない疑問に魔王が答えてくれた

「神の涙…」

「正解、シャロは物知りだね、それを踏まえて御伽噺を読んであげよう、えーと確かむかしむかし」


むかしむかしあるところに勇者がいました、勇者はとても強く優しく平和を愛しています、そんな勇者は混沌を愛す魔王を倒すために魔族領へ行きます、しかし魔王はとてつもない強さを持っていました、勇者は惜しくも敗れました、それを見た神は勇者を哀れみ、悲しみ


涙を一粒落としました


その涙は勇者の口に入りました、するとなんということでしょう、勇者は生き返りました、そして神に愛された勇者が、神に愛されなかった魔王を討ち滅ぼしました
こうして世界は平和になりました


「めでたしめでたし」

魔王と勇者の前で魔王と勇者の御伽噺を読むのは少し恥ずかしいな

「ハヤトくん、いや勇者様、勇者様にお願いがあります」

勇者がビクリと体を震わす

「死んでください」

「い、嫌…だ」

「神様はさ、君が死ぬと泣いてくれるらしいんだ、僕はさ、その涙が欲しいんだ、勇者様、僕は世界の平和より妹の病気が治って欲しいんだ、ね?ハヤトくんも妹いるし分かるでしょ?」

勇者は必死そうな顔で命乞いをする

「なら!そのエクリサーとかいう薬を作ろう!ジルさんは薬師でしょ!?絶対作れるって!」


ああ、自分が諦めた事をほじくり返されるのって凄い気分が悪くなるんだな、絶対って意味知ってるのかな、なんで神様はこんな偽善者を愛すのだろうか

「ごめんね、多分、君は天国で僕は地獄だからこれでお別れだよ」




そして勇者は死んだ

勇者は死ぬ時に泣いていた

魔王はとどめを刺す時に目を瞑っていた

二人は心があった、僕が台無しにした



僕は賭けに負けた

涙なんて一粒も垂れなかった


僕も台無しになった


でも何故かすっと飲み込めた

飲み込めたことが悲しい

悲しいことが悔しい

悔しいことが悲しい


今この瞬間
僕は無駄になった
価値が無くなった
生きる意味が無くなった


そして賭けに負けた今、分かった
目の前の魔王を妹と被せていた事に、絶対って言葉は強い、強いなんて言葉じゃ表せられないくらいに、だから不思議に思ったけど解決した、どうでもいいか


さて帰ろうか


帰ってリアが、…ぬまで一緒にいよう、リアが…んだら僕も…のう、それがいい


帰ろう、もう寒いところは懲り懲りだ

「シャロ、ごめんね、完治する前に僕は帰るよ、薬はストック分を毎日飲めばいい、それで治る、じゃあね」

身勝手な僕に魔王は黙る、黙った後に口を開く

「ねぇ、最後に魔族の言い伝え聞いてくれる?」

「いいよ」

「魔族ってね、魔物が人間と仲良くなりたいから言葉を覚えたのが始まりなんだって、でも人間はそれを許さなかった、だから人間達に虐げられないように北に逃げたんだって、でもやっぱり人間と仲良くなりたくて恨みがましくて、ここに来る人間を『物好き』なんて言い方で呼ぶんだって」

「僕が知ってるのとは真逆だ」

「そうなんだ、でも、どっちが正しいんだろうね」

「僕は魔族の言い伝えの方が好きだよ」


「そっか」

そんな返事の後に

「私もっ」

なんて嬉しそうに言ってきた

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