姉妹と幼馴染みから始まる俺の恋愛非日常

ranran(´・ω・`)

●第3話 過去

「ふあぁ・・・もう朝か」
部屋に差し込む朝日で目が覚めた今日(何かいいことが起きそうな気がする)。
新しい『兄弟』、いや『姉妹』か?まあ、いいや。新しい家族と出会った翌日。
今日は日曜日だから、皆家にいるはずだ。そういえば、彼女たちはいったいどこで寝たのだろうか?一応、部屋の説明はしといたけど・・・?
「お兄ちゃーん!朝ご飯できたよー!」
下の階からそんな声が聞こえた。
「あぁ、すぐ行く!」
そう言って俺は、パジャマのまま下に降りて、洗面所で顔を洗った。
その後、リビングに向かった俺を待っていたのは・・・
「あ、お兄ちゃん降りてきた!おはよう、お兄ちゃん!」
「おはよう」
「あ、あぁ、おはよう」
雫と彩花だった。全く、雫は朝から元気だな・・・。それよりも・・・
「おい雫、お前、彩花よりも年上だろ?朝ご飯とか任せっぱなしにするよ?」
「えー、だって!」
「大丈夫、兄さん。私が手伝わないでって言ったの。
 雫姉さん、料理が絶望的に下手だから」
「そうなのか・・・?ならいいけど。
 あ、そうだ。夏生姉さんと若葉姉さんは?あと、麗奈も」
「あー、夏生姉ちゃんは遊び行ってる。若葉姉ちゃんは生徒会。
 れいにゃんは・・・まだ寝てたと思うよ?お兄ちゃん、起こしてきてよ?」
「はいはい・・・」
全く、いつまで寝てるんだアイツは。いくら休日だからって・・・。
「えっと、確か麗奈の部屋は・・・うん、ここだな」
【れいな】と書いてあるプレートがぶら下がっていることを確認し、
ノックする。
「おーい、麗奈!朝だぞー。起きろー!」
出来るだけ大きな声で叫ぶ。しかし・・・。
「・・・返事がないな」
どれだけ深い眠りについているんだ全く。こうなったら、
直接起こしに行くしかないな。
「じゃあ、入るぞ・・・?」
俺は恐る恐る、ドアノブをひねる。
部屋の中は、昨日来たばかりなのに、もう荷物でグチャグチャだった。
雑誌とか漫画とか服とか・・・中には下着まで・・・。
「ひどいな、これ・・・」
世の中には色んな人がいて、その中には片付けが苦手な人だっているだろう。
実際俺も、そこまで得意な方じゃない。だけど・・・
「これは流石に・・・ひどくないか?」
相当疲れていたのだろうか?もう足の踏み場が見当たらない。
「どうしよう、これじゃ起こせないな」
どうやって麗奈の寝ているベッドに行こうと考えていたその時、
「ん、んー?」
「!?」
ヤバ、起きたか?いや、元から起こしに来ただけで、
他に何も意味はないのだが。
「ふわぁぁぁぁ・・・って?!」
あ、やべ。目が合ったわ、しかもがっつり。
「お、おはよう麗奈。朝・・・だぞ?」
「んな・・・」
ヤバい、ヤバい!麗奈の顔がどんどん怒りで真っ赤に・・・!
「何でアンタがここに・・・!」
「ストップ、ストップ!叫ばないでくれ頼むから!」
「叫ぶわよ、当たり前でしょ?!私の部屋で何しようとしていた訳!?」
「違う違う!これには理由わけが・・・」
そして俺は、雫達から起こしてくれと頼まれたことを麗奈に説明する。
「ふーん、本当なのね?それ」
「俺ってどんだけ信用度無いんだよ・・・」
全く、すいませんでしたね。朝から女の子の部屋に入ってきたりして。
「じゃあ、俺は先に下行ってるから。麗奈も早く・・・」
「ちょっと待って」
「?」
何だろう、てっきり怒って『さっさと行ってよ、バカ!』とか言いそうだったのに。
「お、俺に何かようか?」
「アンタに用があるから呼び止めたんでしょ」
「それはそうなんだが・・・」
やっぱり怒ってんのか・・・?女の子ってよく分かんない。
「あのさ、とりあえず横座って」
「よ、横って・・・?」
横!?今麗奈が座っているのが、さっきまで寝てたベッドだから、その横に座れと?
あのね、一応俺だって、躊躇ためらいはあるんだよ?
流石、女の子の部屋というか、なんか甘い匂いがするし。
それにさっきも言ったけど、下着・・・落ちてるし。
「そんな分かってること聞かないでよ・・・ハズカシインダカラ」
「あぁ、す、すまん?」
最後の方は小声で聞こえなかったけど、とりあえず座ろう。話はそれからだ。
「で、話ってなに?」
麗奈はいまだ恥ずかしそうに顔を赤らめているから、俺から話しかける。
「あ、あのね!・・・か、海翔の家族・・・昔のこと、話してくれないかなって」
「え・・・?」
まさか、そんなことを聞かれるなんて思ってもなかったから、間の抜けた声が出てしまう。
「い、いや!話したくなければいいんだよ?
 ただ、これからのためにも知っときたいなって」
「・・・分かった、話すよ」
「え?・・・いいの?」
「あぁ、どちらにせよ、いつかは話そうと思ってたんだ。ちょうどいいよ」
「そう・・・」
麗奈はホッとした表情で、俺のことを見返す。
「じゃあ、話すけど。俺の家族は、俺も含めて5人家族だったんだ。
 父さんと母さん、姉さんに妹、そして俺。
 でも、母さんの顔はあまり見たこと無いし、それに・・・」
「それに・・・?」
