親友「こいつを女神にしてください」

おねむねむねむのきょう

俺「俺を街まで連れてってください」

 小刻みにに揺れる馬車の中、俺は珍しく思考を巡らせていた。
 向き合う様に出来ている馬車には俺と騎士達と馬車の主の孫の合計5人が座っている。
 騎士の1人、テイルが不思議そうにこちらを見ている。その理由は考えるまでも無く、俺が異様に強いからだ。
 そこまで力を見せたつもりはなかったが蹴り1つで人を気絶させたのが原因だ。
「あなた名前は?」
  話しかけてきた少女は馬車の主の孫のハスカ。
 しかし名乗る名前もないので苦笑いで返す。
「お名前、無いんですか?それとも名乗れないのですか?」
「名前が無いのです」
 仕方なく答え、少し俯く。
「ふぅ〜ん。じゃあ私が決めてあげる」
 予想外の展開に少し顔を上げる。
 この世界では名前が無いのは珍しく無いのだろうか。
 しかしよく見るとハスカはとても可愛らしい容姿をしている。
 整っていて綺麗な顔、鮮やかでサラサラな金色の髪、サファイヤのような透き通った目。そして小柄な体型。
 その美しさにウットリとしているとハスカが突如声を上げた。
「リアンよ!」
 きっと俺の名前なのだろう。
「ダメ」
 しかし却下。
「リナ?」
「ダメ」
「アリス」
 アリスか…
 でもアリスって言ったら金髪なイメージがあるけど、俺でもいいのかな…
 個人的に好きではあるけど…
「それなら」
 結局は了承する事になった。
 俺の許可にハスカは大喜びで飛び跳ねた。
 馬車の中で飛び跳ねるとは何と元気な…

「あの、貴方は何故あそこまで強いのでしょう?」
 テイルが遂に俺に質問した。
「何か秘密があるのでしょうか?」
「いえ。特に何もしてませんが」
 流石に転生者や女神という事は言える筈がない。
 テイルは再び考え込み、代わりに騎士のアルガが質問した。
「貴方のステータスを見せて頂いても?」
 流石に俺もその質問には危機感を隠せなかった。
 あのチートステータスを見せろと。
 隠蔽とか出来ないのかな?
 と思った瞬間視界の右端に文字が現れた。

《個人スキル:隠蔽 Lv.999を使用しますか?》
《はい》《いいえ》

 今の俺にとってはは《はい》以外の選択肢は有るのだろうか。
 勿論答えは返ってこないが《はい》と答えた。

《それではステータスを変更して下さい》
《一般人の能力平均は50》
《冒険者の能力平均は80》
《騎士団の能力平均は90》

 何と平均まで教えてくれた。
 どのスキルのおかげかは知らないが今は頼りになる。
 ちなみにテイルさん達は冒険者の中の騎士というジョブらしい。

名前 アリス Lv.4
種族 人族
職業 旅人

攻撃力 86  HP  1000/1000
防御力 78  知力   82
魔力  108

スキル
火属性魔法  Lv.5
水属性魔法  Lv.3
風属性魔法  Lv.9
光属性魔法  Lv.4
闇属性魔法  Lv.3
無属性魔法  Lv.2
身体強化魔法 Lv.1

 これでよし。
 アルガは何処かから形の少し歪な正方形の石版を取り出した。
「ではこの石版に手を乗せて下さい」
 あれ、普通に見せないの?
 一瞬疑問に思ったが怪しまれないように言われたままにする。
 石版が蒼白く光り出した。
 すぐに収まったが光った後の石版には俺のステータスと思われる文字が刻まれていた。
 手を離し石版を覗いてみる。
 やはり、俺の偽造したステータスが書かれていた。
 アルガとテイルも石版を覗いてみる。
 しかし俺が思っていた様にはならなかった。
「!?なんなんだこの高いステータスは」
「高いですか!」
「いや、正確には高くは無い。ただ全属性使えると言うのが…」
 どうやら属性がやばかったらしい。
 これを見たアルガはどうやら思考が停止したようで唖然と石版を見ていた。
「あ!もうすぐつきますよ!」
 ハスカが馬車の外を指差す。
 指が指された方向には灰色の高い壁がズラリと並べられていた。






こちらも久しぶりの投稿になりました。
この作品は他の私の作品と同じ世界になっているのですがいつかは他の作品と繋げたいと思っております。

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