転生銀髪美少女は勇者にすべてを任せて楽に生きたい
第20話 強くなるには
「はぁ~」
もう手に力が入らない。
カタッ
手から剣が滑り落ちる。
全力だった。
自分の知識を総動員してなんとか一撃でもハルバルトさんに届かせようとしたけど、結局僕の剣はハルバルトさんにはかすりもしなかった。
「どうですか? 今日一日やってみて」
倒れ込んでいる僕の上から、息一つ切らしていない涼しげな表情のハルバルトさんが尋ねてくる。
正直悔しかった。
この世界に来てから、一度はハルバルトさんと接戦をしたけど、あれは魔法という神から授かったものがあったからだ。
調子に乗っていた自分がひどく恥ずかしく感じた。
ハルバルトさんは変態で、筋肉ムキムキなおじさんだけど、僕の想像がつかない途方もない程の努力をして、今の力を手に入れたんだと思う。
僕はもう一度力が欲しいと思った。
でもそれは、神から与えられるようなチート能力ではなくて、自らの努力の結果得られる力だ。
「ハルバルトさん、どうしたら強くなれますか?」
「そうですねぇ」
ハルバルトさんは、一瞬考え込むような仕草を見せたあとにあっけらかんと言う。
「わかりません」
「えっ?」
何かしらのアドバイスを貰えると期待したのに、ハルバルトさんはわからないと言う。
「シルバーさん、人は普通、すぐに強くなることなんてできません。毎日のように鍛練を積んでやっとの事で強くなるんです」
「そうですよね......」
そんなことは当たり前だ。すぐに強くなる方法なんてあるわけがない。
「ですが一つだけ、可能性ならあります」
沈みかけた僕の気持ちがハルバルトさんの言葉で浮上に転じる。
「我々は神の祝福と呼んでいるんですが、一つのことを毎日欠かさず続けると、いつの日か急に体に馴染むようになるのです。私もそのお陰で、今では思い通りに剣を動かすことができます」
ハルバルトさんはそう言って近くに落ちていた落ち葉を拾う。
何をするのかと待っていると、その落ち葉を投げた。
当然落ち葉は宙を舞い、ひらひらと不規則な動きで自由落下を始める。
「例えば、こんなこととかですね」
ハルバルトさんは落ち葉に狙いを定めると、剣を一突きする。
すると、見事に剣の先っぽに落ち葉が破けずに刺さっていた。
「すごい! 僕にもできたりしますか?」
「それは······すぐにはできないでしょうね。私の場合は何十年も剣を振るってきましたから。でも」
ここで一度言葉を区切る。
何を考えていたのか、昔の思い出を噛み締めるようにゆっくりと目を閉じる。
しばらくすると目を開け、そして言葉を紡ぐ。
「シオンは一週間で物にしましたね」
そう言うハルバルトさんの目はいつもよりもやさしく感じた。
そして僕の頭の中は、どうしたら神の祝福を受けられるのか、というただ一つで埋め尽くされた。
「どうすれば! どうすればいいんですか!」
グッとハルバルトさんに急接近する。
いつもならここでふざけるのだけど、真剣さが伝わったのか、茶化すことはしないで少し困ったように頭をかく。
「そうですね~。では、今日帰ったらシオンにこう言ってください。『ダンジョンに行きたい』と」
なにやら意味深な言葉を発する。
詳しく聞こうとしたけど、ハルバルトさんはくるりと向きを変えると、歩き出してしまう。
「この件について私からは詳しく言えません。あとはシオンに聞いてください」
そう言ってそのままハルバルトさんの姿が見えなくなる。
(ダンジョン、何かの隠語とか? それとも言葉の通り? どちらにしても、強くなれるなら挑戦してみたい)
11月1日にコラボ小説を投稿します。
分量が多くなったため、何話かに分けて投稿します。
もう手に力が入らない。
カタッ
手から剣が滑り落ちる。
全力だった。
自分の知識を総動員してなんとか一撃でもハルバルトさんに届かせようとしたけど、結局僕の剣はハルバルトさんにはかすりもしなかった。
「どうですか? 今日一日やってみて」
倒れ込んでいる僕の上から、息一つ切らしていない涼しげな表情のハルバルトさんが尋ねてくる。
正直悔しかった。
この世界に来てから、一度はハルバルトさんと接戦をしたけど、あれは魔法という神から授かったものがあったからだ。
調子に乗っていた自分がひどく恥ずかしく感じた。
ハルバルトさんは変態で、筋肉ムキムキなおじさんだけど、僕の想像がつかない途方もない程の努力をして、今の力を手に入れたんだと思う。
僕はもう一度力が欲しいと思った。
でもそれは、神から与えられるようなチート能力ではなくて、自らの努力の結果得られる力だ。
「ハルバルトさん、どうしたら強くなれますか?」
「そうですねぇ」
ハルバルトさんは、一瞬考え込むような仕草を見せたあとにあっけらかんと言う。
「わかりません」
「えっ?」
何かしらのアドバイスを貰えると期待したのに、ハルバルトさんはわからないと言う。
「シルバーさん、人は普通、すぐに強くなることなんてできません。毎日のように鍛練を積んでやっとの事で強くなるんです」
「そうですよね......」
そんなことは当たり前だ。すぐに強くなる方法なんてあるわけがない。
「ですが一つだけ、可能性ならあります」
沈みかけた僕の気持ちがハルバルトさんの言葉で浮上に転じる。
「我々は神の祝福と呼んでいるんですが、一つのことを毎日欠かさず続けると、いつの日か急に体に馴染むようになるのです。私もそのお陰で、今では思い通りに剣を動かすことができます」
ハルバルトさんはそう言って近くに落ちていた落ち葉を拾う。
何をするのかと待っていると、その落ち葉を投げた。
当然落ち葉は宙を舞い、ひらひらと不規則な動きで自由落下を始める。
「例えば、こんなこととかですね」
ハルバルトさんは落ち葉に狙いを定めると、剣を一突きする。
すると、見事に剣の先っぽに落ち葉が破けずに刺さっていた。
「すごい! 僕にもできたりしますか?」
「それは······すぐにはできないでしょうね。私の場合は何十年も剣を振るってきましたから。でも」
ここで一度言葉を区切る。
何を考えていたのか、昔の思い出を噛み締めるようにゆっくりと目を閉じる。
しばらくすると目を開け、そして言葉を紡ぐ。
「シオンは一週間で物にしましたね」
そう言うハルバルトさんの目はいつもよりもやさしく感じた。
そして僕の頭の中は、どうしたら神の祝福を受けられるのか、というただ一つで埋め尽くされた。
「どうすれば! どうすればいいんですか!」
グッとハルバルトさんに急接近する。
いつもならここでふざけるのだけど、真剣さが伝わったのか、茶化すことはしないで少し困ったように頭をかく。
「そうですね~。では、今日帰ったらシオンにこう言ってください。『ダンジョンに行きたい』と」
なにやら意味深な言葉を発する。
詳しく聞こうとしたけど、ハルバルトさんはくるりと向きを変えると、歩き出してしまう。
「この件について私からは詳しく言えません。あとはシオンに聞いてください」
そう言ってそのままハルバルトさんの姿が見えなくなる。
(ダンジョン、何かの隠語とか? それとも言葉の通り? どちらにしても、強くなれるなら挑戦してみたい)
11月1日にコラボ小説を投稿します。
分量が多くなったため、何話かに分けて投稿します。
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