「俺は、姉さんのことが嫌いだった」
「!」
驚いた表情で俺を見る麗奈。
「どう・・・して?」
「姉さんは、極度のブラコン。つまり、俺のことが大好きだったんだ。
 普通に可愛がってくれるなら良かったんだけど、
だんだん愛が重くなってきて・・・。そして、事件は起こったんだよ・・・」
「な、何があったの?」
「その日は2月14日。つまり、バレンタインデーだったんだ。もちろん、
 ブラコン姉さんは、弟である俺にチョコをくれたんだ。・・・体に塗って」
「!?」
「風呂場で待ち構えられていたんだ。私を食べて?ってね・・・。
 その日から、俺は姉さんの相手をしなくなった。
 優しい姉さんだったけど、流石に限界だったんだよ・・・。
 それに対して妹は、そこまで俺のことも相手にしなかったし、
 父さんと母さんが離婚して、母さんが姉さんと妹も一緒に連れてったから、
 あまり覚えてないんだ」
「そう・・・なんだね」
そう言うと、麗奈は今までとは違う、優しい眼で言ってくれた。
「私も、海翔の気持ちなんか分かる」
「そう・・・か?」
「うん、海翔とは全然違うけど、似たような経験、私もしてるから」
「!」
今度は俺が驚かされる番だった。
「麗奈、それについて聞いても・・・いいかな?」
「うん、いいよ。今から話す」
そう言って麗奈は、どこか遠くを見ながら話始めた。
「海翔は、お母さんのことあまり覚えてなくても、見たことはあると思うの。でも、私はない。お母さんだけじゃなくて、お父さんも・・・。
 私は、本当の親にあったことが無いの」
「それってつまり・・・捨て子だったってこと?」
「そういうことになるのかな?・・・分かんないや」
なんと・・・。そんなの、俺よりも辛い経験じゃないか。実の親を見たことがないなんて。
「そんな私を拾ってくれたのが、今のお母さんなの。
 雨のなか、人通りの少ない通路のはしで泣いていた私を、
 拾ってくれた。その時のお母さんの顔が、すごく優しそうに見えたのを
 今でも覚えてるわ」
「・・・」
俺は、何も喋りかけることが出来なかった。出来ないと思ったからだ。
こんな辛い経験をしたことがない俺に、
言葉をかける資格など無いと思ったからだ・・・。
「私が拾われたとき、もう夏生姉さんと若葉姉さんは生まれていて、
 私は二人の義妹いもうとになったの。もちろん、その後に雫も彩花も
 生まれて、私はあの子たちの義姉あねになった。けど二人はまだ、
 私が本当の姉妹じゃないことを知らないわ。
 いつかは言った方がいいのだろうけど・・・」
「・・・俺は言わなくていいと思うよ」
「え?」
「実際、そんな経験俺はしたことないから、自分の考えでしか無いんだけど。
 例え血の繋がっていない家族でも、関係ないと思うんだ。
 心が通じあっていればね。むしろ、今からそんなこと言う方が、お互いに
 辛いと思う」
「・・・」
麗奈は俺の考えを、ずっと黙って聞いていてくれた。最初はキツい態度だった
のに、今はこんなに・・・。まるで俺のことを家族と受け入れてくれたかのように話してくれる。それが俺にとっての、何よりの喜びだった。
「そう・・・だね」
しばらく間が空いてから、麗奈は答える。
「そうだよね、私、考えすぎだよね・・・。ありがと、海翔のおかげで少し
 気が楽になったよ。・・・そろそろ下に降りなきゃ。雫たちが待ってる」
「あ、あぁ」
納得した・・・のか?まあ、元気が戻ったならそれでいいか。腹も減ったし、
そろそろ下に戻ろう。麗奈も来るらしいしな。
と、考えていたときだった。
「ただいま!皆いる?!」
「うわぁっ!・・・って、若葉姉さんか・・・ビックリした」
いきなり玄関から出てきたのは、次女の若葉。今朝は自分の学校で、生徒会
活動をしていたらしい。全く、休日の朝まで大変だな。
「で、どうした?何かあったのか?」
「あったあった!これ!見てよ!」
「んなっ?!」
そう言われて見たものは、最近オープンしたばかりの遊園地のチケットだった。しかも、ちゃんと人数分ある。
「ど、どうしたんだ、これ?」
「たまたま商店街に買い物によって、たまたま福引きやってたから引いたら、
 たまたまこれが当たったって訳」
「たまたま多いな!?」
それほど奇跡的なことだったのだろうか。
「あ、若葉姉ちゃんお帰り~。・・・って、それ!?サンハニー遊園地の
 チケットじゃん?!どうしたの!?」
「私そこ、行きたかった」
「姉さんが、福引きで当てたらしい」
「ホント?!すごーい!」
「運がいいね、姉さん」
「でっしょー?!ってことで、今日が日曜日だから・・・来週!
 来週の日曜日は、皆で遊園地!詳しいことは、皆揃ってから決めよう!」
「「はーい!」」
舞い上がるように喜ぶ、雫と彩花。正直、俺もそこには行ってみたかった。
「フンフンフ~ン♪楽しみだね、お兄ちゃん!」
「あぁ、そうだな」
実質、彼女たちと行く初めてのお出かけだ。目一杯楽しもう。
そう心に決めた俺なのであった。


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